髑髏天使
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第二十八話 監視その十八
腕をさらに出してきた。今度はその二対の腕からそれぞれだ。また四本の腕を出してきたのである。そのそれぞれの手にも盾や斧、槍、剣がある。
そしてその上も。左右に一つずつ顔が出て来たのである。
「顔までもか」
「出せるというのか」
「それまでも」
「インドでは顔もまただ」
魔物はその顔を己の頭の左右から浮き出させながら言ってみせる。その姿はさながら阿修羅の様であった。異形のその顔が三つになってきていた。
「多くあるのだ」
「多くか」
「そうだ、この様にだ」
「顔もまた多くある」
「腕と同じにだ」
こう言ってであった。その三面八臂の姿を見せる。禍々しい姿であった。
「どうだ、この姿は」
「確かにな」
「強そうではある」
「それは確かだ」
死神達は彼を取り囲みながら述べた。
「それで私を倒すのだな」
「その姿で」
「その通りだ」
「最早貴様を見逃すことはない」
「決してだ」
その三つの顔でそれぞれ言ってみせる魔物だった。
「その為の三面だからだ」
「それもまた言っておく」
「いいな」
「話は聞いた」
「それはな」
死神達はその三面の言葉に対してこう返した。
「聞きはした」
「それではだ」
「遠慮なく闘わせてもらおう」
「面白い。これでこそ闘いだ」
周囲から迫るその六本の鎌をそれぞれ防ぎながらの言葉だった。一本の腕で一人を相手にして。そしてもう二本の腕で死神達を攻撃するのであった。
「受けるのだ」
「これをだ」
「むっ!?」
「くっ」
死神達はそれをかわしはする。しかしであった。
その二本の腕の攻撃をかわすとここでぞれぞれが相手をしている腕が来る。それで死神達は取り囲みながらも劣勢に追い込まれていた。
「まさかな」
「ここまで分かれてもか」
「貴様を倒すことはできないのか」
「ようやくわかったか」
「俺のこの力が」
「この期に及んで」
魔物の声はここで勝ち誇ったものになってきていた。
「闘いを進めてやっとわかったというのだな」
「いや、わかってはいた」
「今出て来るとなるとだ」
「それだけのものがあるのはな」
わかっていたと。死神達は答えた。
「それは既にだ」
「六人でも駄目であろうというのはだ」
「予想はしていた」
「予想していただと」
「ここでも言うのか」
魔物はその三面から死神達にそれぞれ告げた。
「ではまさか」
「まだ何かあるというのか」
「切り札は一枚とは限らない」
死神はここでこう言ってきた。そのうちの一人がだ。
「それは今はじめて貴様に言うことだ」
「ではまさか」
「六人で終わりではない」
そうだというのである。
「こうしてだ。影にそれを潜ませておいた」
その言葉と共に魔物の影の中からもう一人死神が出て来た。頭から出て来てそのうえで彼の背にその鎌を突き刺したのであった。
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