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髑髏天使

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第四話 改造その十一


「それとはまた違う」
「では何だ」
「確信だ」
 あえてこう言ってみせたのだ。髑髏天使として。
「この俺のな」
「いい言葉だ。余計に倒したくなったぞ」
「余計にか」
「貴様の実力は確かなものだ」
 それはもう読み取っていたのである。そうした意味で実に冷静かつ沈着な蟷螂人であった。そしてその実力も確かなことが窺える。
「それもわかっているしな」
「そうか」
「では。行くぞ」
 遂に前に出た蟷螂人だった。
「決める」
「ならば」
 髑髏天使もまたアクセルを思い切り入れた。するとこれまでより遥かに強い力が感じられた。それは彼が今まで感じたことのない程のものだった。
 それが信じられない速度を起こす。サイドカーとは思えないまでの。サイドカーはそのまま一直線に蟷螂人に対して向かうのだった。
「なっ、この速さは」
「そうか、これが博士の言っていた」 
 髑髏天使は悪魔博士が言っていた言葉を思い出していた。
「改造の一つか。先程の自動操縦と同じ」
「サイドカーの速さではない」
 このことは蟷螂人にもわかっていた。
「尋常なものではない。これは」
「よし、ならば」
 その速さを受けて髑髏天使はあることを思いついたのだった。
 そしてそれを実行に移す。それは。
 右に動いた。それまでは左に動き蟷螂人を擦れ違いざまに斬るつもりだった。しかしそれを止めたのだ。別の方法を選ぶことにしたのだ。
 右に動きその側車を蟷螂人のバイクにぶつける。すると彼のバイクはバランスを崩しその場で激しくスピンした。
「なっ!?」
 まるで駒の様に回る。倒れこそしないがそれでバランスを完全に崩してしまっていた。最早戦闘に移ることは不可能になっていた。
 蟷螂人の後ろに出た髑髏天使はここで反転した。そのうえで再び突っ込み剣を繰り出した。それで勝負は決したのであった。
 乗っているバイクごと激しくスピンを続けていた蟷螂人だがその中で胸を刺し貫かれたのだった。髑髏天使の剣は彼の心臓を寸分違わず貫いていた。これで決したのである。
「うぐ・・・・・・」
「終わったな」
 スピンを無理矢理止められた蟷螂人に対して告げる。
「これでな。終わりだな」
「見事と褒めておこう」
 蟷螂人は呻きつつ彼に述べた。
「まさか。こう来るとはな」
「咄嗟に思いついた」
 剣を消しつつ彼に述べる髑髏天使だった。
「それが上手くいった。それだけだ」
「それだけか」
「そうだ。若し左に抜けていればわからなかった」 
 こうも蟷螂人に告げる。
「そうなれば。俺の方が倒されていたかもしれん」
「戯言を言う。勝ったのは貴様だ」
 しかし蟷螂人はこう言って彼の言葉を退けたのだった。
「勝ったのは貴様だ。そして敗れたのは俺だ」
「そうか」
「そうだ。それだけが真実だ」
 これが蟷螂人の言葉だった。
「勝敗だけがな」
「つまり必然の結果だったということか」
「そのサイドカー、見事なものだ」
 今度は彼の乗るサイドカーを褒めてきた。
「普通のものではあるまい。違うか」
「その通りだ」
 彼もそのことを認める。
「これは。改造された」
「科学以外のものも入っているな」
「錬金術らしい」
 この辺りはまだ完全に受け入れてはいないのでこう答えたのだった。
「話によるとな」
「面白いことだ」
 蟷螂人は錬金術まで入っていると聞いて興味深そうに述べた。
「今それを使える人間がいるというのはな」
「何分変わり者でな」
 博士のことを思い出しつつ述べる。
「そういうのも身に着けているそうだ」
「そうなのか」
「どちらにしろ。見事な闘いだった」
 彼もまた相手を称賛したのだった。その戦いぶりを。
「闘いを楽しむ趣味はないがこう言っておこう」
「感謝する。その言葉で迷いはなくなった」
 蟷螂人の言葉に笑みが含まれていた。
「それではな。さらばだ」
 最後にこう言い残して紅蓮の炎と化した。髑髏天使はまた勝利を収めることができたのだった。
 闘いが終わるとすぐに牧村の姿に戻った。そのうえで再びサイドカーのアクセルを踏むとここで携帯が鳴った。ヘルメットを取ろうとしていた手を止めて胸のポケットに入っているそれを取り出すのだった。するとすぐに彼が最もよく知っている声が出て来たのだった。
「ねえお兄ちゃん」
「何だ、御前か」
「何だはないんじゃないの?」
 未久の明らかに不機嫌な声が返ってきた。
「折角可愛い妹が電話してきたのに」
「御前は可愛かったのか」
 また随分と惨い返し言葉だった。
「初耳だがな」
「お兄ちゃん、本当に人間関係大丈夫?」
 妹もまた負けてはいなかった。
「そんなので。お友達いるの?」
「苦労はしていない」
 こう言われてもぶしつけな返事は変えない。 
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