| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

髑髏天使

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四十四話 妖虫その二十四


 剣は凄まじい唸り声をあげてだ。妖魔に向かう。
 妖魔は避けようとしない。己のその強さに絶対の自信を持っていることがここからもわかる。だが、だった。
「ぬっ!?」
 剣は妖魔の身体を貫いた。そのまま突き刺さる。まさに串刺しだった。
 その串刺しになった妖魔にだ。髑髏天使は言った。
「こういうことだ」
「ぐう・・・・・・」
「これで終わりだな、貴様も」
「まさかとは思った」
 妖魔は串刺しになってもまだ生きていた。そのうえで言葉を出してみせた。
 そうしてだ。彼に対して言うのだった。
「だが」
「だが、か」
「この通りだ。こうなってはだ」
「負けを認めるな」
「死ぬとわかっていてそれを認めないことはしない」
 そうであるというのである。
「そういうことだ」
「潔いな」
「事実を言っているだけだ」
「それだけか」
「そうだ、それだけだ」
 妖魔の言葉は素っ気無い。
「そしてだ」
「そして。何だ」
「貴様は私に勝った」
 このことを言ってきてからだった。
「そしてこれからも戦うな」
「それしかないしな」
「ならば戦え。最後までな」
「それも最初からそのつもりだ」
「だが。貴様はやがて敗れる」
「敗れるか。俺が」
「我等混沌の中に潜む神々」
 この言葉が出て来た。
「その神々によって敗れることになる」
「混沌の神々か」
「地水火風」
 その四つがまず話された。
「そして混沌の司祭」
「あの黒い男か」
「ナイアーラトホテップ様もおられる。あの方々には勝てはしない」
「勝手な推測だな」
「推測ではない。事実だ」
「俺からしてみればそれは推測だ」
 青白い炎に包まれる妖魔を見据えて告げる。
「完全にな」
「そう思うのなら思っておくことだ」
「まだ言うことはあるか」
「ない」
 妖魔の全身は青白い炎の中に消えようとしている。そしてだった。
 その炎の中に消えながら。彼は言った。
「ではな」
「消えるか」
「混沌に帰るとしよう」
 これが彼の言葉だった。
「それではな」
「帰るか」
「そうだ、帰る」
 そして最後の言葉は。
「混沌の心地よい闇の中で眠ろう」
 この言葉を最後にして消えたのであった。そしてだ。
 二人は次の瞬間には通天閣の下に戻っていた。それを見てだ。
 元の姿に戻った。その前にだ。
 男がいた。そして二人に対して言ってきた。
「約束は守った」
「守ったか」
「まさかとは思っていたがな」
「私は己の言葉は守る」
 こう二人に断言した。
「何があろうともだ」
「混沌の中にいてもか」
「そうだ。それは言っておく」
 余裕のある笑みと共に話した。
「これでわかったな」
「わかったと答えておこう」
 死神がその彼に返した。
「しかしだ」
「しかしか」
「次だな」
 死神はこう言うのであった。
「次の戦いの時にまた、だな」
「また会おう。どうやら貴様もだ」
「私か」
「変わってきているな」
 死神を見ての言葉である。
「それもかなりな」
「変わってきているか」
「髑髏天使だけではない」
 また言ってみせた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧