八条学園怪異譚
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第十一話 池の怪その一
第十一話 池の怪
大学の博士達からの話を聞いた愛実と聖花は次の日に早速新しい行動に出ようとしていた。二人のクラスの端で愛実が自分の携帯を出してそこに出ている掲示板の書き込みを聖花に見せてそのうえで話していた。
「あの小川がつながってるお池だけれど」
「あのお池ね」
「あのお池にも出るらしいのよ」
「また夜になのね」
聖花は掲示板のその書き込みを見て言う。
「出るのね」
「そうみたいね。それで出るのは」
「お池っていったら」
掲示板の書き込みではそこまで書いていないが聖花はそこからこう察して言った。
「河童?」
「愛実ちゃんもそう思うのね」100
「だってお池だから」
愛実は自分も掲示板の書き込みを見ながら言う。
「どうしてもね」
「そう思うわよね」
「それしかないんじゃないかしら」
「他にお池の妖怪っているかしら」
池、即ち水のだというのだ。
「人魚とか?」
「人魚は海じゃないの?」
聖花はデンマークのあの人魚姫の像を思い出しながら愛実に話した。
「確か」
「それはそうだけれどね」
「一応人魚の話は日本にもあるけれど」
聖花は首を傾げて愛実に話した。
「その肉を食べれば八百歳生きるっていう」
「長生きできるのね」
「そう。けれどそんなに生きてもね」
「意味ないわよね」
二人共長寿には何の興味もなかった。例え八百歳も生きてもそれでもどうなってしまうかをわかっていたからだ。
「恋人とか旦那さんにも先立たれて」
「子供も先に死ぬしね」
勿論孫や曾孫もである。
「お友達もだし」
「自分だけ長生きしても寂しいわよ」
「皆がいてこそ楽しいからね」
「ただ長生きするなんて嫌よね」
「ええ、若しそうなってもね」
二人でそうした長生きについては無関心どころか忌避さえ見せてそのうえで駄目だと話した。聖花はそこからこう言った。
「まあ人魚の肉に毒があるかは知らないけれど」
「合わない人が食べたら死ぬとか?」
「若しくは化け物になるとか」
妖怪や幽霊ではなくそうしたものになるというのだ。
「そういうのはないと思うけれど」
「それでもね」
愛実はとにかく長生きには興味を見せなかった。
「百歳位だともういいわよね」
「本当にね」
聖花はとりあえず人魚の肉についてはそれで終わらせた。そしてここで愛実に対してこう提案したのである。
「人魚のこともね」
「あの博士に聞いてみるのね」
「そうしてみる?それか図書館で調べるか」
妖怪についての本を開いてその上でだというのだ。妖怪や幽霊は民俗学の範疇なのでこの学園の図書館にも置かれているのだ。
「そうしてみる?」
「じゃあまずは図書館行かない?」
愛実の聖花への提案は場所についてだった。
「そっちにしない?」
「まずは図書館で調べてなのね」
「そう。それでわからなかったらね」
「博士のところに行くのね」
「そうしない?」
愛実はこう聖花に提案した。
「まずは自分で調べてね」
「そのうえでなのね」
「そう。それだったらどうかしら」
「そうね。いいと思うわ」
聖花も愛実のその提案に賛成しそのうえでこう言ったのである。
「まずは自分達で調べて」
「それが一番いいっていうからね」
自分達で調べると頭に入るからだ。調べると聞くよりもそうなるのだ。
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