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髑髏天使

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第二十一話 人狼その三


「このスタイルでな」
「貴殿が気に入っているのならそれでいい。それでだ」
 紳士は今の彼のスタイルを認めたうえでさらに言ってきた。
「人狼よ」
「ああ」
「ここに来たということは知っていると思うが」
 こう彼に言ってきたのだった。
「わかっているな。この時代の髑髏天使はだ」
「かなりの強さらしいな」
 人狼と呼ばれたロッカーは実に楽しそうな微笑みを浮かべて彼に応えたのだった。
「歴代の髑髏天使の中でも屈指らしいな」
「その通りよ。もう力天使よ」
 女も言う。
「この前髑髏天使に目覚めたばかりだというのにね」
「この前というとあれか」
 ロッカーは彼の感覚で尋ねた。
「十年前か?それでもう力天使か」
「いや、五ヶ月程度だ」
 男がこう彼に答えた。
「五ヶ月でだ。力天使にまでなった」
「何っ!?」
 それを聞いた男の言葉が一瞬だが止まってしまった。表情も驚いたものになっていた。
「五ヶ月で力天使か」
「そうだ」
 また答える男であった。
「僅か五ヶ月でだ。そこまでなった」
「信じられないな。いや」
 ロッカーは最初その言葉に信じられないと返そうとしたがすぐに止めた。そしてその言葉とは別にこう言うのであった。
「あの時の髑髏天使と同じか」
「そうなるな」
 青年が今の彼の言葉に応えた。
「あの時の。俺達を封印した髑髏天使とな」
「そうだな。あの時以来の強さというわけか」
「既に多くの魔物達が倒された」
 紳士も言ってきた。
「既にな」
「じゃあ俺もやらせてもらう」
 ロッカーはここまで話を聞いて述べたのだった。
「既に魔物は連れて来ている」
「そうですか。既に」
「早速この時代の髑髏天使にその魔物を向ける」
 言葉は本気のものであった。
「すぐに行っていいな」
「ええ、どうぞ」
 老人はロッカーの今の言葉にもにこやかに返したのだった。
「貴方のお好きなように」
「そうか。ではそうさせてもらう」
 ロッカーはそれを聞いて頷いたのだった。
「今から行って来る」
「待て」
 だがここで青年も出て来たのであった。
「俺も行こう」
「御前もか」
「そうだ。俺も魔物を用意しておいた」
 こう言うのである。
「だからだ。行かせてもらおう」
「髑髏天使は俺の獲物だが」 
 ロッカーは引こうとはしなかった。
「それでも来るというのか」
「今敵は髑髏天使だけではないからな」
 だからいいという青年であった。
「もう一人いる。そちらでもいい」
「もう一人というと」
 これはロッカーにはすぐにわからないことであった。青年の言葉を聞いてもその表情を微妙なものにさせるだけであった。それだけしかできなかった。
「誰だ、それは」
「死神だよ」
 子供がいぶかしむロッカーに対して答えた。
「死神もいるんだ」
「死神。あいつもか」
 死神と聞くとそれでわかったロッカーであった。微妙なものになっていた表情が納得したものになる。それが何よりの証拠だった。 
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