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髑髏天使

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第二十八話 監視その十三


「しかし。確かに髑髏天使になったな」
「見ての通りだ」
「ならば確かに受けた」
 魔物は頷いた。ぎこちない動きで。
「でははじめるとしよう」
「言っておくが遠慮はしない」
 言いながら早速その身体を赤くさせてみせた。両手に剣が出て翼も生える。権天使になったのだ。
「いいな、それで」
「いいだろう。貴様の全力を見せるのだ」
「それで焼き尽くされてもいいのだな」
「俺が燃えることはない」
 魔物はこう彼に返してきた。
「決してだ」
「燃えないというのか」
「不思議だというのか。それが」
「木は燃えるものだ」 
 髑髏天使がここで言ったのは木に関する常識のことだった。
「それで何故燃えないと言えるのだ」
「なら見るのだ」
 魔物はここでは多くは語らなかった。あえてであった。
「それをだ」
「仕掛けて来いというのか」
「どちらにしろそのつもりだな」
 魔物は既にそれは決まっていることして言ってきた。
「そうだな。違うか」
「それはその通りだ」
 髑髏天使もそれは否定しなかった。
「ではだ。行くぞ」
「来るのだ、見せてやる」
 お互いに言い合う。そうしてまずは髑髏天使は身構えた。そうしてであった。
 魔物の周りに幾つもの火柱を出した。彼を四方八方から取り囲んでいる。
 そしてその火柱がだった。それぞれ一直線に一斉に魔物に突き進んできた。
「これが貴様の炎だな」
「そうだ、これがだ」
 まさにそうだと答えてみせた。
「これがだ。俺の炎だ」
「それで俺を燃やすというのだな」
「見ればわかることだ」
 髑髏天使はここでもあえて多くは言わなかった。
「これがだ」
「ではだ。俺は動かない」
「動かないというのか」
「そうだ。受けてみせよう」
 こう言ってであった。実際に動かないのだった。
 魔物は全く動かない。一歩もだ。そしてそのまま無数の火柱を受けてみせた。
 木の身体で火を受ける。すると。
 彼は全く燃えなかった。何一つだ。まるで何でもないといったように火の中で立っていた。
「燃えないというのか」
「そうだ。燃えはしない」
 彼は平然と言ってみせるのだった。その火の中で。
「それは何故かわかるか」
「どういうことだ、これは」
 声は冷静だった。しかし怪訝なものが僅かに入っていた。
「俺の炎が木を燃やせないというのか」
「火が弱いのはだ」
 魔物の声は相変わらずぎこちない。だが確かに言うのだった。
「水だな」
「では貴様は」
「そうだ。俺の身体には水が多く含まれているのだ」
 こう言うのである。
「そしてそれを出すことができる」
「木は水を出すことができる」
 彼は述べた。
「それによってだ」
「それでなのか」
「その通りだ。だから俺には火は意味がない」
 己の中にあるその火を防ぐものを堂々と言ってみせた。
「それを言っておこう」
「そうか。それではだ」
「行くぞ」
 こう言ってであった。今度は魔物の方から来た。
 身体の動きは相変わらずぎこちない。だがその動きは。
「速いな」
「木を甘く見ないことだ」
 言いながら信じられない速さで一直線に向かって来た。そうしてだった。  
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