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髑髏天使

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第十二話 大鎌その十二


「実にな。だからだ」
「うん、わかったわ」
 妹も笑顔で彼のその言葉に頷いた。そのうえで言う。
「また作ってくれってことね」
「しかも身体にもいい」
 牧村はそのことについても述べた。
「身体にもな」
「それもあるのよ」
 未久もこのことをおくわかっていた。
「ダイエットにいいだけじゃないし」
「食べ物には気を使うべきだ」
 牧村はこのことを強く認識していた。
「何でもな」
「お兄ちゃんただでさえテニスにフェシングもしてるしね」
「格闘家ではない」
 それは否定した。
「俺はそうではない。だから」
「ああ、格闘家の人って」
 未久も今の兄の言葉であることを思い出した。
「食べ物に凄い気を使ってるのよね、確か」
「まず低カロリーに高タンパクだ」
 格闘家の食事はそれを念頭に置いて採られる。それは肉体を作り動きにも影響するからだ。だからそうした食事にしているのである。
「メニューとしては」
「どういったものなの?」
「鳥のササミにゆで卵の白身だな」
「黄色い部分は食べないの」
「あの部分にはカロリーが高い」
 だから食べないのだ。あくまでカロリーのない白身だけである。
「だから食べない」
「何か勿体無い気がするけれど」
 未久にとってはそうである。彼女は食べ物を無駄にすることを好んではいない。これは子供の頃から両親に強く言われてきたからである。
「それって」
「だがそうやって強い身体を作る」
 兄の言葉は絶対のものを含んでいた。
「そうやってな」
「その為には黄身は邪魔なのね」
「少なくとも食べはしない」
 そういうことであった。
「他にも色々と食べ物には気を使っている」
「低カロリーに高タンパクね」
 未久も話を聞いて考える顔になった。
「それだったらお蕎麦やお豆腐とかもいいわよね」
「そうだな」
「ああ、そういえば」
 未久はここであることを思い出した。それは。
「あのプロ野球選手」
「あいつか」
 牧村もこれでわかった。すぐにだった。
「あの人も筋肉、格闘家になるって言ってそういう風な食事に変えたんだっけ」
「そうだったな」
「それで格闘家の身体にして」
「あれは馬鹿だ」
 彼はそれを一言でばっさりと切り捨てた。
「馬鹿だ。それ以外の何者でもない」
「そうなの」
「格等家の筋肉は格闘家の為のものだ」
 当然のことだった。
「そして野球選手には野球選手の筋肉があり肉体がある」
「やっぱりそうなるわよね」
 未久も兄の今の話を聞いて頷く。
「野球選手って走ったり守ったり打ったり投げたりするけれど闘わないわよね」
「そうだ。それで闘う筋肉を着けても」
「何にもならないわよね」
「それがわからないということは馬鹿だ」
 また馬鹿だと言った。
「そしてそれに気付かず持て囃す連中もな。馬鹿だ」
「その人達もなのね。じゃあお兄ちゃんは」
「俺は特に食事制限するつもりはない」
 牧村はここまで話したうえで自分についても話した。 
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