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髑髏天使

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第三十三話 闘争その十六


「それで今こうして無様に転がっているというわけだ」
「そうか。死んだか」
「知り合いだな」
「通っていた中学校の教師だった」
 こう死神に答えた。
「嫌な奴だった」
「この男の寿命は本来はより長かった」
「長かったのか」
「だが。あまりにも悪事を重ね過ぎた」
 死神の声が蔑むものになってきていた。
「その結果だ。こうしてだ」
「連れて行かれたのだな」
「魂を刈ったのは私だ」
 他ならぬ彼自身だというのである。
「あちらの神々から直々に連れて来いと言われてな」
「それでか」
「悪人の寿命は短くなるものだ」
 死神は牧村にこうしたことも話してきた。
「特にこの男の様な輩はな」
「自業自得というころか」
「随分なことをしてきたのだな」
「生徒を恒常的に虐待していた」
 牧村は語った。実は今無様に転がっているこの男こそが博士や妖怪達に話していたその教師だったのである。その暴力教師だったのだ。
「それは俺も見た」
「その結果だ。この男は死んだ」
「平生強一も遂に死んだか」
「この男はこれから地獄に落ちだ」
 悪人の行く先はそこしかなかった。
「そして未来永劫責められるのだ」
「いいことだ。こいつはそれだけのことをしてきた」
 牧村の言葉も実に冷たい。
「是非共そうあるべきだ」
「私もそう思う。そしてだ」
「そして?」
「ここに来た理由はこれだけではない」
 牧村を見据えながらの言葉であった。
「この男の魂を刈るだけではな」
「わかった」
 最早言わずもがなであった。牧村はまずはサイドカーから降りた。
 そしてヘルメットを脱ぎだ。あらためて死神と対峙するのであった。
 そのうえでだ。彼に告げた。
「貴様と闘うのも久し振りだな」
「見せてもらおう」
 死神はまだ闘う姿にはなっていない。しかし既にその心に鎌を持っていた。
「貴様がどうなるのかをだ」
「見ればいい。だが」
「だが。何だ?」
「俺はあくまで人間だ」
 こう言うのであった。
「魔物ではない。それは言っておく」
「確かに今はそうだ」
 死神もまずは否定はしなかった。
「しかしだ」
「しかしか」
「これからはわからないな」 
 こうも言うのであった。
「違うか。それは」
「戯言だ。俺は俺だ」  
 しかし彼も引かない。
「それ以外の何者でもない」
「だといいがな」
「だといいがな、か」
「私は貴様はこのまま魔物になるとも見ている」
 死神は今このことをありのまま述べた。
「そしてだ」
「闘いの中に溺れるか」
「そうなるかも知れぬ。それを見極めさせてもらう」
「その為に闘うか」
 牧村の今の言葉には感情はなかった。しかし何故かそこには冷笑も見られた。
「因果なものだな」
「全ての存在は因果の中にある」 
 だが死神はこう返しもした。
「私も。貴様もだ」
「そして俺の因果はか」
「髑髏天使としての因果だ」
 まさにそれだというのである。 
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