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髑髏天使

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第三十七話 光明その三


 そしてそのうえでだ。こう言うのだった。
「そうだな。あれはな」
「いいよな、やっぱり」
「あれも男のロマンだよな」
「金はあれの為に使うもんだよ」 
 男達は口々に言う。目が輝いている。
「ロマンの為にな」
「あれで道路を走るのがいいんだよ」
「格好よさ極まれりってな」
 こう言ってであった。口々に話していく。そうしてだった。
「兄ちゃんのサイドカーとどっちがいいかな」
「そうだよな、どっちがいいかな」
「ハーレーかサイドカーどっちがな」
「俺はどちらも好きだ」
 その牧村の言葉だ。
「だが乗っているのはサイドカーだ」
「これからハーレーはどうするんだい?」
「そっちも乗るのかい?どうするんだい?」
「それはまだ考えていない」
 好きではあるがだ。それでも買うことはまだ考えていないのだ。財政的な面もあるがそれ以上にだ。好きでもサイドカーで満足してもいるからだ。
 それでだ。彼はまた言うのだった。
「サイドカーも充分過ぎる程いいしな」
「あの黒と銀の配色な」
「それもいいよな」
「あのカラーリングもセンスいいしな」
「最高なのは黒と黄色だけれどね」
 叔母が絶妙のタイミングで言ってきた。
「黒だとね」
「黒と黄色か」
 牧村もその配色に顔を向けた。
「確かにな。それもいいな」
「最悪は黒とオレンジだがな」
「それは止めてくれよ」
「折角のサイドカーが台無しだからな」
 男達は巨人の色は否定するのだった。
「まあ黒と銀は渋くていいけれどな」
「あんた配色のセンスあるよ」
「全くだ」
 そしてまた彼を褒めるのだった。そしてだ。
「俺もサイドカーにするか?」
「おいおい、ハーレーはどうするんだよ」
「そっちはどうするんだ」
 そのハーレーを持っているという男の言葉に一斉に突っ込みを入れたのだ。56
「捨てるとか言うなよ」
「そんなことしたらバチが当たるぞ」
「誰がそんなことするかよ」
 彼も捨てるという言葉にはムキになって返してきた。
「ハーレーは俺のもう一つの身体なんだぞ」
「じゃあ何でサイドカーもなんだよ」
「買うっていうんだよ」
「だから両方愛するんだよ」
 そうだというのである。両手を拳にしての言葉だ。
「ハーレーもサイドカーもな」
「どっちもか」
「また大胆だな」
「そこまで言うか」
 彼の仲間達はその言葉に感嘆さえしていた。
「何かここまではっきりした言葉はじめてだよな」
「ああ、全くだよ」
「漢だよ」
 こうした言葉まで出ていた。
「じゃあ頑張れ」
「頑張って両方愛してくれ、絶対にな」
「ああ、俺はやるぜ」
 今誓うのだった。
「絶対にな。どっちも愛するからな」
「それでカラーリングはわかってるよな」
「それもな」
「ああ、黒と黄色だ」
 阪神は最早絶対だった。虎から離れることはなかった。
「絶対にそれだからな」
「何か凄い話になったね」
 叔母はここでまた温かい顔で言うのだった。
「あんたも罪な男ね」
「俺か」
「そう、あんたもね」
 そして牧村にも言うのだった。 
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