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髑髏天使

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第十六話 青年その十四


「これでな。俺の勝利だ」
「どうやら。先程の言葉は訂正されなくてはならないようだな」
 グールは断末魔の呻きの中で最後に言うのだった。
「貴様の強さは真実の強さだ」
「真実だというのか。俺の強さが」
「そうだ。貴様は間違いなく強い」
 また告げた。
「買いかぶりなどではなかった。確かに強い」
「事実を事実と認めるのだな」
「そういうことだな。では俺はだ」
 ここまで言ったのが最後だった。そうしてそのうえで今全身から青白い炎を出していった。そのままその中に消えていく。これがグールの最後であった。
 魔物の形に燃え上がる炎はやがて消える。髑髏天使はそれを最後まで見届けると今度は青年に対して顔を向けてそのうえで言ってきた。
「貴様の配下は今倒した」
「見事な闘いだった」
 青年は彼の言葉を受けてまずはこう言った。
「見事なな。グール、見せてもらった」
「では次は貴様か」
「それはまだ先のことだ」
 しかし彼はそれは受けようとはしなかった。
「まだな。貴様はそこまでの強さではない」
「先に言った通りか」
「そうだ。それはまだ先だ」
 また言うのだった。
「まだな」
「では今は」
「去らせてもらう」 
 こう言うだけであった。
「またな。帰らせてもらおう」
「そうか。では今日はこれで終わりか」
「そういうことだ。では髑髏天使よ」
 別れの言葉を告げるのだった。
「また会おう」
 最後にこう話して姿を消すのであった。残ったのは髑髏天使だけであったが彼もまた牧村の姿に戻った。そうして一人家に戻るのだった。
 家に戻ると。妹の若奈が彼を出迎え笑顔で声をかけてきた。
「おかえり、お兄ちゃん」
「ああ」
 笑顔の妹にいつも通りの無愛想で返す。
「もう帰ってたのか」
「そうだよ。それでね」
「何だ?」
「今日塾なんだけれど」
 こう笑顔で話すのだった。
「だからね。いいかな」
「送って欲しいんだな」
「うん」
 やはりこれであった。
「駄目かな。今日は」
「いや、いい」
 彼は妹のその願い出を断らなかった。
「じゃあ今から行くか」
「あっ、時間ちょっとあるから」
 しかし若奈は兄にこう言うのだった。
「時間あるから。ちょっと待って」
「待って。そういえば」
 ここで彼は妹の服を見る。見ればまだ中学校の制服のままであった。黒地に赤いタイのセーラー服であった。オーソドックスなセーラーであると言える。
「御前まだ服は」
「うん。着替えてくるから」
 妹の方でも兄に言ってきた。
「ちょっと待ってね」
「わかった。じゃあ台所にいるからな」
「そこでアイスクリームでも食べていて」
「アイスがあるのか」
「お母さんが買って来てくれてるよ。ハーゲンダッツ」
 それだというのである。 
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