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髑髏天使

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第十四話 能天その二


「あそこからだったの」
「そこで己を鍛える為にはじまった」
 牧村はその歴史を語っていく。
「闘いに勝つ為にな」
「そういうことだったの」
「今でも軍隊では同じだ」
 次に現代の軍について話す。
「そういった意味ではな」
「シビアなのね」
「スポーツのはじまりを考えるとな。そうなる」
「それはわかったわ。けれど」
「けれど。何だ?」
「何で牧村君がそれをするの?」
 かなり率直に己の中で生じた疑念を述べた若奈であった。
「そんなに生き死にが関わってるようなふうにするの?それがわからないのだけれど」
「少しな」
 この問いには積極的に答えようとはしなかった。
「やることがあってな」
「やることって?」
「闘って勝つ」
 彼は短い声で言った。
「だからだ」
「だからなの」
「そうだ。だから俺はこうして鍛える」
 こうも言った。
「今も。これからもだ」
「それでフェシングやテニスをしているのね」
「それぞれ活きるものだ」
「闘いにってこと?」
「鍛えることにだ」
 髑髏天使であることはここでも隠しはしていた。
「それにな」
「ただスポーツを楽しむだけじゃないの」
 それだけではないのは彼女にももうわかることであった。それをあえて話した。
「っていうか楽しんでいないの?」
「これはこれで楽しんでいる」
 それは確かであった。彼にしてもだ。
「汗をかくのはいい」
「それはそうね」
 若奈にしろただ彼の側にいるだけではない。共に汗をかいている。だからその気持ちよさは知っているのだ。だからこそ頷くことができた。
「そういうのも楽しんでいるのね」
「そうだ。さて、休憩の後はだ」
「どうするの?」
「ランニングはもうやったしな」
「それはいつも最初にしてるわよね」
「ああ」
 ポカリスエットを飲み終えたうえで若奈に答えた。
「まず走ってからだ。まずはな」
「走ると身体の動きが全然違うからね」
「その通りだ。次はテニスか」
「そっちに行くのね」
「それでいいか?」
 自分の考えを述べたうえで若奈に顔を向けて問うた。
「テニスに向かうということでな」
「試合の練習ね」
「それをしたい」
「相手の人がいないかも知れないけれど」
「それならそれでいい」
 返事はドライであった。
「それでな。マシーンか壁を相手にする」
「それでもするのね」
「少しでも何かがあればしておく」
 また静かに述べたのだった。
「それだけだ」
「そういうことなのね。じゃあ」
「ああ。行こう」
 ポカリスエットを飲み終えてすぐの言葉だった。
「行っている間が丁度休憩にもなる」
「歩いていたら休憩にならないんじゃないの?」
「身体は全く疲れていない」
 若奈にこう返す。
「ただ。気力が回復できればそれでいい」
「それだけで充分なの」
「そうだ。だから行こう」
 思い立てば即座であった。
「テニスコートにな。それで今度はテニスだ」
「わかったわ。それじゃあね」
 こうして若奈は牧村と共にそのテニスコートに向かいそのうえで今度はテニスをする彼の世話をするのだった。彼はこの日も己を鍛え続けていた。そうした日々を過ごしながら次の闘いに備えているのだった。 
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