八条学園怪異譚
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第十話 大学の博士その十五
「じゃあここはね」
「博士の言葉に乗ってそれでね」
「学園の中にそうした泉があるかどうか」
「調べてみる?」
こう話してだった。
二人は博士に向き直ってこう答えたのだった。
「じゃあ私達がですね」
「そうさせてもらいます」
「頼むぞ。君達に任せた」
「部活とかお家の仕事もありますけれど」
「それに学業もありますけれど」
「時間のある時にやらせてもらいますので」
「そういうことで」
二人は学生の本分のことも頭の中に入れながら博士に答えた。
「それじゃあそういうことで」
「お願いします」
こうして二人は学園の中にあるかも知れない妖怪や幽霊、そうした存在が出入りする泉の様なものが本当にあるかどうか調べることになった。博士の学究の精神に応えてだ。
そのことを博士に約束すると博士はにこりと笑ってこう二人に言った。
「ではわしからも色々と援助するからな」
「お金とか必要ないですよね」
「学校の中を見回るだけですから」
「お金はいらん」
このことは博士も言う。
「しかし知識はいるのう」
「あっ、それですか」
「妖怪さん達のことや学園のことに関する」
「この学園には百年はおる」
また時間的に非常識なことを言う博士だった。
「わしが見えるものは全て頭の中に入れておるからのう」
「博士はこの大学にいて長い」
暫く黙っていた牧村が二人の後ろから言ってきた。今も壁に背をもたれかけさせ腕を組んでそこに立っている。
「だからよく知っている」
「それも百年ですか」
「本当に仙人みたいですね」
「代々の理事長も知っておるぞ」
さらに笑って話す博士だった。
「大正の頃ものう」
「本当に幾つなんですか?」
「大正って」
「もう明治も遠い昔なんですけれど」
「伊藤博文とかの時なんて」
「ははは、だからこそ色々知っておるのじゃよ」
博士はここでも笑って言う。とにかく年齢的には謎が多いというか有り得ない話だった。そうした話をしているうちに昼休みが終わろうとしていた。
ここで二人は高等部に戻ることにした。その時に。
二人を見送りと案内に一緒に研究室を出た牧村とろく子が言ってきた。ろく子の首は人間の長さに戻っている。そうなれば普通の人間と変わらなかった。
「あの博士の知識は確かだ」
「本当に何でも御存知ですから」
「妖怪のことについても専門家だ」
「だから色々と教えてもらえますよ」
「この学園の怪談のことも」
「それもですね」
二人も牧村とろく子に応えて言う。大学の中は呆れる程広いが彼等の案内で迷うことなく高等部に戻れている。
「確かに御存知ないこともあるみたいですけれど」
「それでも」
「妖怪やそうしたことについては世界的な権威だ」
牧村は言い切った。
「他には魔術や仙術、錬金術についてもだがな」
「錬金術って」
「今それやってる人いるんですね」
「あの博士は特別だ」
「まあ確かに普通の人じゃないですよね」
「そのことはわかります」
このことは二人も話してよくわかったことだ。
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