髑髏天使
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第十七話 棺桶その二十一
「こうした時の為にな」
「何と忌々しい奴だ」
「忌々しいがそうでなかろうがだ」
死神の返す言葉は魔物とは逆に傲然としたものになっていた。
「勝てばいいのだ。違うか?」
「その通りだ。しかも堂々とか」
「私は策は弄しない」
それはしないと言うのである。
「しかしだ。カードは切る」
「それが今というわけか」
「その通りだ。では行くぞ」
一人だけではなかった。全ての死神が動く。まるで流れるようにそれぞれ左右に動きそうしてそのうえでマンティコアを完全に囲んでしまった。
「その魂、刈ってやる」
言いながら一気に間合いを詰めそのうえで鎌を一斉に一閃させた。
それは最早マンティコアとて避けられるものではなかった。彼はその鎌を全て受けてしまった。全身から血を流し動きを止めてしまった。
「おのれ・・・・・・俺がここで倒されるか」
「貴様の魂は今から冥府に行く」
攻撃を終えた死神はすぐに一人に戻っていく。何人かいたのが次第に影の様に横に動いていき一人になっていく。そのうえで魔物に告げていた。
「これでな」
「死神の鎌に斬られた者は冥府に送られる」
魔物はまだ生きていた。しかし声は既に途切れ途切れになっていた。その途切れ途切れに出される声で最後に語っているのである。
「無念だ」
「それ以上何かを貪りたければ冥府で貪るのだな」
死神は徐々にその身体を紅蓮の炎に包んでいく魔物に対してまた告げた。
「好きなだけな」
「ではそうさせてもらう」
彼はその言葉に頷いた。そうしてそのうえで紅蓮の炎の中に消えていく。彼等の闘いは死神の勝利で幕をおろしたのだった。
そしてそのうえで右手を見る。そこではまだ髑髏天使とストーンカが闘っていた。しかし彼はここでは動こうとはしないのであった。
「見せてもらうぞ。貴様の闘いを」
髑髏天使の闘いぶりを見るだけだった。決して動かずそのうえで見るのだった。
ストーンカと髑髏天使の闘いは続いていた。しかし髑髏天使は魔物の次から次に来る突撃をかわしはしていたが疲れが次第に出てきていた。空を舞ってもそこにも突撃が来る。魔物は跳躍力もかなりのもので空中戦まで行っていたのだ。
「空まで来ることができるのか」
「私の脚を甘く見ないことだ」
一旦空への突撃を敢行しそのうえで着地し上に位置する髑髏天使に対して告げていた。
「例え貴様が空にいようともどうということはない」
「攻撃は可能か」
「私は空を飛ぶ鷲さえも貫くことができる」
その言葉が出された瞬間に彼の二本の角が黒光りする。
「貴様とてな」
「そうか。ならば空は止めだ」
髑髏天使は彼の言葉を受けて翼をゆっくりと羽ばたかせてそのうえで着地した。そうしてそのうえで再び地上にて彼と対峙するのだった。
「この地上でケリをつける」
「だが貴様は私に勝てるのか?」
ストーンカはまた突撃の姿勢を店ながら彼に問うてきた。
「そろそろ体力が限界ではないのか?既に」
「だとしたらどうだというのだ?」
「私の勝ちだ」
魔物の声はもう勝利を見ているものだった。
「間も無くな。今度で決めてやろう」
「くっ・・・・・・」
最早動きのキレは落ちていた。これまでの様な動きはできない。ならばそれだけで彼の運命は決まる。何故なら今までですら紙一重でかわしていたからだ。
そうしてこちらからの攻撃は効かない。最早手詰まりと言ってもいい状況であった。しかしだった。彼はここでふと思いついたのだった。
「どの様な魔物でもだ」
ストーンカを見つつ述べる。
「その身体で弱点はある。そして」
続いて思いついたことは。
「風は切るだけではない」
このことだった。
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