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髑髏天使

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第四十二話 共闘その十七


「貴様等は貴様等でな」
「はい、それでは」
「私達も私達で戦う」
 今死神は二人称を使ってみせた。自然にである。
「そうさせてもらうからな」
「左様ですか。私達ですか」
「そうだ、私達だ」
 また使ってみせたのであった。
「それでおかしいか」
「いえ」
 老人もそうではないと返す。
「そうは思いません」
「特におかしくはないか」
「しかしです」
 だがここでだ。こう言ってきたのであった。
「変わりましたね」
「変わったか」
「貴方も。そして髑髏天使も」
 牧村もだというのであった。
「変わりましたね」
「変わったか」
「これまではどちらも一人だと言われました」
「そうだな。それはな」
 死神もこのことを認めた。こくりと頷いてもみせる。
「これまでの私はな。そうだったな」
「そして俺もだな」
 牧村も言ってきたのであった。
「俺もこれまではそう答えていた。一人だとな」
「しかし今は二人です」
「如何にも」
「その通りだ」
 二人同時に認めてみせた。どちらもだ。
「俺は今は一人で戦っているのではない」
「私達は今は二人で戦っている。それは紛れもない事実だ」
「そして二人で、ですね」 
 老人はその二人に対してまた述べた。
「妖魔達を倒しますか」
「その通りだ、倒す」
「何があろうともだ」
 またしても二人同時であった。
「それを言っておく」
「貴様等との戦いは後だ」
「後ですね。それもわかりました」
 こう言われてもであった。老人の飄々とした感じは変わらない。そしてである。後ろにいる己の同胞達に対して告げるのであった。
「それではです」
「帰るのね」
「そうするのだな」
「はい」
 その同胞達の返答に答えもする。
「その通りです。それで宜しいですね」
「うん、いいよ」
「異論はない」
「それではな」
「帰り。そしてここは」
 ここからは。老人の声が楽しみを前にして期待するものになった。
「何処に行きましょうか」
「スパゲティってあったよね」
 子供の言葉である。
「あれだけれど」
「あれを食べたいのですね」
「うん、皆で食べに行こう」
 子供はうきうきとした感じの声で老人に対して言った。
「それでね。どうかな」
「そうね。いいわね」
「あれは美味い」
「それにワインとも合う」
「実に美味いものだ」
 他の魔神達も子供のその言葉に頷くのであった。
「それならここは」
「スパゲティの美味い店に行くとするか」
「そうするとしよう」
「パスタならだ」
 牧村はその彼等に対して言った。
「チェーン店でいい店がある」
「それは何処なの?」
「カプリチョーザだ」
 そこだというのである。
「量も多いし色々な種類のパスタがある。行くといい」
「カプリチョーザか」
 それを聞いて興味深そうな声を出したのは紳士であった。
「あの店か」
「知っているのだな」
「オリーブと大蒜を利かしていい実にいい」
 やはり知っている言葉だった。
「あの店ならな。全員で行けるしな」
「行けばいい。吸血鬼でも大蒜が平気ならな」
「生憎だが私は大蒜は好きだ」
 紳士は彼の本来の姿と合わせて答えてみせた。 
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