髑髏天使
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第二十四話 妖異その十四
「俺は魔神で貴様は髑髏天使なのだからな」
「そうだ。俺は髑髏天使だ」
牧村はまた彼に言葉を返してみせた。
「しかしだ」
「しかし?何だ」
「俺は今は人間だ」
こう言うのである。
「今は人間だ」
「髑髏天使ではないというのか」
「そうだ。俺は牧村来期だ」
彼だというのである。今は髑髏天使ではないと。
「それは変身してからの話だ」
「そうか。では変身するのだな」
「そうさせてもらおう。ただしだ」
「魔物が出て来てからだな」
「連れて来ているな」
やはり魔神を見ようとしない。そのうえでの言葉であった。
「今もまた」
「いや」
そうではないというのだった。
「今はいない」
「いないというのか」
「そうだ。連れて来ていない」
こう言うのであった。
「今ここにはな」
「ではここには楽しみの為に来たのか」
「連れて来る必要はないからだ」
「ないというのか」
「そうだ。ない」
はっきりとした返答だった。そうして。
速度を速めてきたのである。いきなりだった。
「どういうつもりだ?」
「来るのだ」
それは誘いだった。彼に対する。
「俺の後にな。横でもいい」
「では横にいさせてもらおう」
そうするというのだった。横だと。
「貴様のな」
「いいことだ。負けないつもりか」
「貴様が俺と闘うならばだ」
顔を見ないのは同じだ。そのうえでの言葉なのは変わらない。
「そうさせてもらう」
「俺ではなく魔物であってもだな」
「その通りだ。早く魔物の場所に案内することだ」
彼等の左右は車が次々に見える。しかし二人はその車達をそれぞれその速度と絶妙なカーリングによってかわしそのうえで話をしているのだった。
「早くな」
「焦ることはない。速度を速めたはだ」
しかしここで魔神が言った。
「貴様を案内する為ではない。場所に急ぐ為にな」
「では何の為だ?」
「貴様の心を見る為だ」
「俺のか」
「その通りだ。闘う気に満ちている」
自身の横に位置しようとした彼を見ての言葉である。言いながら二人は左右に別れて前のトラックをかわす。神一重でかわしてみせたのだった。
「ならばあの者を出そう」
「出すというのか」
「そうだ。出るのだ」
「はい」
彼の言葉を受けてだった。その魔物が姿を現わしたのであった。
豹の頭に魔神と同じスーツを来たバイクに乗る男。その魔物が出て来たのである。
「逆さ男様、ここに」
「ムングワという」
黒人が牧村に告げてきた。
「この者の名はな」
「ムングワか」
「かつては人を食らっていた」
このことも語ってみせたのだった。
「しかし今はだ」
「そうではないというのか」
「別に人を食わずとも生きてはいけるのだ」
それができるというのである。
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