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髑髏天使

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第三十一話 赤眼その十


「あくまでフェシングとテニスにだけ必要なトレーニングだけじゃない」
「それがいいのか」
「余分な筋肉はかえって邪魔なのよ」
 若奈はこのことを指摘した。
「それはね」
「そうだな。動くのにあたってな」
「テニスにはテニスの」
 さらに言う若奈だった。
「フェシングにはフェシングの筋肉があるから」
「では例えばだが」
「例えば?」
「野球に格闘技の筋肉をつけてはだ」
「ああ、それ絶対に駄目だから」
 すぐに答えが返って来た。
「野球は球技であって格闘技とは全然必要な筋肉が違うから」
「そうだな」
「そんな筋肉は百害あって一利なしよ」
 そこまでだというのである。
「そんなトレーニングとかしたら後で大変なことになるから」
「間違いなくだな」
「そう、絶対よ」
 若奈の今の言葉はまさに断言だった。
「牧村君もね」
「俺もだな」
「そう、あくまで必要な筋肉だけを身に着ける」
 そうしなければならないというのだ。
「本当にそうしないと」
「何にもなりはしない」
「だから。牧村君には牧村君のトレーニングがあるから」
「わかっている」
 言われずともであった。既にそれを踏まえて最初からトレーニングをしているのだ。彼にしてもそうした道理はわかっているのである。
「そういうことだな」
「変なトレーニングはしないに限るわ」
 それは若奈も言った。
「さもないとかえって駄目になるから」
「食べ物は」
「それは別に気にしなくていいわ」
「それはか」
「今のままでもバランスよく食べてるし」
 だからいいのだというのである。
「お菓子は結構採り過ぎかしら」
「その分は動いているが」
「ふふふ、そうね」
 ここでは少し微笑みもした。実際のところこのことは彼女も人のことが言えなかった。彼女にしても甘いものは好きだからである。
「それだと問題ないわね」
「むしろ脂肪率はかなり減っている」
 これが牧村の現実だった。
「トレーニングをするようになったからな」
「物凄いトレーニングだからね」
 若奈もそれはよくわかっていた。
「実際にね」
「動けばそれだけカロリーが減る」
「そうよ。あの金田正一さんはね」
 通算四〇〇勝をあげたその大投手である。彼は食事に気を使っていたことでもかなり有名である。つまり身体に気を使っていたのだ。
「一日六〇〇〇カロリー採っていたそうよ」
「六〇〇〇か」
「そう、六〇〇〇カロリー」
 それだけだというのである。
「相当のものよね」
「普通の人間が確か」
「一日三〇〇〇カロリーよ」
「そうだったな」
「それの倍採ってたのよ」
 単純に計算すればそうなる話だった。
「監督になってからも。ロッテね」
「マリンズか」
「その時はオリオンズだったけれど」
 何気にそういうことも知っている彼女だった。 
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