髑髏天使
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第五話 襲来その八
「それは。違うのではないのか?」
「違う?」
「そうじゃ」
このことを言う博士だった。
「御主は御主じゃよ」
「俺は俺・・・・・・」
「だからじゃ。御主は牧村来期じゃな」
「そうだ」
この問いにははっきりと答えることができた。
「その通りだ。それは」
「それが答えじゃよ」
にこやかに笑って牧村に言ってきた。
「それがな。紛れもない答えじゃよ」
「そうなのか?これが」
「髑髏天使ではあってもな。御主は御主じゃ」
「髑髏天使でもか」
「心じゃよ」
博士が次に出したのは心であった。
「心さえ人であったならばな。それで人なのじゃよ」
「そうなのか」
「連中は違うのじゃ」
今度は魔物達について話を移してきた。
「連中はな。心が魔物なのじゃよ」
「心がか」
「元は人間だった連中もおるぞ」
博士は一つの真実を牧村に告げた。これは牧村にとっては驚くべきことであった。
「人間だっただと」
「そういう奴もおるぞ。しかしじゃ、人であることを心で捨てたからこそ」
「魔物になったのか」
「そういうことじゃ。姿はどうでもいいのじゃ」
博士に言わせればそうであるらしい。
「大事なのは心。それは言っておくぞ」
「心がそんなにか」
「左様。見てみるがいい」
「むっ!?」
「この連中を。どうじゃ?」
博士が今度言ったのは今も周りにいる妖怪達だ。見れば妖怪達は部屋のあちこちでふざけ合ったり花札をしたりテレビゲームをしたりしている。実に気楽な様子である。
「何か恐ろしいものを感じるか?」
「いや」
博士のこの問いにはすぐに首を横に振ることができた。
「何一つ。ない」
「そうじゃろ。そういうことじゃよ」
「そういうことか」
「この連中は妖怪じゃよ」
これまた言葉だけでは言うまでもないことであった。
「しかしじゃ。心は妖怪だからそうなるのじゃ」
「魔物ではなく妖怪か」
「わかっておるではないか。そういうことじゃ」
「この連中も心が魔物になれば魔物になるのだな」
「人もまた同じじゃ」
「そうか。心か」
「このことはよく覚えておいてくれ」
博士の言葉は念押しになっていた。
「よおくな」
「わかった。それならな」
「博士」
話が一段落つくとここで女の声がした。
「お茶が入りました」
「おお、済まんな」
「お茶?」
「牧村さんも如何ですか」
言葉と共に顔が彼のすぐ目の前に出て来た。
「宜しければ一杯。抹茶ですが」
「抹茶・・・・・・」
話を聞くよりも前にその顔を見ていた。その顔は黒いボブの髪型に眼鏡がよく似合う知的な顔立ちをしていた。美人と言ってもいい。目も奇麗で唇も形がいい。白い顔に化粧が見事に映えている。その化粧も高校の教師めいていてそれが余計に彼女に似合っている。彼はその顔を見たのである。
「抹茶か」
「そうですけれど」
「抹茶は好きだがしかし」
「しかし?」
「あんたは何者だ」
怪訝な顔で彼女のその知的な顔を見つつ問うた。
「いきなり出て来たが。一体」
「ろくろ首です」
「ろくろ首!?」
「知ってますよね」
平気な顔で牧村に問うてきた。
「ろくろ首のことは」
「それは知っているが」
答えはするが怪訝な顔はそのままだった。
「しかし。何故ここに」
「妖怪だからいるんですよ」
笑いながら首を後ろにやってきた。見れば顔はそのまま後ろに向かい収まっていく。牧村はその首の動きを見ていたが首はするすると動き縮まっていき胴体に収まった。レモンイエローのタイトのスーツに包まれた見事なプロポーションの身体がそこにあった。ズボンだがそれが余計に引き締まった美貌を見せている。
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