髑髏天使
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第二十八話 監視その六
「そうね。あの娘ならいいわね」
「いいのか」
「可愛いし素質もあるし」
そしてにこりとも笑うのだった。
「丁度いいわ」
「いいのか」
「妹に欲しいわ」
こんなことまで言うのだった。
「是非ね」
「妹にか」
「よかったらくれないかしら」
にこにことしながら牧村に問うてみせたのである。
「未久ちゃんね。私の妹にね」
「妹はもういるだろうに」
牧村は彼女が三人姉妹の長女なのを指摘した。そのことはもう知っているのである。
「それでもか」
「それでもよ。妹がもう一人欲しいのよ」
それでもだと。はっきり返したのである。
「もう一人ね」
「四人姉妹か」
「三人と二人よ」
四人姉妹は否定してそれだというのである。
「そういう意味の妹よ」
「意味がわからないが」
「今はわからなくてもいいわよ。ただ」
「ただ。今度は何だ」
「牧村君もお茶やコーヒーのことはよく勉強しておいてね」
言葉は今度は真面目なものになっていた。
「わかったわね、それは」
「それはいつもしているがな」
「だったらいいわ。それじゃあね」
「そのイギリス王室のお茶だな」
「はい、これ」
それを出してきたのだった。その側にはミルクのポットも添えている。若奈はその白いミルクポットの中についても説明してきた。
「ホットミルクよ」
「ロイヤルミルクティーか」
「イギリス王室だからね」
にこりと笑って話す。まさにそれだというのである。
「だからね」
「わかった。それではな」
「ミルクも選んでるのよ」
「ミルクもか」
「お茶に合うミルクよ」
「それもか」
話を聞きながら今はであった。紅茶だけを口にする。今はその中にミルクを入れようとはしない。まずは紅茶を飲むのであった。
そうしてそのうえで。若奈に言葉を返すのだった。
「あれか。杯に相応しい酒をというのだな」
「そうよ。牧村君はお酒はやらないけれどその例えなのね」
「これが一番いいと思った」
だからそう例えたというのである。
「これがな」
「成程、そうなのね」
「確かに美味いな」
その茶を飲みながらの言葉である。
「この味はな」
「いいでしょ。流石って思えるわよね」
「その通りだ。上品な味だな」
「それでミルクもね」
「このミルクは」
「それのルートは前と同じよ」
変わらないというのである。
「今までと同じ。ただ」
「ただ?」
「向こうの牛が変わったみたいなのよ」
「牛がか」
今の言葉を聞いた牧村の目が微妙に動いた。
「牛が変わったのか」
「具体的には牛が食べている草が変わったみたいなのよ」
「牧草がか」
「アルファルファをメインにしたらしいのよ」
牧草の一つである。牛にかなりいいと昔から言われている牧草である。
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