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髑髏天使

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第二十話 人怪その十四


「俺は闘うのだな。今度は」
「私もだな」
 死神も彼に続く。
「面白い場所での闘いだな」
「私の演出は気に入ってもらえたようだな」
「今のところはな」
 あえて限定した牧村だった。
「しかしそれをはっきり言えるのは全てが終わってからだ」
「そのうえで判断するというのだな」
「そういうことだ。では中に入らせてもらおう」
「いや、案内は最後までさせてもらう」
 紳士は教会に向かおうとした牧村をこう言って制止した。
「この中までな」
「ではその言葉受けよう」
 こうして牧村達は紳士に教会の中まで案内された。教会は外からは何の変哲もない、妖気も全く感じられなかった。至って普通の教会であった。
 その教会の外観を見て死神は。一言漏らした。
「外からではわからないか」
「中に入ってこそということだな」
「そうだな」
 牧村の言葉に対しても頷いてみせるのだった。
「全てはわかりはしないな。さもないとな」
「そういうことか。それではだ」
「扉が開いた」
 紳士が開いたのだった。彼がその樫の木の重厚な褐色の扉に手を触れるとそれだけで中に開いた。中は外の光との対比のせいか暗い。かろうじて入り口だけが見える状況だった。
「では入るとしよう」
「是非共な」
 ここでまた紳士が彼等に方を振り向いて声をかけてきた。
「既に私の僕達は待ちあぐねているからな」
「宴のもう一方の相手がか」
「待っているというのだな」
「もう待てないようだ」
 紳士の声だけが微かに笑ったように聞こえた。
「どうやらな」
「それならそれで好都合だ」
 死神は紳士のその言葉を聞いて落ち着いた調子で述べた。
「こちらとしても仕事は早いうちに終わらせたい」
「仕事か」
「宴だったか」
 先に紳士が表現してみせた言葉をあえて出してみせもする。
「これは」
「そうだ。宴だ」
 紳士もまた彼に対して言葉を返してみせた。
「これはな。あくまで宴だ」
「では言葉を変えよう。宴ならばだ」
 死神は紳士に合わせてこう言ってみせるのだった。
「早いうちに幕を開けるべきだ」
「はじまる前の序曲は楽しまないのか」
「序曲はもう終わろうとしている」
 それについてはこう返す死神だった。
「ならばだ」
「そうか。それでは私も言わない」
 紳士もまたそれでよしとしたのだった。死神のその考えを。
「では」
「うむ。入ろう」
 まずは死神からだった。
「その宴の中にな」
「俺もそうさせてもらう」
 続いて牧村だった。まだ牧村としての姿のままだ。しかしその心は既に戦いに向かっており髑髏天使のものになろうとしているのだった。
「宴の客としてな」
「では私はホストをさせてもらう」
 紳士は己はそれだというのだった。
「この宴のな」
「見ているだけか」
「そう捉えてもらっても構わない」
 自身に顔を向けて問うてきた牧村に対しても穏やかに返すだけだった。
「これが私の今の立場だとな」
「よし。ならば立会人を務めてもらおう」
 牧村はホストを立会人と言い換えてみせた。それだというのだ。 
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