髑髏天使
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第十七話 棺桶その一
髑髏天使 第十七話
棺桶
青年も加わり五人となった。彼等はそのうえでまたそれぞれ集い話をしていた。
「これでまた賑やかになったね」
「そうですね」
今彼等は水族館の中にいた。薄暗く水槽が並ぶ中をそれぞれ歩きながら話をしている。その黒い壁の中に埋め込まれている水槽の中には様々な魚達がいる。
見ればどれも非常に変わった形の魚ばかりだ。タツノオトシゴもいればマツカサウオもいる。それにミノカサゴもいる。海の変わった形の魚達であった。
子供はその中のあるものを見ていた。それは蛸だが普通の蛸ではなかった。赤くなくそのかわりに青と黄の柄であり変わっているというよりは毒々しい、そんな色の蛸を見ているのだった。
「何、これ」
「ヒョウモンダコですよ」
老人が穏やかな笑みと共にその蛸がいる水槽を見上げて問う子供に対して述べた。
「非常に珍しい蛸なのですよ」
「そうなんだ」
「はい。毒もありますし」
「毒!?」
子供は毒と聞いて思わず声をあげてしまった。
「蛸に毒があるの?」
「おかしいと思われますか?」
「だって蛸じゃない」
彼はそこを言うのだった。言わずにはいられなかった。
「蛸に毒なんてあるの?」
「普通の蛸にはありません」
老人はそのヒョウモンダコを見ながら話していく。蛸はその水槽の中で動くことはしない。壺の中でじっとしているだけである。それを見るとやはり蛸である。
「毒といったものは」
「この蛸だけなんだ」
「そういうことです」
また語る老人だった。
「ですから非常に変わった蛸なのです」
「そもそも毒のある蛸なんてはじめて見たよ」
「私も見るのははじめてです」
老人にしろそうなのだった。
「この水族館においてはじめてです」
「うん。けれどこの蛸って」
「何でしょうか」
「奇麗だね」
その毒々しい青と黄を見ながらの再度の言葉であった。
「何か宝石みたいだし」
「奇麗なものには毒があるのよ」
今度は女が言ってきた。彼女もそのヒョウモンダコを見ている。
「花にも何にもね」
「そうなんだ。蛙と同じだね」
「蛙!?」
蛙と聞いた男が声をあげた。彼は蛸は見ていないがそれでも仲間達の側にいるのだった。
「蛙だと?」
「そうだよ。中南米には蛙がいるけれど」
子供はここでこんなことも言ってきた。
「物凄く奇麗なんだよ」
「これだな」
ここで青年が丁度自分の前にある水槽を見て話してきた。彼はそこにいる蛙達を見ていた。見ればその蛙達はどれも赤や緑や黒といった柄でありやはり毒々しい色をしていた。
「この蛙達だな」
「そうだよ。その蛙達」
彼も話すのだった。
「それなんだよ。どう?」
「話を聞けば如何にも毒のある感じだな」
青年はそれを聞いてまた蛙を見つつ述べた。
「その蛸と同じでな」
「全くだ。そうとしか見えない」
男も言う。
「この柄はな」
「所謂警戒色ってやつ?」
子供は今度はその蛙達を見つつ話すのだった。
「こういう色ってやっぱり」
「毒があるぞってわざわざ教えてくれるのね」
女も言った。
「親切って言えば親切ね」
「ですから人間はこういった生き物には近寄りません」
老人もまた言う。
「他の動物達もです」
「そうだね。それがいいよ」
子供は彼の言葉を聞いて頷いた。
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