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髑髏天使

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第二十三話 異形その十八


「俺もだ。だからこそだ」
「また来るか」
「これで決める」
 言いながら力を溜めていた。そうしてであった。
 今度は横に激しく回転しながら突き進んで来る。これまでよりも速かった。
 そうしてそのうえで、であった。髑髏天使に突き進んで来る。それは彼とてもかわしきれるものではなかった。
 髑髏天使もそれはわかっていた。そしてそのうえでどうするべきかと考えていた。その彼が出した答えは。魔物にとっては思いも寄らないものであった。
「これだな」
「さて、どうするのだ?」
 魔物は突き進みながら髑髏天使に問うてきた。
「この突進。かわせるか」
「かわしはしない」
 こう返す髑髏天使だった。
「俺はな」
「かわさないというのか」
「そうだ。かわさない」
 また言う彼であった。
「こうするだけだ」
「むっ!?」
「来るのだ」
 その言葉と共にであった。二人の闘いの場に下から何かが出て来た。それは黒と銀のカラーリングの重厚なものであった。
 それはサイドカーだった。牧村が普段から乗り髑髏天使も操っているものであった。それは下から魔物に突き進み。そして斜め後ろから体当たりを仕掛けて来たのであった。
「何っ!?」
 これで魔物は弾き飛ばされた。かわしはしなかった。髑髏天使はこうして魔物の攻撃を防いだのであった。
「こういうやり方もある」
「貴様の乗り物か」
「そうだ」
 彼は言うのだった。
「こういうやり方があるのだ」
「乗り物があるとは知らなかった」
 魔物は言った。
「それはな」
「そうか。知らなかったのか」
「成程。使えるものは何でも使うということか」
 今のサイドカーの体当たりからそれを察した魔物だった。弾き飛ばされそのうえで大きくバランスを崩したがそこから体勢を立て直していた。
「それもまた見事だ」
「卑怯だとは言わないのだな」
「己の武器は何でも使う」
 魔物は再び彼と向かい合いながら述べた。
「それが闘いだからな」
「だからいいのか」
「さらに気に入った」
 その巨大な顔が微笑んでいた。
「俺の相手をするに相応しい相手だ」
「そう考えるか」
 サイドカーは今は宙を舞っていた。下から飛んできたが今は主の周りを待っていた。
「その乗り物は貴様の意志で動くようだな」
「そうだ。動かすことができる」
 このことを魔物に語ってみせた。
「今の様にな」
「そうか。便利なものだな」
 彼はそれを見てまた言った。
「それは実にな」
「さて、それではだ」
 その相棒を周りに回しながらさらに言う髑髏天使だった。
「どうする?また突き進んで来るのか」
「その通りだ。さて、その乗り物のことはわかった」
 言いながら再び回転してきた。左から右に。また横であった。
「最早同じ手は受けない」
「体当たりをかわしてみせるか」
「そういうことだ。それではだ」
 その激しい回転の中での言葉であった。
「行くぞ」
「今度はサイドカーは使わない」
 見ればサイドカーは下に舞い降りていっていた。その言葉は真実であった。
「俺もな」
「同じ手は使わないということか」
「それもある」
 その言葉は事実だというのであった。 
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