髑髏天使
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第二十三話 異形その四
「こんなに早いってはじめてなんじゃないの?」
「そうじゃないかな」
皆で話す彼等であった。
「それも」
「そうだよね。僕五百年程生きているけれど」
「僕は七百年だけれどね」
「どの髑髏天使よりも早いよ」
こう牧村に対して話してきたのだった。
「普通主天使なんてそんなに早くなれないっていうか」
「最低二十年?もっとかかるかな」
「そこまでなれなかった天使の方が多いよ」
「だよね、やっぱり」
「俺は半年も経たないうちにそこまでなった」
牧村もまた言うのだった。自分の言葉でも。
「これは何故かと思うが」
「まず戦いの数が違うしのう」
博士はその要因としてまずその戦いの数を挙げたのだった。
「君は一週間に一回の割合で戦っておるな」
「ああ」
博士の今の言葉にこくりと頷いてみせたのだった。
「その通りだ」
「それはまた随分なペースなのじゃよ」
「妖怪達は本来はそこまで出ないそうだな」
「その通りじゃ。じゃから言ってしまえば髑髏天使の戦いも本来は遥かにのんびりとしたものなのじゃよ」
「のんびりか」
牧村は今の博士の言葉に対して微妙な顔になった。戦いという緊張に満ちた世界にそうした言葉は全く合わない異質なものと感じるしかなかったからである。
「そういうものだったのか」
「そうじゃ。もっとのう」
そうだと続ける博士であった。
「したものじゃが。今は丁度魔神達も出て来ておるしのう」
「戦いを経ればそれだけ強くなるのか」
「うむ、なるぞ」
博士の今度の言葉もまた断定であった。
「経験を積むことに他ならないからじゃよ」
「そうか。だからか」
「そういうことじゃ。それに加えて」
「それに加えて。今度は何だ」
「君自身の素養もあるようじゃな」
今度言及したのは彼自身についてであった。
「どうやらのう」
「俺自身のか」
「左様、君が戦いで何かを得る力がかなりあるようじゃ」
つまり吸収力ということである。戦いにおいてもそうした能力はかなりあるというのである。これもまた人それぞれということなのである。
「それでじゃ」
「だからこそ俺はここまで強くなっているのか」
「だと思うがのう。何はともあれ主天使じゃ」
「ああ」
博士の今の言葉に頷く牧村だった。頷きながら考える顔にもなっていた。
「戦いがまた変わってくると思うのじゃが」
「あっ、そうか。そうだよね」
「新しい力が手に入ったからね」
妖怪達も今の博士の言葉でこのことに気付いたのだった。
「やっぱりその力を使うから」
「そうなるよね」
「その使い方は君次第じゃよ」
「わかっている」
博士は戦うことに関しては全くの素人である。何一つ知りはしない。そればかりは牧村の専門であり彼はこのことでは博士と話すわけにはいかなかった。
「それはな」
「じゃがかなりトレーニングを積んでおるな」
「そのつもりだ」
このことは博士もよく大学で見ていたし知っていた。そして牧村自身もこのことを否定することなくはっきりと見せたのであった。
「さもなければ敵に遅れを取ってしまう」
「まあそれも君の強さの急激な上昇に関係しておるな」
「トレーニングもか」
「やはり強くなるからじゃよ。鍛えればのう」
だからだというのである。
「戦いばかりでなくてのう」
「そうか。だからか」
「そうじゃ。やはり君は強くなっておる」
またこの話になるのだった。
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