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髑髏天使

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第二十四話 妖異その三


「モデル的っていうか」
「そうよ。若い時っていうか子供の頃から牛乳必死に飲んでテニスもして」
「それでスタイルとか作ったの」
「あんたもスポーツしてるのに」
「体操部だけれどね」
「それが駄目なのよ」
 今度は駄目出しであった。
「体操はね。背が伸びないのよ」
「そうなの」
「そうよ。だから止めたのに」
 困った顔で娘に話すのだった。
「全く」
「別にいいじゃない」
 しかし当の未久は一向に気にしていない顔であった。声も同じである。
「それは」
「いいっていうの?」
「そうよ。だから」
 そしてまた母に対して言うのだった。
「別にそれでもてないとか人気ないってわけじゃないし」
「背も低くて胸もないのに」
「お母さんそこにこだわり過ぎよ」
「お母さんが若い頃はそうだったのよ」
「じゃああれ?金髪で胸の大きい人が人気だったの?」
 未久は言った。所謂ブロンド趣味である。この嗜好はかつてはかなりのものだった。当然今もあるが昔は今以上だったのである。
「やっぱり」
「そうよ。それこそね。アグネス=ラムとかね」
「あの人は白人じゃないけれど」
「それでも人気だったのよ」
 こう娘に言い続ける。
「榊原郁恵とか。他には宮崎美子とか河合奈保子とか」
「古くない?」
「そうかしら」
 実はこれには自覚がない母だった。
「そんなに古いかしら」
「古いわよ。私が生まれる前じゃない」
「じゃあかとうれいこは」
「名前だけは知ってるけれど」
 未久の目がしかめられてきていた。
「けれどね。実際にどれだけ凄かったかは知らないし」
「そうだったの」
「最近あれよ。グラビアだって胸が大きい人だけじゃないからだ」
 これはその通りであった。
「胸が小さい人だって普通に大人気だし」
「世の中変わったのね」
「っていうかお母さんがこだわり過ぎなんじゃないの?」
 身も蓋もない言葉であった。
「お母さんがね。どうなのよ」
「そうかしら」
「そうよ。確かに私もダイエットには気をつけてるけれど」
「深田恭子ちゃんみたいになったらちょっとあれよ」
「フカキョンも胸は大きいけれどね」
 これは本当のことである。深田恭子は胸は大きい。ホリプロのタレントは胸が大きい女の子が多いのが特色である。ただし一説にはただ太めが多いだけだと揶揄する者もいる。
「ああいうのは駄目なの」
「ちょっと。太り過ぎじゃない?」
 母もこのことを指摘するのだった。
「あの娘はね」
「まあ確かにね」
 そしてそれは未久も否定しなかった。できなかったと言ってもいい。
「けれど私はしっかり運動もしてるし」
「背が伸びる運動したらよかったのに」
「まあまあ」
 この辺りはもう笑って済ませるしかなかった。
「それはいいじゃない」
「全く。それでもてるのだからね」
「彼氏はまだいないけれどね」
「おかしな人に誘われたら駄目よ」
 このことはしっかりと咎める。ようやく母親らしい言葉に戻れたのだった。
「わかってるわね。それは」
「わかってるわよ。襲い掛かって来てもなのね」
「スタンガン渡してるし」
 実に用意のいい話であった。
「それにお兄ちゃんもいるし」
「いつも送り迎えしてもらってるしね」
 にこりと笑って向かい側に座って黙々と食べている兄を見るのだった。 
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