髑髏天使
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第二十六話 座天その十一
「未久ちゃんさえよかったら」
「あっ、ウェイトレスですか」
「そうよ。どう?」
そしてまた誘いの言葉をかける。
「それは」
「いいですね」
未久も今の若奈の誘いに笑顔で乗った。
「若奈さんもマスターも知ってますし」
「そうよ。それに」
言いながら今度は牧村を見て。そうして言うのだった。
「その頃には未久ちゃん私の妹になっているかも知れないし」
「ふふふ、そうですよね」
そして未久も若奈の今の言葉にも乗った。
「若奈さんがお義姉さんですか」
「どうかしら、それで」
「全然オッケーですよ」
微妙におかしな言葉だった。
「私は」
「小姑さんの賛成も得たし。これからは前途洋々ね」
「よかったね、お兄ちゃん」
「俺は何も賛成もしていないが」
牧村は二人の話にこう返した。
「何の話をしている、しかも」
「別に。気にしなくていいから」
「牧村君も頑張ってね」
未久も若奈もその顔を明るい笑顔にさせていた。そのうえでの言葉だった。
「それじゃあ紅茶御願いします」
「はい、わかったわ」
二人の仲はよかった。しかもそれはさらに進展していく。牧村をよそにしてそのうえで進んでいくのだった。
牧村は次の日朝のトレーニングを終えて学校に向かおうとしていた。その彼の横にまた死神のハーレーがやって来たのであった。
「わかるな」
「貴様がここに来たということがか」
「そうだ。何故かわかるな」
こう彼に対して言ってくる。顔は正面を向いていてヘルメットの中にその顔を隠している。
「私が来たということはだ」
「今度の場所は何処だ」
「このまま行く場所だ」
こう答えてきただけだった。
「ついて来るといい」
「断る選択肢はないということだな」
「貴様が髑髏天使である限りはだ」
またしても告げられる言葉だった。
「それはない」
「そうだな」
牧村の話を聞きながら述べた。
「俺が髑髏天使ならば魔物と」
「答えはそれしかない」
死神の今の言葉は何処までも冷たいものだった。その冷徹な言葉を出したうえでハーレーのスピードを速めてみせてきたのであった。
「来い」
「わかった。それではだ」
その言葉に従い死神の後について行く。そこは前に国道が橋となって通っている開けた大きな道だった。そこに案内されたのである。
周りには人がいない。いるのはまずは牧村と死神だけだった。
しかし牧村はそこに着いてだった。まずはこう言ったのだった。
「ここだな」
「そうだ、ここだ」
死神は静かに言葉を返してきた。
「間も無く来る頃だ」
「そうか。では待たせてもらおう」
サイドカーから降りてヘルメットを脱ぐ。そうして白い雲しかない空を見上げる。
天気は晴れず暗いものだった。その空を見ながら牧村はふと言った。
「この空の上には」
「どうした?」
「青い雲一つない空がある」
こう言うのである。
「何処までも青い空がな」
「あれっ、珍しいこと言うね」
ここで死神の側にあの目玉が出て来た。そうして牧村の今の言葉に対して言ってきたのだった。
「髑髏天使にしては」
「珍しいか」
「うん、そんなこと言わないって思ってたよ」
だからだというのであった。
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