髑髏天使
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第十九話 人狼その一
髑髏天使
第十九話 人狼
「また階級をあげたのね」
「そうなんだ」
暗い、何もない海の底だった。時折そこに通り掛る異形の魚達が見える。それは深海魚だった。
「またね」
「早いな」
青年はそれを聞いて一言述べた。
「こんなに早い昇進ははじめてだ」
「そうね。ここまで早いのはね」
青年のその言葉に女も頷く。
「はじめてだわ」
「かつて多くの髑髏天使がいたが」
紳士も言う。
「ここまで早いのは確かにないな」
「僅か数ヶ月でもう力天使だ」
男もここで言葉を出した。
「このままでいけばだ」
「全ての階級に至るのも時間の問題ですね」
最後に老人が言葉を出した。そうしてそのうえで海の中に立っている。だが海の中にいるとしてもそこにいるのは陸にいる時と変わらない。
「一年以内ですか」
「普通はさ、あれだよね」
また子供が言ってきた。
「大天使になるのでも早くて一年だったよね」
「そうね。封印される前のことは覚えてるけれど」
女がそれに応えて言ってきたのだった。
「それ位ね。確か」
「我等が封印されてから後のことも調べた」
今言ったのは男だった。
「しかしだ。その天使達もまた」
「遅かったのだな」
「そうだ。あそこまで早い者は到底いなかった」
「あまりにも早い。我等を封印したあの髑髏天使以上に」
紳士も語る。
「何処までもな。早過ぎる」
「私達と戦うのも時間の問題でしょうか」
老人が今度出した言葉はこれだった。
「このままですと」
「わからないわね。しかもよ」
「しかも?」
老人だけでなく他の魔神達も女の今の言葉に顔を向けた。
「何か色が変わってきているわ」
「色が変わってきた!?」
「どういうことだ、それは」
男と青年が今の彼女の言葉に顔を向けて問うた。
「色が変わってきたとは」
「何かあるのか?今の髑髏天使に」
「まだはっきりとはわからないけれど」
こう前置きする女だった。
「それでもね。何か変わってきているわ」
「人間じゃないとでもいうのかな」
子供はふと考えてからこう問うた。
「ひょっとして」
「そういえばだ」
今度は紳士が口を開いてきた。
「あの髑髏天使は」
「最初に会ってみてどうだったかしら」
「普通の人間のものとは少し違っていたな」
女に返す言葉はこれだった。
「微妙にだがな」
「貴方はそう感じたのね」
「そうだな。はっきりとしたものではないがな」
それは彼も同じだった。やはりはっきりとは感じてはいなかったのだ。
「あれはな。人のものとはまた違う」
「人間じゃなかったら何なの?」
子供もそれがわからないのだった。いぶかしむ声になっていた。
「人間は人間じゃない。そうでなくなったら何なのさ」
「私達と同じでしょうか」
老人が言ったのは自分達のことだった。
「それでは。人間でないというのなら」
「そうだな。そうなる可能性もある」
男もそれに応えて述べてきた。
「人から魔物になった存在も多いしな」
「そういえば。一つ空いていたな」
青年が言ったのはこれまで話に出たことのないものだった。
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