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髑髏天使

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第三十七話 光明その十七


「いいか」
「何を?」
「笹団子は今日までだ」
 言うことはそれだった。
「今日までだ」
「今日までなの」
「そしてバニラは日持ちする」
 アイスクリームだからこれは当然だった。
「それならどうする」
「お団子にするわ」
 今度は即答だった。
「それにするわ」
「団子にするか」
「ええ、決めたわ」
 こう兄に返す。
「それでね。ただ」
「ただ?」
「その笹団子だけれど」
 今度は団子を見ながらであった。
「随分美味しそうね」
「お婆ちゃんの手作りだ」
「そう、お婆ちゃんのね」
「美味い」
 感想はこれ以上不要だった。
「それは言っておく」
「そう、美味しいの」
「是非食べるといい」
 そしてこう言って勧めるのだった。
「残った分は好きなだけな」
「それで幾つ残りそうなの?」
「三つだな」
 数の話にもなった。
「三つ残る」
「そう、三つね」
「俺は五つ食べたいがな」
「四つにして」
 むっとした顔で兄に告げる。
「いいわね、四つよ」
「俺が四つか」
「兄妹なんだから半分こにしてよ」
「俺は身体が大きい」
「私は志が大きいのよ」
 強引に言い返す未久である。
「だから。いいわよね」
「それで四つか」
「そうよ。五つ食べたら許さないから」
 完全に本気の言葉だった。
「それはいいわね」
「仕方ないな。では四つだ」
「当たり前でしょ」
 むっとした顔で兄に返す。
「それは」
「それもそうか」
「そうよ。兄妹じゃない」
 そしてこうも言うのだった。
「兄妹は公平に。お母さんいつも言っているじゃない」
「そういえばそうだったな」
「そうよ。だから半分こよ」
「わかった。ではそうする」
「全く。油断も隙もないんだから」
「御前といると自然とそうなる」
「自然って?」
 またしてもむっとした顔で兄に返す。
「どういうことよ、それ」
「御前がいつも何でもかんでも好き勝手に先に食べるからだ」
「お兄ちゃんの分はいつも残してるじゃない」
「十個あったら三個だけだな」
 つまり三割程度というわけである。随分な取り分である。
「それだけだな」
「ちゃんと十個あったら四個は絶対に残してるじゃない」
「それでも御前の方が多いぞ」
「それでも残してるわよ」
 言葉に少し逆キレも入ってきていた。
「ちゃんとね」
「それで今は半分こか」
「悪い?」
「不公平も甚だしいな」
 表情を変えずに抗議した。
「それは」
「女の子はそれでいいのよ」
 最早論理も何もなかった。 
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