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髑髏天使

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第二十一話 人狼その十一


「これでな」
「では後程」
「成功したら祝ってやるぜ」
 ロッカーは口元だけで笑って魔物に述べた。
「失敗したらその時はな」
「はい」
「弔ってやる。だから安心して闘え」
「勿体ない御言葉。それでは」
「バジリスク、俺は先に帰るからな」
 ロッカーは青年に対しても告げた。彼の本来の名前で呼んだうえで。
「御前はどうするんだ?」
「俺もそうするとしよう」
 彼もこれで帰るというのだった。
「魔物を置いてな」
「そうか。じゃあそれまで待ってやるぜ」
 今度は目元まで笑わせたうえで彼に告げたのだった。
「御前が魔物を出すまでな」
「礼を言おう。それでは死神よ」
「出すがいい」
 死神もまだ闘う姿ではなかった。しかしそれでも鋭い声で彼に返すのだった。
「貴様の今回の魔物をな」
「そうさせてもらおう。では出るのだ」
「はい」
 彼の言葉に応えてその横に魔物が現われた。それは。
 蝿であった。巨大な蝿が姿を現わしたのであった。
「ナスか」
「その通りよ」
 その蝿から女の声が出て来た。
「私の名はナス。知っていたのね」
「古来より蝿を操ってきた魔物」
 死神は魔物に対してさらに言うのであった。
「今度私が魂を刈る相手は貴様か」
「あら、残念だけれどそれは違うわ」
 魔物の声は今の彼の言葉には笑って返すのだった。
「それはね」
「違うというのか」
「貴方は腐ってここで朽ちるのよ」
 返す言葉が笑ったものになっていた。
「この橋の上でね。私によってね」
「言うな。それだけの自信があるということか」
「ナスを侮ってもらっては困るな」
 青年がそのナスの横から死神に対して告げてきた。
「このナスの力をな」
「バジリスク様。それではここは」
「貴様なら大丈夫だ」
 ナスに対して絶対の信頼を見せる死神だった。
「死神を倒すこともな」
「有り難き御言葉。それでは」
「任せた。それではな」
「よお、終わったな」
 ここでロッカーが青年に声をかけてきたのであった。話が終わったと見て。
「じゃあ行くぜ。いいな」
「わかった。それではな」
「髑髏天使に死神よお」
 ロッカーは青年が自分の横に来たところで今度は二人に声をかけてみせた。
「まあ頑張るんだな。楽しみに観ておくからな」
「では観ているといい」
 死神が彼に対して言葉を返した。
「貴様の気の済むようにな」
「そうだな。そうさせてもらうぜ」
 言いながら姿は消そうとする。
「俺の場所でな」
「俺もそうさせてもらう」
 青年も彼と同じように姿を消す。こうして牧村と死神はそれぞれ魔物と対峙するのだった。
「それではだ」
 まずは死神が言葉を出してきた。
「私の相手は貴様だな」
「そうね」
 ナスはその蝿の巨大な顔で彼に応える。
「私が貴方を腐らせてあげるわ」
「生憎だが私は腐ることはない」
 死神は魔物のその言葉に対して平然と返してみせた。 
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