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髑髏天使

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第二十四話 妖異その十八


 その両手に持っている剣で一気に振ってそのうえで斬った。一瞬だった。
 影と影が交差した。そうしてお互いに着地した時。魔物はその身体から青白い炎を出してそのうえで今まさに倒れようとしていた。
「見事だと言っておこう」
「見事か」
「負けた。こうしてな」
「それを認めるのだな」
「この炎が何よりの証拠だ」
 今己の全身に沸き起こるその炎を見据えての言葉であった。
「無念だがそれは認める」
「大人しくか」
「その通りだ。では死のう」
 死も受け入れていた。やはり平然としている。
「これでな」
「さらばだ」
「貴様を食いたかったものだがな」
「それでわかった」
「わかった?」
「そうだ。わかったのだ」
 それでわかったと。告げる髑髏天使であった。
「貴様の目は俺の喉笛を見ていたからだ」
「その通りだがそこからわかったのか」
「貴様が狙う場所がわかった。その赤い目の視線からな」
 何処を攻めてくるのかわかれば、ということだった。髑髏天使が言うのはそういうことだった。
「わかればどうということはない」
「それでか」
「これでわかったな」
「よくな。仇になったか」
 炎が全身を覆っていく。その中で自嘲めかして述べた言葉であった。
「俺の人の肉を好むこの習性が」
「そうなったな。では死ぬのだ」
「うむ」
 こう言葉を交えさせてであった。魔物は死んだ。髑髏天使はそれを見送るだけであった。
 死神とチョンチョニーの闘いも同じであった。やはり一瞬であった。
 着地した死神は己のバイクの上に立っている。そうして別の車の上に着地したその魔物を肩越しに見て問うてみせたのである。
「終わったな」
「まさか。わしがこうも簡単にとはな」
「まさに一瞬だった」
 死神は言った。
「貴様もまた私を食らうつもりだったか」
「わしは人を食う趣味はない」
 それは否定する魔物であった。彼はそうではないというのだ。
「ムングワとはまた違う」
「そうか」
「まさか首を一閃されるとはな」
 首筋に赤黒い血筋が生じている。そこを斬られたのは明らかであった。
「そしていい切れ味だ」
「私の大鎌に切れないものはない」
 死神は静かに述べてみせた。
「そう、命でも何でもな」
「そしてわしの命を刈ったのだな」
「そういうことになる。それではだ」
「うむ、さらばだ」
 この魔物は赤い炎に包まれた。これで終わりであった。
 闘いが終わり髑髏天使は牧村に戻った。死神は何処かにと去った。勝負はまさに一瞬でありそれを見た者は見間違いにしか思えないものであった。
 それが終わるとだった。牧村は家に帰って休んだ。そうしてであった。
 次の日学校に出た。そうして教室で講義の用意をしているその時だった。
 彼の周りに同じ科の仲間達が来て。声をかけてきたのだった。
「よお」
「何か暗いな」
「そうか」
 いつも通りの無愛想な様子で彼等に応える牧村だった。静かに己の鞄から教科書とノート、それに筆箱を出してそのうえで応えている。
「いつもと変わらないがな」
「まあそうかもな」
「いつも通り無愛想だな」
「だよな」
 彼の言葉を聞いて笑って返す仲間達だった。そうしてそのうえでまた話すのだった。 
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