髑髏天使
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第五十話 帰郷その十八
「本当にどうなんでしょうか」
「今調べているところじゃ」
博士もここでまた言う。
「ろくろ首はどうなっているかな」
「宜しく御願いしますね」
ろく子は博士にその伸びた首を向けて話す。
「その辺りも」
「わかっておる。本当にどうなっておるか調べるとしよう」
「それが博士の楽しみですしね」
「うむ。世の中調べることは実に多い」
そしてだった。こうも言う博士だった。
「人が知っておることなぞ所詮は」
「大海の中の小匙一杯」
「そういうことじゃ」
牧村の言葉に応える。
「その程度でしかないのじゃよ」
「しかし調べていき」
牧村も言う。
「わかっていくな」
「大海のことがな」
「少しずつだな」
「左様、何でも少しずつじゃ」
博士は知識についてだ。実に謙虚であった。
「何でも知っているとかは有り得んのじゃよ」
「人間ではか」
「僕達もだよ」
「それはね」
妖怪達もだというのだった。
「そんなの。全部なんてね」
「とれも知れないよ」
「絶対に」
「わしにしてもじゃ」
ぬらりひょんの言葉だ。妖怪達の長老の一人である。
「とにかく知らんことが多いぞ」
「わしものう」
今度はさとりであった。
「確かに相手の考えは読める」
「けれど知らないことはあるんだね」
「さとりにしても」
「だからわしは考えが読めるだけじゃ」
彼はそれだけだというのだ。
「考えはじゃ」
「そういえばどうやってわかるの、相手の考え」
「それは」
仲間の妖怪達がそれを問う。
「前から気になっていたけれど」
「どうなの、それって」
「目じゃ」
目だというのである。
「相手の目を見て読むのじゃよ」
「目なんだ」
「それを見てなんだね」
「相手の考えを読むんだ」
「洞察じゃよ、洞察」
さとりの秘密はそれであった。洞察であったのだ。
「そこから読むのじゃよ」
「ううん、今はじめてわかった衝撃の事実」
「相手の頭の中を覗けるんじゃなかったんだ」
「それはなかったんだ」
「そこまではできんよ」
さとりもそれはできないというのだった。
「目だけじゃなく言葉や表情からも読み取るがのう」
「それで知らないこともある」
「そうだったんだ」
「わしも知る為にはじゃ」
どうかというのであった。それについてはだ。
「学ばなければならん」
「やっぱりね。勉強だよね」
「妖怪も人間も結局そうだよね」
「何でも勉強」
「それだよね」
「うむ、その通りじゃ」
博士は明るい顔で頷いてみせた。
「知る為にはやはりそれじゃよ」
「そしてだな」
また話す牧村だった。
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