| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

髑髏天使

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十九話 人狼その九


「私はガラスの仮面とか川原泉先生の漫画が大好きですよ」
「あとパタリロもか」
「あれっ、何でわかったんですか?」
「花とゆめだからな」
 だからだと答える牧村だった。
「ガラスの仮面に川原泉先生といえばな」
「そうですよ。花とゆめです」
 ろく子もにこりと笑ってそれを認めてきた。
「私あれが好きなんですよね」
「私はりぼん」
「わしはなかよしじゃ」
 雪女と砂かけ婆も言ってきた。
「それが好きなんだけれどね」
「驚いたかのう」
「驚いたのは事実だ」
 牧村もそれを認めてきた。
「まさかな。漫画も熱心に読んでいるとはな」
「別冊フレンドやちゃおも好きですよ」
 またここでろく子が彼に言ってきたのだった。
「これでも漫画好きですから」
「妖怪も漫画を読むか」
「それがやっとわかってくれたみたいだね」
「何より何より」
 妖怪達は牧村のその言葉を聞いて述べたのだった。
「しかし。納得できないものはまだあるがな」
「そんなの慣れたら終わりだから」
「気にしない気にしない」
 いつもの調子で牧村にかけた言葉だった。
「全然ね。問題ないから」
「さて、そろそろかな」
 妖怪達は林檎や葡萄のジュースを飲んでいた。そうしてそのうえで言い合うのだった。
「博士が戻って来るのって」
「そうだね。そろそろだね」
「じゃあもうすぐだからね」
 そして牧村にも声をかけるのだった。
「楽しみに待っていてよ」
「漫画をね」
「漫画はいいが」
 それについてはどうでもいい牧村だった。
「俺はな」
「けれど漫画読むよね、牧村さんも」
「さっき僕達が出したタイトル全部知ってたし」
「漫画は好きだ」
 牧村もそれは言う。
「読むのも買うのもな」
「まあ嫌いな人はあまりいないよね」
「実際にね。妖怪もね」
 彼等は話すのだった。
「嫌いなのはいないよね」
「本とか全く読まない人は例外としてね」
 それは例外だというのだった。中にはそんな人間もいる。しかしであった。牧村はそうした人間ではなく彼はやはり漫画を読むのだった。
「僕達だってね。読むしね」
「あればあるだけね」
「漫画は読んで減るものではない」
 牧村はまた言った。
「だからだ。好きなだけ読めばいい」
「そうそう。博士だって言ってるしね」
「あっ、帰って来たよ」
 ここで、であった。その博士が戻って来た。見ればにこにことしてその手に漫画雑誌を数冊抱えている。如何にも今から読もうという顔であった。
 しかし牧村の姿を認めて。また別の笑顔になって彼に言ってきたのだった。
「ほう、来ておったのか」
「少し待たせてもらっていた」
 牧村はその博士の顔を向けて述べた。姿勢はいつものように壁に背中を当ててそのうえで立って彼に顔を向けている姿勢であった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧