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髑髏天使

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第五十五話 魔水その二


「どうじゃ、それは」
「俺は一度はじめたことはだ」
 牧村はだ。普段と違い即答せずにだ。言葉を長くして話した。
「降りない主義だ」
「戦うのじゃな」
「そうだ、戦う」
 こう答えたのだった。
「最後までな」
「死ぬかも知れんがじゃな」
「関係ない」
 こう言った。まただ。
「それはだ」
「そうか。そうするのじゃな」
「そうする。人は何時か必ず死ぬ」
 この摂理は絶対のことだった。否定できないものだった。
「だからな」
「そうか。ではわしもじゃ」
「博士もか」
「君と最後まで一緒にいよう」
 微笑んでだ。こう牧村に話したのだった。
「戦うことはできんがな。力にならせてもらう」
「済まないな」
 それを聞いてだ。牧村は静かに述べた。
「そうしてくれるか」
「当然じゃ。長い付き合いになっておる」
「だからか」
「うむ、それではじゃ」
 博士はまた笑顔で牧村に話した。
「わしのできる限りのことをさせてもらおう」
「文献を調べてか」
「それにじゃ」 
 それに留まらなかった。さらにであった。6
「ここには何時でも来てくれ」
「この部屋にか」
「そして菓子でも茶でも果物でもじゃ」
 甘いものが続く。
「好きなものを飲み食いするといい」
「そうしてもいいか」
「どんどんしてくれ。それが君の癒しになる」
 戦士の癒しになるというのだ。博士が言うのはこのことだった。
「癒しは。特に君にはじゃ」
「必要か」
「戦いばかりだから魔物になりかけた」
 智天使になったその時のことはだ。博士も覚えていた。
「では。それを止める為には人間の生活だったのう」
「そうだったな。あれで俺は人間でいられた」
「今度も同じじゃよ。戦いばかりでは潰れてしまう」
「そしてそれを防ぐ為に」
「癒しじゃ」
 博士は微笑みのまま話した。
「だからじゃ。何時でも来てくれ」
「では。有り難くだ」
「わしの言葉受けてくれるか」
「そうさせてもらう」
 牧村は壁に背をもたれかけさせたいつもの姿勢で答えた。
 そしてそのうえでだ。彼の顔は。
 微笑みになった。本当に微かであるがそれになった。
 そしてその顔でだ。博士を見て話すのだった。
「すまない」
「あれ、笑った!?」
「牧村さん今笑ったよね」
「うん、笑ったよ」
「確かに笑ったよ」
「本当にね」
 それまで沈黙していた周りの妖怪達がだ。彼のその顔に気付いて一斉に言う。彼等もその顔ははじめて見るものだったのだ。
 それでだ。彼等はだ。あらためて話すのだった。
「いや、牧村さんの笑顔ってね」
「稀少価値だよな」
「こんなの見られるなんて思わなかったよ」
「全くだよ」
 こう話すのだった。喜んでいる様な、それでいて驚いている様な。そうした顔になってだ。彼等は話すのであった。 
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