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髑髏天使

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第四十三話 熾天その十四


「だからだ。それは今ではない」
「それでか」
「しかしだ」
 ここでまた言う男であった。
「その時が来れば貴様と戦おう」
「早ければ早い程いいのだがな」
「焦るな。私のもたらす破壊と混沌はまだ貴様には早い」
 こう述べて口元に余裕のある笑みを浮かべてみせていた。
「このナイアーラトホテップの闇を見るにはな」
「闇か」
「真の闇だ」
 こうも言ってみせたのだった。
「それを見るのはまだ先だ、そして」
「そしてか」
「そこからも見せてやろう」
 また話すのであった。
「真の混沌もだ」
「真という言葉が好きだな」
「少なくとも私は真だ」
「真の混沌か」
「それが私だ」
 二人に対する言葉だった。
「そしてその中にあるものはだ」
「混沌の中にあるもの」
「それは」
「貴様等はそこに辿り着けるか」
 こう二人に言う。
「そうなれば面白いのだがな」
「真の混沌の中にあるものか」
「そういえば聞いたことがある」
 死神が考える顔になって述べた。
「まず貴様がいる」
「うむ」
「扉を開ける者ナイアーラトホテップ」
 彼がだというのだった。最初はだ。
「そして四柱の神々だな」
「それを思い出したのか」
「地水風火」
 四つであった。
「そのそれぞれを司る混沌の神々だな」
「さて、どうかな」
「答えずともわかる。そしてだ」
 死神は男に対してさらに話す。
「混沌の中にさらにいたな。それは」
「そう、気分がいいから言っておこう」
 男も死神の言葉に応える形で話した。
「そこには二柱だ」
「二柱の神々か」
「我々のことはおいおいわかるだろう」
 こう髑髏天使と死神に述べる。
「しかしそこまで辿り着けるかどうかはだ」
「それは言わなくてもいい」
「いいというのか」
「そうだ、いい」
 髑髏天使の言葉である。
「それはいい。何故ならだ」
「何故なら。どうだというのだ」
「俺はそこに普通に辿り着く」
「普通にか」
「そうだ、普通に辿り着く」
 これが髑髏天使の男への言葉だった。
「そういうことだからだ」
「自信か」
「自信だがそこにもう一つ加わる」
「ほう、ではそれは何だ」
「確信だ」
 それだというのである。
「俺は必ずそこまで辿り着く。そしてその混沌の中にいる二柱の神々も倒してみせる」
「ではそうするがいい」
 男は髑髏天使の言葉を受けて微笑んでみせてきた。その微笑みは笑みは笑みでもだ。何か邪な、原始的な邪が宿った微笑みだった。
「貴様がそう確信しているのならな」
「言われずともだ。それではだ」
「話はこれで終わりだ」
 男はここでも話を自分から終わらせてきた。
「それではな」
「去るか」
「また会おう」
 こう話してだ。男は姿を消した。 
 後に残った二人はすぐに元の姿に戻った。そのうえで、であった。
 死神がだ。牧村に告げてきたのだ。
「私はこれで帰るがだ」
「また会うということか」
「そうだ。貴様は天使として最高の力を手に入れた」
「遂にということか」
「しかしそれについては何とも思っていないか」
「あくまで戦うだけだ」
 それだけだと。髑髏天使は言った。
「それだけだからだ」
「そうか。それでか」
「この力は戦い。そして生き残っていくだけの力だ」
 その髑髏天使の力はだ。そうしたものだというのだ。
「それ以上の、それ以外の何者でもない」
「それに取り込まれることはないか」
「ないようにする」
 こう死神に返した。
「今の俺の考えはこうだがな」
「いい。それでだ」
「いいか」
「そうだ、いい」
 死神も言った。
「それでな。それではな」
「そうだな、また会おう」
「次の戦いの時にでもだ」
 こう話してそれで姿を消す。牧村もサイドカーを呼んでそれに乗ってだ。屋敷に戻った。その新しい力について話した後でだった。


第四十三話   完


                 2010・9・2 
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