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髑髏天使

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第三十五話 瞑想その十一


「そうでしょ?やっぱり」
「何故そうなる」
「いいじゃない。若奈さんいい人だし」
「それはそうだがな」
「あんないい人いないわよ」
 こうまで言うのだった。
「顔も奇麗だし」
「顔もか」
「そうじゃない。もうアイドルになれる位」
 未久の言葉は本気である。
「それもトップアイドルにね」
「そうだな。それはなれるな」
「そうよねってお兄ちゃんも言ったわね、今」
「言ったがどうした?」
「開き直ったし。まあとにかくお兄ちゃんもそう言うんだったら」
 それでだというのである。
「決まりね。若奈さんと一緒になってね」
「また勝手に話を決めてくれるな」
「妹さん達とも仲良くなれてるし」
「あら、未久も隅に置けないわね」
 母親がここで娘の言葉に笑ってきた。
「そうだったの」
「そうなのよ。お母さんもマジックには行くわね」
「ええ、よくね」
 しかも母もであった。
「行くわ。将来の娘に会いにね」
「いい人でしょ、若奈さんって」
「いい娘ね。ただ」
「ただ?」
「来期と若奈ちゃんが一緒になったら」
 母も勝手にこんなことを言う。しかもである。既に言葉はちゃん付けである。牧村も未久もそれには気付いている。そのうえで先に言ったのはだ。
「あっ、お母さん今」
「ええ、言ったわよ」
 しかもわかっていたのだった。
「若奈ちゃんってね」
「何時の間にそんなに仲良くなってたの?」
「だってあの娘誰にでも優しいし親しげでしょ」
「そうなのよね。そこがまたいいところで」
「だからよ。いい娘だからね」
 にこりとしての言葉だった。
「こうして自然にね」
「仲良くなったのね」
「そういうこと。今もね」
「成程ね」
「それでだけれど」
 ちゃん付けの話から戻してきた。
「若し来期が若奈ちゃんと一緒になったら」
「それね」
「それよ。若奈ちゃんはあのお店の跡取り娘よね」
「三人姉妹の長女さんだからね」
 それはもう決まっていた。既にである。
「それはもうね」
「だったら来期が婿入りするのね」
「そうよね。けれどお兄ちゃん長男だし」
「どうなるのかしら」
「それじゃあ私がお婿さん取るの?」
 未久がこう話す。
「それなら」
「そうよね。なるわよね」
「お婿さんね。私も」
「結婚するけれど来期はあちらの家に入って未久は家に残って?」
 こう考えていく。
「そうなるわよね」
「そうそう、それはね」
 また話す娘だった。
「なっていくわよね」
「そうよね」
「話が何時の間にか進んでいるな」
 一人蚊帳の外になっていたその長男の言葉だ。
「何時の間にだ」
「ああ、お兄ちゃん」
 最初に気付いたのは妹だった。
「いたの」
「いたが」
 こう返す。 
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