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髑髏天使

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第四十九話 停戦その二十一


「それじゃあね」
「苦しくは無いのか」
「特に」
「苦しみ?何かなそれって」
 死のうとしてもだ。神はそれに気付いていない言葉だった。
「知らない言葉だね」
「痛みを知らないのか」
「そして心の動きもまた」
「僕に痛みはないんだよ」
 そうだというのであった。
「僕達混沌の存在にはね」
「身体の痛みも心の痛みも」
「どちらもか」
「そうだったのか」
「そのどちらもないのか」
「そうだよ、ないよ」
 神はそれをまた二人に話す。
「人間でも動物でもないからね」
「そして妖怪でも魔物でもか」
「どちらでもない」
「妖魔だから」
 それでだというのであった。
「妖魔には痛みなんてないんだよ」
「感覚がない」
「そういうことか」
「妖魔は混沌から生まれた存在」
 そのはじまりから語る彼だった。
「混沌にあるのは混沌だけ」
「他の世界の生き物とは違うか」
「そもそもそのはじまりが」
「混沌には痛みもなければ苦しみもないよ」
 さらにだった。神はないものを語っていくのだった。
「恨みや悲しみも。人間の世界で言うものはね」
「ではその楽しみや笑いもか」
「そうしたものはか」
「混沌の中にあることが楽しいかな」
 それが彼等の楽しみだというのだった。
「それがだね」
「そうだったのか」
「貴様等は」
「そうなんだ。わかったかな」
「ようやくな」
「そのことがな」
「わかってくれたらいいよ」
 神の言葉はこうだった。そしてだった。
 その全身を赤と青の炎に包ませ。彼はその中に消えていく。
「それじゃあね」
「ではな」
「さらばだ」
 髑髏天使と死神も彼に告げてだ。そうしてであった。
 神は消えた。するとであった。
 二人のいる場所は元に戻った。現実の世界であった。
 そしてだ。そこに戻るとであった。
 髑髏天使は牧村の姿に戻った。そうしてやはりこちらの世界に服になっている死神に対してだ。顔を向けたうえで尋ねるのであった。
「終わったがだ」
「これからどうするかか」
「そうだ、どうする」
 こう死神に問うのだった。
「帰るのか」
「貴様はそうするのだな」
「もう時間も遅い」
 だからだという牧村だった。
「屋敷に帰る」
「そうか。それではだ」
「今日はこれでお別れだね」
 目玉も出て来て話してきた。
「それじゃあね」
「私達はもう少しここにいる」
 これが死神の言葉だった。
「そして遊ぶ」
「そうするのか」
「食べるものは食べた」
「後はバイクを駆ってね」
 死神と目玉二人での言葉である。
「行きたい場所に行く」
「そうするつもりだよ」
「堺は面白い場所が多い」
 牧村はその二人にこう告げるのだった。
「それではな」
「場所は気の赴くままだ」
「行くつもりだよ」
「では。まただな」
「そうだな。それではな」
「またね」
 三人は別れに入った。そうしてであった。
 牧村の前にサイドカーが来た。死神の前にはハーレーだ。それぞれ来たのだった。
 それぞれのバイクに乗りだ。そうしてであった。
「ではまた会おう」
「次の戦いの時にな」
「それまで元気でね」
「ああ。それでなのだが」
 牧村はヘルメットを被りながら彼等にまた言ってきた。
「間も無く俺は神戸に戻る」
「大学か」
「そっちがはじまるんだね」
「知っていたか」
「今の人間の世の中もわかってきた」
「それでだよ」
 こう話す彼等であった。
「その時になったか」
「遂に」
「間も無く大学の講義もはじまる」
 牧村は学生だ。そのことをよくわかっていた。そしてなのだった。
 大学の講義についてだ。こんなことも言った。
「面白い講義を受けたいものだな」
「講義か」
「現実生活も楽しんでるんだ」
「貴様等と同じだ」
 彼等とだと返す牧村だった。
「俺もまた楽しんでいる」
「それでいい」
「人間でいられるからね」
「そうだな。人の世にいる」
 牧村も言う。
「それがそのまま人でいることだからな」
「その通りだ」
「それじゃあね」
「神戸か。久しいな」
 牧村はサイドカーのエンジンを入れながら述べた。
「変わっていないが。また戻る」
「では大阪と暫し別れてか」
「神戸にだね」」
「そうさせてもらおう」
 こう話してなのだった。それでだった。
 三人は今は別れたのであった。牧村は日常に戻った。死神と目玉はそこに入る。だがそれぞれ楽しんでいることは同じであった。


第四十九話   完


              2010・12・9 
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