| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

髑髏天使

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十六話 座天その二十二


 その中に消えてしまった。闘いがまた一つ終わった。
 髑髏天使は空を舞いながらそれを見届けていた。そしてその頃もう一つの闘いもまた。
 死神とイブリースは対峙している。その中で、だった。
 また槍を投げてきた魔物だった。死神はまたそれをかわした。
「動きは変わらないのね」
「何度も言うが見切っている」
 こう魔物に返すのだった。
「貴様の槍はな」
「そうね。けれど動きは落ちてきているわね」
「落ちてきているというのか」
「変わってはいないわ」
 そう言った上でさらに言うのであった。
「それでも。速さは落ちてきているわね」
「そうだというのだな」
「そして僅かなその落ちが」
 魔物の言葉に笑みが入った。
「貴方の敗北につながるわ」
「貴様は違うというのか」
「私は体力をそんなに使ってはいないわ」
 だからだというのである。
「だから動きはまだ」
「落ちていないか」
「そうよ。貴方は身体全体を使ってかわしているけれど私は」
「楯を使うだけか」
「ええ」
 まさにそうだというのだった。
「その通りよ」
「だからか」
「貴方の方が体力を使っている」
 神である為に汗はかいていない。しかしわかるというのであった。
「それは次第に出て来るわ」
「そして貴様が勝つというのだな」
「そうよ」
 声の笑みがさらに強いものになった。
「その通りよ」
「そこまで上手くいけばいいがな」
「いくわ」
 それは確信している声であった。
「間違いなくね」
「そうか。貴様はそう思っているのだな」
「その通りよ。さて」
 槍をまた構えてきたのであった。
「また投げるけれど」
「かわすというのだな。私が」
「そうするしかないなわね。そして貴方の攻撃は」
「いいことを教えてやる」
 不意にこう告げた死神だった。
「一つな。教えておこう」
「いいこと?」
「楯が防げるのはその前だけだ」
 こう言うのであった。
「横や後ろは防ぐことができない」
「それがどうしたというのかしら」
「それを告げた」
 彼はまた言ったのだった。
「今確かにな。聞いたな」
「ええ、聞いたわ」
 それは認める魔物であった。
「けれどそれが一体どうしたのかしら」
「見るがいい」
 その言葉と共にであった。死神は身体を分けた。
 六人いる。そのそれぞれの口で言ってみせたのであった。
「貴様は確かに強い」
「それは認める」
「しかしだ」
 そのそれぞれの死神の言葉である。
「一人でしかない」
「だとすれば勝てる」
「一人ならばな」
「六人に分かれたのは見事よ」
 魔物はその死神の分け身を見ても動じたところはなかった。
「それはね。けれど」
「けれどか」
「貴様の勝利は揺るがないというのだな」
「そうよ」
 また己の声に笑みを含ませたのであった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧