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髑髏天使

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第五十六話 使長その十


「それならそれでいい」
「そうか。何か器の大きいこと言うな」
「褒め言葉ならいいか」
「そう言うんだな」
「俺はそれでいい」
 また言う牧村だった。
「それでな」
「そうか、何かそれってな」
「余裕だよな」
「そうだよな」 
 それだと話す友人達だった。
「彼氏持ちのな」
「それ以外の何でもないよな」
「ったくよ、いいよな」
 やっかみの言葉が話される。
「俺達も彼女作るか」
「羨ましいからな」
「ああ、そうしような」
「絶対にな」
 こんな話をするのだった。そうしてだ。
 彼等はだ。今度はこんな話をするのだった。
「合コンするか」
「そうだな、今度社会学部とやるらしいしな」
「それに出るか?」
「教育学部もやるしな」
 話がそちらに移った。ある意味学生らしい話だ。
「そこにも行くか」
「それで絶対にな」
「彼女捕まえような」
 牧村はその話を聞くだけになっていた。そうなっていた。
 そんな話から講義になってだ。それを受けてからだった。
 彼は家への帰路についた。サイドカーに乗り家に着いた。
 家には今は誰もいなかった。その誰もいない家の中を進み己の部屋に入ってだ。
 ゲームをはじめようとした。しかしそこで、であった。
 窓からだ。彼等が声をかけてきたのである。
「いいでしょうか」
「今からだよ」
 老人と子供がいた。彼等が声をかけてきたのである。
 窓のところにいる。それも二階のだ。
 見れば宙に浮かんでいる。そうして牧村に言ってきたのだ。
「戦いですが」
「用意はいかな」
「用意はいつでもできている」
 こう答える牧村だった。
「ゲームをしようと思っていたがな」
「ですがその前にです」
「しないといけないことができたから」
「わかっている」
 それはもう既にというのであった。
「ならばだ。行くか」
「はい、それではです」
「今からいいよね」
「では少し待ってくれるか」
 窓の向こうに浮かんでいる老人と子供にだった。
 立ち上がながら話した。だがそれでもだった。
 子供がだ。楽しげに笑いながらその牧村に言ってきた。
「玄関から出るつもりかな」
「そのつもりだが」
「別にそんな必要ないじゃない」
 こう牧村に話すのだ。
「窓から出ればね」
「髑髏天使になってか」
「うん、それでいいんじゃないの?」
「そういうわけにはいかない」
 人間の世界の観点からだ。子供に話す牧村だった。
「今家にいるのは俺だけだ」
「だからなんだ」
「戸締りをする必要がある」
 こう話すのである。
「だからだ。窓から出ることはだ」
「戸締りですか」
「それを忘れはどうにもならない」
「それはその通りですね」
 老人が牧村のその話に頷いた。 
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