SAO─戦士達の物語
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
ALO編
六十七話 巨大橋の死闘
「破ァッ!!」
長大な斬馬刀によって繰り出される広範囲の斬撃に、体長一メートルを超える怪鳥が一気に五匹巻き込まれる。最早霞んで見える速度で振られたその刃に巻き込まれた哀れな鳥達は、HPが満タンであったにもかかわらず次の瞬間には真っ二つになり、得意技である口からの火の玉を繰り出す事も無くポリゴンとなって爆散する。
それを待たずに……
「奮ッ!」
斬馬刀の刃が、五匹の奥に居た二回りほど大きめの怪鳥の体を右の翼の付け根からまともに捉える。そのまま……
「割れろっ!」
言われた通り、怪鳥の体はそのまま真っ二つに切り裂かれ、やはりHPは満タンであったものの、これまた爆散した。
「ふぅ……ま、こんなもんか」
「うわぁ……すっご……」
「お見事」
一仕事終えて息をつくリョウの後ろから、リーファとキリトがそれぞれの反応を示しながら近づいてきた。キリトは慣れたように微笑むだけだが、リーファは完全に目を丸くしている。
スイルベーンを出発し、現在はその北東に広がる《古森》上空だ。それなりに中立域も奥の方に入ってきているので、モンスターも中々の強敵ぞろいだ。先程のモンスター……《イビル・ブレイバード》と《チーフ・ブレイバード》も、高速で飛びまわり撹乱ながら次々に口から火球を放って来て、移動と攻撃を同時に行う近接武器を中心に戦う者には手ごわいモンスター……の、はずなのだが……
『なんか、それも忘れちゃうわ……』
キリトのポケットから顔を出したピクシーのユイと小さくハイタッチを交わしてカラカラと笑うリョウを見ながら、リーファは小さくそんな事を思う。
キリトとリョウは、二人ともこれまでのリーファの常識ではありえないような戦闘を見せつけてくれた。キリトは、小回りのきく片手剣 (まぁ殆ど大剣だが)の長所を生かして、高速で飛びまわりながら相変わらずの高威力による連続した斬撃の嵐に相手を巻き込んで細切れに。リョウは先の戦闘のように、集団で出てきた相手が散開しきる前に一気に接近し、広いリーチを誇る斬馬刀を十二分に生かした一閃により、瞬時に殲滅する。
特に、破壊力に関してリョウの攻撃は異常だった。唯でさえ重量があり、武器そのものの威力が高い斬馬刀を霞んで見えなくなるような速度で振るのだから、その威力自体には成程、納得してしまうのだが……あの武器屋でも最重量を誇った武器である斬馬刀を軽々と片手で振りまわすというのは、隠しパラメーターの筋力値は一体全体どんな事になっているのかと激しく疑問なリーファである。丁度、今もキリトとリョウがその話をしている。曰く、「本当にずいぶん早くなったよなぁ」だとか、「こっちに来てから体が軽いわ」とかだ。
ちなみに、リーファは知るはずも無い事だが、実はこの世界の環境はリョウにとってはかなり有利に働いている。なぜなら、元々この世界には《敏捷値》と言うステータスが無く、プレイヤーの動きの速さは本人の反応速度で決まる。リョウの場合、確かにSAO時代は敏捷値が皆無なせいですさまじい動きの遅さを披露していたものの、元々反応速度その物についてはキリトに決して劣らない……と言うか、長年の戦闘反復による経験などから無意識のうちに効率のよい反応速度の使い方を理解しているキリトには今は及ばないながら、純粋な反応速度の才能的部分だけならばリョウはキリトを超えるのだ。
ならばなぜ、リョウに《二刀流》のスキルが渡らなかったかと言えば、それをカーディナルが観測する機会が無かったからである。
敏捷値の低さは当然、リョウが己の反応速度の速さを生かして高速で戦闘する機会を奪っていた。突発的危機などの状況下で瞬間的にその高い反応速度が出る事はあっても、プレイヤー達の中でそれがトップであると確認しきるほど、カーディナルはリョウの反応速度を分析しきれなかったのである。
しかし今、その枷は外され、リョウは自身の自由な体による高い反応速度に自覚を示しつつある。完全に自覚さえしてしまえば、リョウは即座にその自分の身体に“慣れる”事が出来る。SAOで鍛えられた筋力値による“力”と、自由な体の反応速度による“速さ”。ある意味で、手の付けられない怪物が眼を覚ましつつあった……
────
古森を抜けて、山岳地帯に入り始めたリーファ・キリト・リョウは、一度飛翔力の限界が来たため地面へと降り立った。
ちなみに、翅は本来人体には無い器官であるはずなのだが、長い間飛んでいると何故か肩甲骨の付け根あたりが疲れるような感覚を受ける。現に、リーファとキリトは地面に降り立つと、背中を伸ばすように大きく伸びをしている。リョウはと言うと……
「ふぅ……なかなか長いな」
口にくわえた短いストロー状の物体から、薄い緑色の煙をたなびかせている。煙の色を除けば、明らかに煙草を吸っているように見えた。
「まだ半分も来てないわよ……っていうか、リョウはそれ好きねぇ……スペクターさんの所で買ったんだっけ?」
「あぁ。まぁな」
リョウが加えているのは、《モスミントの煙棒》というアイテムだ。口にくわえて、先っぽをトントンッと素早く二回たたくと、両端から魔法の煙が発生する。この煙は、少し辛めのはっかっぽい風味で、口の中に含むと、スーッとする清涼感が味わえるのだ。ちなみにこの煙、冷たい。
リョウはこれを出発前に寄ったスペクターの店で見つけ、かなりの量を買い込んでいた。それこそ、旅の間ずっと吸っていても問題ないくらいには。
実際、スイルベーンを週発してからと言うものしょっちゅう吸っている。はたから見れば丸っきりヘビースモーカーだが、煙草では無いから嫌な臭いはせず(寧ろさわやかなミントの香りが辺りをうっすらと包む)なおかつ妙に様になっているので、三人とも何も言わない。
「キリト、疲れてねぇか?」
「まだまだ。こんなんじゃ疲れたりしないさ」
煙草を咥えたまま聞いたリョウに、キリトは二ヤッと笑って返す。実際、その顔は余裕そうだった。
「リョウも大丈夫そうだし……二人とも頑張るわね……と、言いたいところだけど、ここら辺で、空の旅はいったんお預けよ」
「うん?そりゃまたどうして?」
キリトの問いに、リーファは背後にそびえる高い山を見上げて言った。
「あの山よ。あれが飛行限界高度より高いから、山越えは洞窟を抜けないといけないの」
「成程な。飛行には太陽か月の光が不可欠だから……」
「そ、洞窟の中は徒歩ってわけ。……シルフ領からアルンへ向かう一番の難所……らしいわ。あたしも此処からは初めてだし、情報もあんまり聞かないから分かんないけど」
「ちなみに、その洞窟ってのは長いの?」
「かなりね。途中に鉱山都市が有るからそこで休憩できるって話だけど……二人とも、今日はまだ大丈夫?」
訪ねたリーファに、リョウは視界の時計を見るためか目線をずらしてなんとなく問う。
「今リアル何時だっけか……?」
「七時半。俺は大丈夫だ。兄貴は?」
「そうか……ん、俺も問題ねぇ。」
「そっか。じゃ、もうしばらく頑張るって事で……此処で一回、ローテアウトしようか」
「ろ、ろーて?」
突然の聞き慣れない単語に、キリトは首をかしげる。その疑問には、リョウが答えた。
「ローテーションアウト。要は中立域で即落ち出来ねぇんで、代わる代わるに落ちて動かないアバターは残った奴が守るってこった」
「あぁ……成程。じゃ、リーファからどうぞ」
「だな。レディファーストって奴だ」
「そう?じゃ、お言葉に甘えて……二十分くらいだから、お願いね」
「おう」
「あぁ」
そう言って、リーファはログアウト。後には待機状態の彼女のアバターが残った。
「ふぅ……しっかし、こうやってMMOで旅ってのも久しぶりだな……」
「だよな。SAOより前には、たまにふらっと意味も無いところに行ったりしてたけど……」
SAO以前にリョウやキリトがプレイしていたMMOでは、グラフィックもこの世界ほどではないにしろ大した物になっていた。それは意味も無くフィールドを回るだけでも十分に観光気分を味わえるレベルの物で、リョウやキリトも時折思いついたように普段行かないフィールドに足を延ばしては、物見遊山を楽しんだものだ。
『VRでこれやると、マジで旅だよな……』
そんな物思いにふけり、リョウが苦笑していると……
「なぁ、兄貴……」
不意に、キリトが声をかけてきた。
「ん……?」
「本当に、この世界にアスナは……アスナ達はいるのかな……?」
「…………」
「パパ……」
少々不安そうにそう聞いたキリトをみて、ユイがポケットから飛び出すと、キリトの型にちょこんと乗って心配そうにキリトの頬に手を当てる。リョウは口にくわえた煙草を指でつまんで一度口に含んだ煙を外に出すと、立ちこめた煙のゆらゆらとした光を見ながら、問い返す。
「今更、不安になってきたか……?」
「ちょっと……さ。ここはカーディナルのコピーサーバーで、俺のデータが継続してて、ユイが居て、あの写真の事もあるし、レクトの傘下だ……きっと、俺達が得られる情報の中で一番信憑性が高い……」
そこまで言うと、キリトはリョウに向き合っていた顔を若干伏せた。
「でも……思うんだ。都合が良すぎやしないかって。俺たちみたいななんの力も無いはずの人間が、こんな簡単に、もっと巧妙に隠しそうなあいつらの事が分かっていいのかって……もしかしたら、此処は全部囮か何かで、俺たちはまんまと須郷の罠に引っ掛かって、時間を稼がれてるだけなんじゃないかって……ホントのアスナは、もっと、どこからも分からないような場所に居るのに、俺は全く見当違いの道を誘導されながら進んでるんじゃないかって……」
キリトの顔が不安に歪んでいるのは、リョウにも、ユイにも良く分かった。しかしこの状況下において、それを確認する術を持たないユイはどうする事も出来ず、唯、自分の存在を訴える事でキリトを勇気づけることしか出来ない。しかしそれすらも、キリトの中の不安と疑念は押しつぶそうとしている。
故にユイもまた、リョウに助けを求めるような視線を向けた。そして……
「そんな事は無い……とはいわねぇ」
リョウはゆっくりと口を開いた。
「が……俺が調べた限りでも、ここ以外に有力な情報はねぇ。それにな……俺は、有る意味此処だって確信してる。色々と調べたが、どうも須郷はそういうのに関してはアホっぽい人間みてぇだからな」
「え……どういう事だ?」
これまでとは違うリョウの観点に興味がわいたのか、キリトは顔を上げて再びリョウと向き合う。
煙を吸いつつ、虚空を見つめてリョウは続ける。
「あいつの周りに関して色々洗ったんだがな……どうも妙な所に自分の美学を持ち込む奴らしい。それに、人をこき下ろすが好きみてぇだな……そう言うのを考えると、わざわざ見えねぇ所に置いときゃあ良い姫さんを晒し物にするようなとこに置いとくのにも納得がいかねぇか?差し詰め、囚われの妖精姫って構図でも作りてぇんだろうよ」
「まずどうやって須郷の周囲なんか調べたんだy「企業秘密だ」はぁ……まぁ確かに分からないでもないけど……他には有るのか?根拠」
「……」
「……」
キリトとリョウは真剣な表情で向き合い……そして、リョウは再び吸った煙を吐くと……
「……勘だ!!」
「はぁ……」
結局はこうなった。キリトのついた溜息に、リョウは唇を尖らせる。
「何だ、失礼な奴だな」
「失礼も何も……人が真剣に悩んでるのに答えは勘って……ほんと、兄貴らしい」
そう言って呆れた様子のキリトだったが、その表情は明るい。何か付きものが取れたような顔をしていた。
「でも、そうだよな……今のおれたちには、そう言うのに頼るくらいしか出来ないんだ……」
「そう言う事だ。それに、俺ほどじゃねぇにしろSAOで鍛えたお前の勘だって、そう言ってるだろ?」
煙草を咥えつつ自信満々で問うたリョウに、キリトは首をかしげる。
「どうだろうな……良く分からないけど……」
「ふっ、修行が足りんようだな若者よ」
「あのなぁ……」
「叔父さんの根拠は根拠になってないです~」
「人間なんてそんなもんだ。諦めなユイ坊」
「だからウチの娘に変な事を教えるなって……」
そうこう言っているうちに、リーファが戻ってきた事で、キリトとリョウはログアウトした。
キリトは知らない。リョウが、普段の彼からは想像もできないほど、今この事に必死な事を。
リョウは気付かない。自分が、普段の彼からは想像も出来ないほど、今この事に必死な事を。
────
ローテーションを終えた三人は、山の上の方を目指して飛行する。前方には既に、洞窟……ルグルー回廊が見え始めている。
そんな中、リョウは全く関係ない事を考えていた。
『直葉《あいつ》も、何か趣味出来たのか……?』
そう思ったのは、ログアウトした時の幾つかの光景からだ。
ついさっきログアウトした時、リビングには直葉が作ったと思われるベーグルサンドが一人一つずつ置いてあった。それのおかげで直ぐにリョウ達は再びログインする事が出来たのだが、来る前に入ったシャワーの中の空気はまだ温かかったし、風呂場からリビングへの廊下には微妙に水滴が落ちていて、食器洗い機に食器を入れる時に指先が触れた直葉のマグカップも妙に温かかった。しかし彼女の靴は玄関に有ったので外に出たわけではないだろう。(というか、シャワーの後すぐにこの寒い中を外に出るとは思えない)
つまり彼女はマグカップで温かい物を飲んだ後すぐにシャワーを浴びて急ぎ足にリビングに移動(あるいはこのタイミングで飲み物を飲んだ)階段にもほんの少しだが水滴が有ったから、やっぱりすぐに上に上がった事になる。
一応声はかけたが返事はなかった。と言う事は音楽でも聞いているか動画でも見ているか、あるいは……
『ははっ、まさかな』
考えすぎだ。そう思ってリョウが回廊の前に着地した……その時だった。
──ピリッ──
「ッ……」
リョウは突然、素早く後ろに振り返る。
「リョウ?もしかしてまた?」
「んあ?あぁ……キリトはどうだ?」
リーファに問われて、リョウはキリトの方に意見を求める。
実はこういった事が、スイルベーンを出てからすでに7回ほど有った。なんとなく、「誰かが見てる」感じがするのだ。まぁ何の根拠もない、勘でしかないのだが……しかし……
「いや……今回は……」
「そうか……」
先程、再ログインした直後にリョウがそれを感じ取った時にはキリトも同様の感覚がしたと言っていた。その時にしてもその前にしても、ユイに周囲のサーチングをしてもらってもプレイヤー反応が無かったため、結局勘違いか追跡魔法《トレーサー》が付いてきているのではないかと言う事で落ち着いたのだが……リョウにしてみると、そう言った追跡等をされているというのはどうにも気分が悪かった。
「もしかしたら、自意識過剰なだけかもよ?」
「はっ、抜かせ」
からかうように言ってきたリーファに、リョウは笑いながら返し、彼女もまた、笑いながら中へと入っていく。リーファに続く前にリョウはもう一度眼下の森に振り返り……
「だと良いんだがな……」
小さく呟いた。
────
「えーっと、アール・デナ・レ……レイ……」
「ウェル・ティシズ・アール・デナ・レイ・リッツだ。だから一回で覚えろって……たったの6ワードだぞ?This is a panとそんなに変わんねぇだろうが」
「うぐぅ、んなこと言ったって……」
「あはは。でもリョウの言う通りよ。つっかえ無いで唱えないとちゃんと発動しないわよ?とりあえず、それぞれの言葉の意味と関連付けて覚えるとかするのがお勧めね」
キリトは今、リョウとリーファの指導の下で自身の種族(スプリガン)が得意とする、幻魔法の詠唱《スペル》練習に興じていた。先程からしばらくやっているのだが、理数系ながら暗記系科目が元々苦手だったキリトは、スペルの暗記が中々進んでいない。ちなみにだが、リョウの演奏の方は一度スペクターの店で練習を行い、SAOと殆ど変らなかったため既に“慣れて”いる。
「英単語の暗記みたいな事をゲームの中でやるとはなぁ……」
「こんなので音を上げるようじゃこの先大変ね。上級魔法なんて20ワードくらいあるのよ?」
「うへぇ……もう俺剣だけで戦いたいんだけど……」
「泣き言言わない!ほら、もう一回やる!」
「そうだぞ。使える力はつかわねぇとな」
「うぅ……」
「パパ、ガンバです!」
二人から練習しろと言われ、ユイの応援もあり、キリトは再び詠唱を繰り返し始めるが、矢張り悪戦苦闘中のようだ。
現在、リョウ達がルグルー回廊に入ってから2時間くらいが経過しようとしていた。すでに洞窟の主モンスターであるオークとは何度となくエンカウントしていたが、その殆どをキリトが瞬殺し、撃ち洩らしはリーファが片づけて終わらせていた。ちなみにだが、リョウは洞窟に入ってからは戦闘を極力避けている。天井も壁も三メートル以上の幅が有るものの、リョウの持つ斬馬刀を振るにはそれでもスペースが足りないからだ。
リョウ個人としては多少退屈では有るものの、たまに音楽のスキル内にある、呪歌《シング》系統のスキルで援護を行っていた。しかし、こうなって見ると《セイレーンの笛》の使いどころの難しさが良く分かると言う者だ。何しろ敵を倒そうとして笛を吹くと、余計に敵を増やすことになるのだかなかなかどうして笑えない。
『っま、そこを何とかすんのが良い使い手ってことか……』
どうやって使うかな。等と適当にふらふら考えていると、不意にリーファが声を上げた。
「あ、ごめんメッセージ来た。ちょっと待って……」
「ん?あぁ」
「オッケ」
そうして自身のメニューウィンドウを覗き込んだリーファは、何やら訝しげな表情をした後、「何だこりゃ」等と呟きながら難しい顔をする。
それが気になり、リョウとキリトが同時に問おうとした……その時だった。
「パパ、接近する反応が有ります」
突然ユイが、そんな事を言った。キリトが、「モンスターか?」と聞き返す。ちなみに、先程からユイはその能力を生かしてレーダー役をしてくれ、完璧な正確さで接近するすべてのモンスターの情報を教えてくれていた。おかげで、見通しの悪い洞窟でも不意打ちが無い。
そんなユイは、キリトの質問に対して首を横に振った。
「いえ。プレイヤーです。多いです……十二人の反応が有ります」
「あぁ?」
「じゅうに……!?」
その数にリーファは驚き、キリトとリョウは眉をひそめる。少し考えてリーファがどこか府なんそうな声で言った。
「少し嫌な予感がする……隠れてやり過ごそう」
「そりゃ良いがよ……」
「……どこに……?」
「ま、そこはまかせなさい」
同時に首をかしげた男二人に、リーファは腰に手を当て、胸を張る。デカい。
「叔父さん、どこ見てるですか?」
「ん?何の事かわからんなユイ坊」
「……リョウだけ自力で隠れる?」
「さ!速く隠れようぜ!見つかると面倒だ!」
「兄貴……」
少し女子二人にジト目を向けられたものの気にした様子も無く言うリョウに、小さく溜息をついたリーファは同じく溜息をついていたキリトとリョウを壁際のくぼみに連れて行き、少し狭いながら体を密着させるとスペルを唱える。すると三人の下から緑色のつむじ風が湧きあがり、三人を包みこんだ。リーファがヒソヒソとした声で言う。
「喋るときはこのくらいのボリュームでね。魔法が解けちゃうから」
「あいよ」
「了解……しかし便利な魔法だなぁ……」
「後二分ほどで視界に入ります……」
ユイがそう言った直後……リョウの耳が、相手の足音を捉えた。それは少し重々しい重金属の音で……
「……げ……」
すぐにその意味に気付いたリョウが、リーファに言う。
「リーファ、キリト、逃げんぞ」
一応ヒソヒソ声では有るものの、突然の言葉に二人がひるむ。
「ど、どうしたの?」
「音だ。近づいてんのは「あ、あれ、何だ?」ちっ……」
何かに気づいたようにキリトが指差した方を見たリョウが、舌打ちを打つ。リーファもそれを見た途端、急激に表情を険しくして、隠蔽が解けるのも構わず通路に飛び出した。
それは、赤く小さな蝙蝠だった。ひらひらと飛びまわりながらこちらに近づいてくる
「お、おい、どうしたんだ?」
「あれは高位魔法のトレーシング・サーチャーよ!つぶさないと!」
言うが早いがリーファは即座にスペルを詠唱し始め、彼女の手から出た緑色の針によって蝙蝠は叩き落とされた。数秒後、足音が急に速くなる。
ちなみにトレーシング・サーチャーと言うのは、追跡を行うトレーサーに隠蔽を暴くサーチャーの能力を付けた
「やべっ、来るぞ!」
「街まで逃げるよ!」
「隠れるのは……!?」
「だめ!ここまできたらサーチャーをたくさん出されるから隠れきれないわ!それにさっきのは火属性の高位魔法だから、付いて来てるのは……」
「サラマンダーか!」
「そう言う事、行くよっ!」
すぐに三人は走り出す。幸い、此処は中間地点である鉱山都市ルグルーに既に相当近い。この先の地底湖を超えれば直ぐに付く。
ちなみにトレーシング・サーチャーと言うのは、追跡を行うトレーサーに隠蔽を暴くサーチャーの能力を付けたかなり高位の魔法の事だ。当然、火属性が得意なサラマンダー以外が覚えるにはかなり大変な術でもある。
「おっ、湖だ」
キリトの言う通り、直ぐに前方には湖が見え始めた。リーファは何事かをぶつぶつと言っていたが、キリトの言葉に正面を向き直る。
地底湖の上にかかった石畳の橋を三人は走り抜ける。それなりに、と言うかかなり大きな橋で、幅だけで三メートルは有る。距離も長いが、目指す先には城壁が有り、そこが鉱山都市ルグルーの入口だ。どうやら追いつかれることはなさそうだとそう思った……その時だった。
後ろから飛来した光の球が、三人の上を通り抜ける。おそらくは苦し紛れだろうと思われたそれは、完全に的が外れており、やり過ごせば全く問題ないはずだ。しかしそれが着弾した瞬間……
「やばっ……!?」
「な……」
「おいおい……」
着弾地点から巨大な土の壁がせりあがり、橋を丸々塞いでしまったのである。これは土系統の高位魔法だ。あわててリョウとリーファはブレーキをかけるが、一人それに従わない奴が居た。
「おい!?」
「あ、キリト君!」
言うまでも無くキリトだ。背中に背負った大剣を抜剣しつつ、壁に向かって突進する。そして……
ズガアァァァァン!!という大音響とともに、打ち込んだ剣が物の見事に跳ね返された。
「無駄よ……」
衝撃でひっくり返ったキリトに、彼の前で立ち止まったリーファが言うのを、彼は恨めしそうに見つめ返す。やがて恨めしげに立ちあがると……
「もう少し早く言ってほしかったです……はい」
「君がせっかち過ぎなんだよ……土魔法の障壁は物理攻撃じゃ壊せないのよ。魔法じゃないと……」
「つーか、そんなん情報サイトで書いてあんだろうが……毎回毎回感覚でプレイングすっからそうなるんだ」
「ぬ……兄貴だってしょっちゅう勘とか言うじゃないか」
「基本知識は少なくとも身に付けて来てるつもりだ」
「そりゃそうだけどさ……」
「ほら二人とも!言ってる場合じゃないでしょ!」」
並んだまま背後を振り返ると、赤い鎧の一団が橋の袂へと差し掛かるところだった。
「飛ぶのは無理だから……湖に飛び込むってのは?」
「駄目ね。ここには超高レベルの水龍モンスターが居るらしいの。ウンディーネ無しじゃ水中戦は自殺行為だわ」
「んじゃつまり……俺たちゃあの団体さんをお出迎えしなきゃなんねぇわけだ」
「そうなんだけど……ちょっとキツイかもよ。あれだけの高位土魔法をサラマンダーが使えるってことは……相手にかなり手練れの魔法使い(メイジ)が居る事になるわ」
リーファは言いながら腰の長刀を抜剣する。涼しい金属音が、広い洞窟内に響き渡る。それに合わせ、リョウは斬馬刀をアイテム欄から出そうとして、少し考えた。ここならばホール状になっていて橋の上であるためある程度斬馬刀を振りまわす事は出来るが……
『いや……』
しかしこちらの武装は、自分は長物、キリトは大剣。先程までよりいいとはいえ、矢張り三人が一斉に戦うにはスペースが足りない。寧ろ一人で戦った方がいいかもしれない。キリトも、その事を考えたのかリーファにサポート役に回ってくれるよう頼んでいる。そうして、キリトとリョウは眼を合わせ、互いにうなづく。
『ここなら……』
アイテム欄の一つをリョウは叩く。ウィンドウの上に現れたのは、金属の光沢を身にまとう蒼い縦笛……《魔笛・セイレーンの笛》
────
「それじゃ……援護頼む!」
「えぇ!」
「おうっ!」
キリトが飛び出すと同時に、リョウは演奏を始めた。オーボエに近い少しくぐもった、しかししっかりと澄み渡った音が、洞窟内に響く。はじめとしては少し効果発動までの時間が長めの曲を選んだため、リョウの演奏効果が発動するより早く、キリトが相手を射程に入れる。
基本的に、楽器演奏は有る一定部分まで演奏が進まないとその効果が表れない。しかも効果時間が短く、基本的に演奏者はずっと演奏して次から次へと重ねがけをする必要がある。
対し、先度までリョウが使っていた呪歌《シング》は一定まで歌わなければいけないのは変わらない物の、その長さが演奏のそれよりはるかに短く、また効果時間も長い。
難易度にしても演奏の方が難易度が高いのだが……しかしそれらデメリット補うほどに、演奏による支援《バフ》効果は呪歌や魔法のそれを遥かに上回る。支援効果だけで言うならば、楽器演奏は全ての支援方法の中でトップの物だ。
そしてリョウの使用するセイレーンの笛は、それら支援の中でも効果時間の短さを克服し、しかも効果が高いというまさしく超支援特化の楽器だ。
リョウは一つたりともミスをすること無く、一気に演奏を紡いでいく。
それを待たず、キリトの初撃がサラマンダーを襲い……
「えっ……!?」
突然、リーファは驚いたような声を上げ、リョウは演奏しつつもキリトとサラマンダー達を見た。
見ると、サラマンダーは武器を構えることなく、前衛の三人が大盾を構えたのだ。
「セイッ!」
気合のこもった声とともに、その盾をキリトの剣が直撃する。しかし当然、唯盾を構えただけの彼等に致命的なダメージは届かず少し押されただけで彼等は止まる。
抜けたダメージによって前衛三人は一割ほどHPを減らしたが……そこに、即座に連続した回復魔法《ヒール》のスペルが放たれた。重唱された癒しの光は、即座に前衛達の体力を満タンにする。
『そう来たかよ……!』
直後──盾の裏から飛び出したオレンジ色の火の玉が大量の放物線を描き、キリトのいる位置に、凄まじい大爆炎とともに直撃した。黒く小さな影を、火炎地獄が吹き飛ばす。
「キリト君ッ!!」
思わず。と言った様子でリーファが叫ぶのを聞きながら、リョウは相手の分かりやすくも強固な戦術を見て取った。
要は、前衛三人は唯の壁役。物理攻撃力の凄まじいキリトの攻撃を受ける事に集中し、攻撃には参加しない。減った体力は、後ろに居るであろう九人のメイジの内、三人が回復させ、残りの六人は攻撃魔法を壁の向こうのキリトにぶち込む。
早い話が、矢で反撃してくる城壁相手に、剣で挑むようなものだ。
『物理特化のボスに使うような戦術だぞこれ……』
義弟はボスモンスター扱いかと、相手の過剰な戦力に呆れつつもリョウは演奏を続ける。リーファもすぐに詠唱の長い高位ヒールを撃ち、キリトを援護するが、あれは最早気休めでしかない。
だが此処に来て、リョウの演奏の始めの一つがようやく完成した。
進軍曲/強襲せよ炎の如く《マルツィアーレ・アサルト・フィアンマ》
これによって、キリトの物理攻撃力が格段に上がったはずだ。自身に出た支援エフェクトを見たらしいキリトが再び火炎を放たれる前にもう一度突撃する。
「うおおっ!!」
再び放たれた刃が、盾に直撃する。と……
「うおぁ……!」
「ぐっ……!」
「なん……!?」
前衛の三人が驚いた声を上げ、滑りながら先程寄り遥かに大きく後退する。減った体力は……二割五分。と言ったところか。単純計算で2.5倍のダメージを与えた事になる。凄まじい支援効果だ。しかし……
「ひるむな!防げばいいだけだ!ヒール隊、呆けるな!こちらも撃てぇ!」
『っと流石にそうは問屋が下さんってか?』
後ろに居るのだろう隊長らしき声によって、部隊は再び体制を立て直す。当然、前衛三人のHPはすぐに回復し、再びの業火がキリトを焼く。
これではキリトのHPが尽きるか、相手のMPが尽きるかの勝負だ。結果は見えている。
『なら……!』
「う……おおおっ!!」
しかしキリトは……そしてリョウもまた、諦めるつもりはない。再び違う曲を演奏し始めたリョウに合わせて、絶望的な顔をしたリーファのヒール詠唱が繰り出され、キリトを回復させる。
『これで……!』
「……!ハッ!!」
そうしてもう一発の砲撃をキリトが受けた時、二つ目の演奏が終わった。
行進曲/跳躍せよ白兎の如く《マーチ・ホワイトラビット》
跳躍……つまりジャンプ力を高める演奏だ。意図を察したのか、キリトの体が一気に跳ね上がる。しかし……
「キリト君っ!!」
再びの悲鳴。空中に飛び上がったキリトの体が、剣先が相手に届く寸前で火球に辺り、撃墜されたのだ。しかもその先は……
「しまっ……!?」
『やべっ!?』
「っ!駄目っ!」
キリトが落ちようとしている先は橋を外れ、湖の方だった。
しかし間一髪、驚くべき速度で飛び出したリーファの手がこちらに向かって吹っ飛んできていたキリトを掴み、反動でキリトの体は橋の上へと舞い戻る。が……そこに再び火球が降り注いできているのが見える。キリトはともかく、あれを食らうリーファのHPがまずい。実を言うとリーファは先程までのモンスター戦で使った体力を回復させておらず、三割ほどHPが減っているのだ。モンスター相手ならいざ知らず、あの密度の火球群を食らえばどうなるか分からない。
「リーファ!」
「やばっ!?」
『やらせっかよ!』
しかし着弾するよりも早くリョウの演奏が再び完成した。
聖譚曲/守護せよ鎧の如く《オラトリオ・プロテクション・アーマ》
「く……!」
「きゃあ!!」
飛来した火炎がリーファ達に直撃する寸前、何か薄緑色の光が彼らを守るのが、確かに確認できた。
これは物理、魔法防御力を一定時間上げる曲だ。結果として、リーファのHPは三割ほど、つまり計四割しか減っていない。キリトがリーファに戻るように指示しているのを確認しつつ。即座に次の曲。
小夜曲/癒せ聖母の如く《セレナーデ・ソワ・ノートルダム》
『んで……こうなりゃ使うしかねぇか……』
凄まじいスピードで二人のHPが回復したのを確認して、リョウは口から楽器を離した。こうなると、ちんたらとはやっていられない。
リーファの眼は既に希望をなくし、濁っているし、諦めるのも時間の問題だ。
「キリトぉ!煙幕だ!!」
「り、リョウ!?」
「……!」
リーファは驚いた様子だったが、キリトは何か策が有る事を察したのだろう。直ぐに短い詠唱を紡ぎ、キリトとサラマンダー達を煙幕が包む。そして次の言葉は……
「スイッチ!!」
「え?」
「っ!」
それは、ある意味では暗号だ。
SAOでたびたび使われた技術。スイッチ。本来はボス戦闘やモンスター戦を安全に行うためのものだが、ニュアンス的には、それは一つの意味につながる。すなわち──交代
即座に理解し、キリトは一気にサラマンダーとは逆方向に走り始める。そして、リョウは逆にサラマンダーの方へと走る。手に持ったセイレーンの笛は、アイテムウィンドウに既に収納された。
「頼む!」
「任せろ!」
そして、キリトとリョウが巨大橋の上ですれ違った直後……サラマンダーの看破魔法が発動し、煙幕が吹き飛ぶ。それと同時に、リョウは自らの武器を実体化させる。
とはいっても、それはこの世界でのメイン武装である斬馬刀では無い。斬馬刀は確かに強いし重いしデカいが、実際のところキリトの剣と重さ的にありえないほど差が有るわけではない。つまり、キリト以上の結果は出せるかもしれないが、相手のサラマンダーを突破するのは難しい。ならば……それ以上に重く、威力の高い武器が必要だ。
リョウが、アイテム欄を叩く。
走りながら振り向き見た、武器が実体化するその姿を、キリトは一生忘れる事が出来ないだろうと思った。それほどに、呼び出された武器が、圧倒的な存在感を発していたからだ。
長い柄には細かく装飾が施され、先程まで見ていた斬馬刀よりも遥かに切れ味のよさそうな銀色の刃が湖の光を反射して、ギラギラと輝く。そして何よりも、その武器を見た物すべてを睥睨するように周囲を睨みつける。一匹の黄金の龍の装飾。武器として大雑把に言うならば青龍偃月刀と呼ばれるものであるが、彼の持つそれにはたった一つ、その武器のみを示す名が有る。その名は──
「冷、裂……」
「さぁて……行くぜ?相棒」
語りかけるように言って武器を握る男の、その言葉が赤い妖精たちへの死刑宣告だった事はこのとき、キリトだけが知っていた。
────
「覇ああアアァァァァ……!」
冷裂の刃を腰だめの姿勢で後ろに構え突進するリョウを前に、サラマンダーの前衛達は再び盾をしっかりと構えこれまでと同じく防御しようとする。狙うは右側の盾。頭の中でリョウは自分に確認し、そして……
「砕ィッ!!」
ちょうどSAOの時代ならば考えられないような速度で振るわれた刃が、ちょうどUの文字を描くようにして、下側からサラマンダーの盾に叩きつけられる。その一撃は……
「「「「「「「「「……は?」」」」」」」」」
「はは……」
「え……?」
まるで……それがさも当然であるかのように、右側のサラマンダーの体を、中に浮かせて吹き飛ばした。仲間に受け止められる事も無く、橋から飛び出すように飛ばされたその体は当然橋から叩きだされ……
「うわあああああぁぁぁぁぁぁ……」
落下の恐怖からか、上がった絶叫の残響を尾に引きながら、あっという間に眼下の湖に墜落する。ドボンッ!と言う音の後に、ボチャッ。と言う何かに引きこまれるような不可解音がしたが、誰も気に留めなかった。否、気に留めることも出来なかったと言うべきか。
十一人となったサラマンダー達も、シルフ族の少女も、スプリガンの少年も、皆一様に、たった一人のプーカの青年を見つめている。殆どの物は唖然とし、一人は苦笑して。
武器を振り切った姿勢のままで静止していた彼はしかし、何事も無かったかのように武器を肩に担ぎなおす。
「さぁて諸君……旅立つ準備は、出来たかね?」
何処へなど、聞くまでも無かった。
しかしその言葉はある程度は意識を覚まさせたのか、先程も叫んだリーダーのサラマンダーが、突然怒鳴る。
「な……なめるな!!回復部隊は下がれ!三人は装備切り替え!盾は何としてもそいつを止めろぉ!」
その声で何とか騰勢を立て直したサラマンダーは、盾二人を前に出し、三人が懐から取り出した長剣を構える。視界その様子を、リョウは何の妨害もせずに眺める。後方のメイジ部隊の詠唱が始まり……
「別に俺の相手してくれんのは嬉しいがよぉ。後ろは良いのか?」
「何……「ブォォオオオオオオ!!」な……馬鹿な!?」
リョウがそう言った瞬間、後方のメイジ達の内一人の体を、突然無骨な斧が後ろから切り裂いた。あわてて振り向いたメイジ隊の前には……
「な、何故……ここに来るまでに、この周辺のMobは一掃されたはず……!」
大量、豚鼻獣人こと、オークが居た。各々、斧剣や鉈、簡素な弓などで武装している
「んま、ネタバレしてやってもいいけどそれやっとなげぇし、冷裂《こいつ》の試運転の相手オークに取られるってのも芸がねぇんで……そろそろ、逝っちゃってくれや」
そこから先は最早、語るまでも無いだろう。
実質的な彼等にとっての脅威は、冷裂の凶悪な一撃のみであったとはいえ、雑魚ながらも大量の数で押し寄せてきたオーク達によってパニックが極限に達したサラマンダー達に、その凶刃から逃れる術は無かった。
ちなみに言うまでも無いが、突然後ろに現れたオーク達は《セイレーンの笛》のエクストラスキル《モンスコルソング》によって呼び寄せられた半径五キロ圏内のオークの皆さんだ。演奏が終われば憎悪値《ヘイト》も変動するが、結局のところ彼らの狙いはリョウだったため、途中に立ちふさがったサラマンダー達を排除しようとして丁度良く彼らとぶつかってくれたのだ。
統制の崩れた軍隊など、恐るるに足らず。後は最早、一方的である。
冷裂に切り裂かれる者、リョウの怪力によって湖に放り込まれる者、オークにぼこられる者。途中から参加した巨大モンスターとなったキリトに喰われる者。切り裂かれる者。喰われる者。裂かれる者。喰われる者。喰われる者。喰われる者。
サラマンダー (と、ついでに襲いかかってきたオーク)部隊との巨大橋の死闘は、物の三分で制圧された。
ページ上へ戻る