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髑髏天使

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第三話 日々その十


「髑髏天使だけだなんて」
「言ってみれば当然じゃないの?」
「まだ本当の強さを身に着けてはいない」
 それでも牧村は述べる。妖怪達の話をよそに。博士に対して語るのだった。
「まだな。どうすればいいか」
「髑髏天使は今何を使っておる?」
「何を?」
「うむ。また文献を調べていての」
 牧村の顔を見つつ文献のことを述べる。
「わかったのじゃ。髑髏天使は武器を自由に出して使える」
「それか」
「それかというともう使っておるのじゃな」
「剣だ」
 剣のことを博士に話した。
「今は剣を使っている。そしてその剣で敗れた」
「そうか。剣か」
「俺の剣の腕はまだ未熟らしい」
 暗い顔で博士に述べる。
「まだな。弱い奴は相手にしないとまで言われてな」
「髑髏天使って弱かったの?」
「そんなわけないと思うけれど」
 妖怪達は彼の言葉を聞いてまた言い合う。
「だってねえ。悪い魔物を倒すんだから」
「それでどうして弱いんだよ」
「強さは相対的なものじゃ」
「相対的!?」
「そうじゃ。相手が強いとな」
「うん」
 妖怪達は博士の言葉を聞きだした。今は静かに聞いている。先程までの騒がしさはすっかり音を顰めている。
「こっちがそれ程でないと弱いじゃろ」
「まあそうなるね」
「確かね」
「そういうことじゃよ」
 博士はここでまた妖怪達に対して話す。
「つまりじゃ。彼の強さはそのままで」
「強い奴に当たったってことだね」
「そうだったんだ」
「これでわかったな」
 あらためて妖怪達に述べる。
「今の彼が置かれた状況をな」
「うん、そう言われればね」
「そういうことだったんだ」
 ここまで言われてやっと納得するのであった。
「じゃあかなりまずいんじゃないの?」
「そんなに強い奴が出て来たら」
「何、まずくはないぞ」
 しかし博士は穏やかで涼しい顔を見せていた。
「こんなことは想定の範囲内じゃよ」
「想定の範囲内ねえ」
「人間の誰かが言っていた言葉だったっけ」
「まあそうじゃ。じゃが今はそれはどうでもいい」
 一旦話を元に戻す。
「とにかくじゃ。負けたのじゃな」
「ああ」
 牧村に問うと彼はすぐに答えた。やはり表情はない。
「強くなってから来いだ。まるで何処かの格闘家みたいなことを言う」
「そうか。そういう奴もおるからの」
「魔物でもか」
「魔物といっても様々じゃよ」
 博士はいぶかしむ牧村にこう説明した。
「実際のところはな」
「そうなのか」
「そうなのかって当たり前じゃよ」
 ここでは顔を崩して笑ってみせた。
「人間だって色々じゃろうが」
「まあな」
「そういうことじゃ。だから魔物もな」
「色々なのか」
「そういう強い奴と闘いたいというのもいれば残忍なのもおる」
 ここで残忍という言葉を出すのであった。
「まあ後者のイメージが強いだろうがな」
「それは否定しない」
 そして牧村もここでも無愛想だが率直に述べた。
「だから俺は奴等を倒すのだな」
「御主に倒されるのは悪い奴じゃからな」
 博士はこう定義付けをすることはする。髑髏天使は人や世界に害をなす異形の存在を倒す為に五十年に一度現われる存在だからだ。だからこう定義付けをしてその髑髏天使に変身する牧村に対して説明するのである。 
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