髑髏天使
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第十六話 青年その十一
「だからだ。こうした動きもできるのだ」
「痛みを感じないというのか」
「その通りだ。俺は痛みを感じない」
自分からも言うのだった。
「全くな。感じることはない」
「だからこそそうした動きができるのか」
「そしてそれだけではない」
右腕を上から下に振り下ろしてきた。しかもここで肩と肘の関節を伸ばしそのうえで彼を絡め取ってきたのだった。まるで触手の様にだ。
「くっ、今度は腕がか」
「腕もそうだ」
また言ってくるのだった。
「このようにして。痛みを感じないからこそだ」
「間接を外すこともできるのか」
「その通りだ。屍のことをわかっていなかったな」
「少なくとも闘うことははじめてだ」
彼もそれは認めた。
「しかしだ。はじめてだからといってだ」
「既に捉えられていてどうするつもりだ?」
「捉えられていてばそこから逃れるだけだ」
髑髏天使の言葉は何でもないといった様子であった。
「それだけだ。こうしてな」
「むっ!?」
彼を捉えるその右腕を斬るのだった。自由になっていたその右腕の剣でだ。
グールの右腕を断ち切る。そのうえで絡め取っていたその剣をその右手で掴んで引き剥がす。しかし魔物の右腕はそれで死んではいなかった。
力づくで引き剥がしたので腕はばらばらに引き千切られていた。しかしその腕がそれぞれで地の上で蠢きだしたのだった。
「引き剥がした腕が」
「俺を甘く見ては困る」
不敵な声でまた言うグールだった。
「俺は傷が回復するのだ」
「だからこそ腕もか」
「そういうことだ。このようにな」
やがて魔物の右腕はそのまま合わさり元の姿に戻った。そうして自然に動きそのうえで彼のところに来て斬られた部分で合わさり元に戻ったのだった。
「どうだ」
「見事ではあるな」
髑髏天使も今の姿には素直に賞賛の言葉を述べた。
「しかしだ」
「何だ」
「回復するというのならだ」
彼の自信はここでも変わらなかった。
「それ以上のダメージを与えるだけだ」
「回復以上のか」
「単純な足し算だ」
言いながらその両手の剣を構えてきた。右手の剣を前に出して。
「そうだな。それだけだ」
「確かにその通りだ」
グール自身もそれは認めた。回復以上のダメージを受ければ倒れるということに。
「しかしだ。貴様にそれができるか」
「俺にできないというのか」
「そうだ。俺は今までこれで倒れたことはない」
やはり彼にも自信があるのであった。彼なりに強固な。
「その俺をだ。倒せるのか」
「確かに今までの奴は倒せなかったのだろう」
髑髏天使は構えを取ったまま彼に告げ続ける。
「しかしだ。俺は違う。俺は髑髏天使だ」
「髑髏天使だから違うというのだな?」
「その通りだ。髑髏天使は魔物を倒す存在」
このことをこの闘いでも言うのだった。
「だからだ。貴様を倒す」
「ならばやってみるがいい」
グールの自信は彼の今の言葉を聞いても変わらなかった。
「俺を倒せるのならな。ただだ」
「ただ。何だ?」
「もう一つ言っておこう」
ここでも余裕に満ちた言葉だった。
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