髑髏天使
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第四十五話 新生その三
「何かが変わりそうだとな」
「ふむ、ではそれか」
「あいつは新たに何かを司るか」
「そうかも知れぬな」
「ではそれが何か、か」
牧村はさらに踏み込んで考えた。
「それが問題か」
「そういうことになるな。混沌の神々にまつわるものだと思うぞ」
「混沌か」
「混沌と戦うものかのう」
博士は首を捻りながら言った。
「それではないのか?」
「混沌とか」
「混沌と戦うとすればじゃ」
博士の言葉が続いた。
「この場合はじゃ」
「何だ」
「秩序か」
それではというのであった。
「それかのう」
「秩序か」
「うむ、混沌の逆はやはりそれじゃろう」
博士は牧村にまた話した。
「そして戦うとすればじゃ」
「秩序か」
「それぞれの神々の系列によって様々な司るものがある」
「そうだな。それは知っている」
牧村も神話について無理という訳ではない。だとすればだ。己の中にある知識を整合させてだ。こう答えることもできたのである。
「太陽神にしてもだな」
「ギリシアではヘリオスからアポロンになったりしておるな」
「ああ」
「そして重要な神じゃ」
「確かにな」
「しかし至高神ではない」
博士はこうも話した。
「しかしエジプトではじゃ」
「ラーか」
エジプト神話における極めて重要な神の一つである。その司るものことが太陽であるのだ。
「そうだったな」
「太陽神じゃ」
まさにそれだというのだ。
「その司るものは主でもある」
「ファラオか」
「後継者であるホルスも然りじゃ」
「至高の神として王もだな」
「王権も司っておる」
「ギリシアには王権を司る神と言えば」
牧村は考えてみた。しかしこれといってであった。
見当たらなかった。こう言うだけだった。
「三つの世界のそれぞれの主神達か」
「ゼウス、ポセイドン、ハーデスじゃな」
「その三柱だったな」
「確かにそれぞれ三つの世界を治めておる」
ゼウスは天界、ポセイドンは海界、ハーデスは冥界をである。それぞれ治める世界が違うせいか彼等は兄弟でありながらそれぞれあまり仲がよくない一面もあったりする。
「しかし人の王権はじゃ」
「司ってはいないか」
「そこがギリシアとエジプトの違いになっておる」
「成程な」
「そういうことじゃ。若しかするとあの死神のいる神族ではじゃ」
「これまで秩序を司どる神はいなかった」
牧村はこのことに察しをつけた。
「そういうことか」
「可能性はある。それはな」
「そうなのか」
「うむ、それでじゃ」
「ああ、それでか」
「死神は若しかするとそれも司るようになるやも知れぬ」
こう牧村に話した。
「若しかするとじゃが」
「そうなるか」
「左様じゃ。さて」
「ああ」
「若し死神が新たな司るものを手に入れれば」
話はその時にどうなるかということに移っていた。博士が動かしたのだ。
「その場合じゃがな」
「その時はどうなる」
「強くなる」
まずは一言で答えた博士だった。
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