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髑髏天使

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第二十話 人怪その十八


「貴方の鎌と同じよ」
「この葉で私を倒すつもりか」
「その通りよ。さあ逃げられるかしら」
 ここでも緑の刃の中で妖しく笑っていた。
「この私の刃から」
「逃げるつもりはない」
 既にその全身を切り刻まれだしている。しかし五人の死神達はその切られるのをそのままにしてまずは一人に戻った。それからまた言うのだった。
「決してな」
「そう。決してなのね」
「何故なら逃げる必要がないからだ」
「あら、自信かしら」
「私は自分をよくわかっている」
 彼はまた言った。
「よくな。では見るがいい」
 一人に戻りその顔も服も切り刻まれ続けながらそれでも出す言葉だった。
「私がこれから何をするのかをな」
 彼は窮地にありながらもまだ闘っていた。鎌を構えたまま。だがまだ前には出ようとはしていなかった。
 そしてその頃髑髏天使もまた。席が立ち並ぶその後ろでまだらミイラと闘っていた。魔物はその口からの触手を鞭の様に操りそれで髑髏天使を撃とうとしていた。
 触手が前から突き出されてきた。髑髏天使はその触手を左手に持っているサーベルで払った。それで一旦防ぎ翼を使って上に飛んだ。
 だがそこでまた触手が来た。下から上に襲い掛かる。それは翼で舞いさらに上にあがることでかわした。そして彼はただ上にあがっただけではなかった。
 そこから急降下を仕掛ける。両手の剣を構えほぼ直角に降りる。そこにまた触手が来るが今度は斬った。しかし触手はその側からまた伸びるのだった。
「何っ!?」
「例え斬ろうともだ」
 まだらミイラはその触手をまた動かしながら髑髏天使に告げる。
「何度でも伸びてくるのだ」
「回復力が半端ではないということか」
 髑髏天使はこう見て取った。
「そういうことだな」
「難しい言い方をすればな」
 そして魔物の方もそれを認めた。
「その通りだ」
「そうか。わかった」
 髑髏天使は魔物の言葉を受けてそれを完全に己の中にインプットさせた。その思考が自分ではいささか機械めいたものに思ったのも事実だ。
 だがそれは顔には出さず。彼は間合いを取ったうえで着地しまた魔物に告げた。
「貴様のことはな」
「私を倒すことは容易ではない」
 魔物は今度は誇らしげに言ってみせてきたのだった。
「さて、どうするか」
「風も効かないか」
 髑髏天使は今の瞬時に回復したまだらミイラの触手からそれも判断したのだった。
「斬ることはな」
「だとすればどうする?」
「一つ言っておく」
 髑髏天使は冷静さを崩していなかった。その冷静な様子で身体の色を変えてきた。
「むっ!?」
「俺の持っている力はもう一つではない」
 赤くなった。権天使の力を出してきたのだった。
「こうした力も持っていることは知っているな」
「権天使だな」
 まだらミイラはその赤くなった髑髏天使を見て言った。
「その赤い姿は」
「知っているのだな」
 髑髏天使は魔物が答えてきたのを見てすぐにそれと察した。
「この力のことを」
「知らない筈がない」
 魔物はこのこともまた隠さなかった。
「髑髏天使、貴様のことは既によく調べている」
「そういうことか」
「貴様の炎、見せてみるがいい」
 そしてそのうえで彼を挑発する言葉を出してみせさえもするのだった。
「その炎をな」
「望みとあらばだ」
 右手に持っている剣に炎を宿らせた。それによりただの剣が紅蓮の柱になった。そうしてその剣を今大きく上に掲げるのだった。 
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