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髑髏天使

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第五十三話 怪地その十二


「そう、そうするんだよ」
「こうか」
「皿洗いで必要なのはね」
 まずそこからだった。彼に話すことは。
「まずは丁寧に洗うこと」
「それか」
「そして数をこなすこと」
 次に言うのは経験だった。
「数をね。こなすんだ」
「そうすればいいのか」
「そう、丁寧に数をこなしていけば」
「洗うのも速くなるか」
「そうだよ。速さは自然と身に着くから」
 それについては何も言わないというのだ。
「だからまずはね。どんどん皿を洗ってね」
「いけばいいか」
「それと」
「それと?」
「丁寧に洗うことは大事だけれど」
 それでもだというのだった。ここでだ。
「水と洗剤は大事にしてね」
「無駄遣いはしないか」
「そう、資源はね」
 こう話すマスターだった。
「大切に使わないとね。勿体ないからね」
「だからだな」
「エコとかは言わないよ」
 マスターはそれは笑って否定した。
「けれどそれでもね」
「ものは大切にだな」
「それを忘れたらいけなからね」
 だからだというのであった。
「まあ僕もほら、エコとかはね」
「そういうことは好きではない」
「何か胡散臭いと思うんだよね」
 それでだというのである。
「だから好きじゃないんだ」
「環境を言い立てる背景には何かある」
「そんな気がするんだ。気のせいだといいけれどね」
「気のせいではないかもな」
 牧村はマスターに対してこう述べた。皿を洗いながら。コップもそうしている。全て陶器なのでそれなりに慎重にしてもいる。
「それは」
「気のせいじゃないんだね」
「温暖化というがだ」
「実際は寒冷化しているって話もあるね」
「温暖化を言い立てて何があるか」
 牧村はそれを考えていた。そこにあるものをだ。
「それは何か」
「そうだよね。マスコミも言うけれどね」
「マスコミは信用できない」
 牧村の言葉が曇った。マスコミに対してだ。
「嘘を平気で言う」
「そうそう、だから店の新聞からね」
「新聞か」
「朝日とか毎日はもう取らなくしたから」
 そうしたというのである。その二誌を店に置かなくなったというのだ。
「読売は最初からなかったけれどね」
「巨人だな」
「巨人は嫌いだからね」
 だからだというのだ。もっともな理由だった。
「だからあるのは」
「産経か」
「あそこが一番ましに思えてきたよ」
 皿を洗いながらだ。マスターの顔が曇っていた。
「本当にね」
「そうかもな。あとは」
「八条新聞も置いているよ」
 その新聞もだというのだ。八条グループが出している日刊新聞である。夕刊も出している。かなり中道的な新聞として知られている。
 その記事はある意味無味乾燥とも言われている。事実だけ書きだ。そこには何の主観も入れないからだ。それがこの新聞のスタンスだ。
 その新聞をだ。店に置いているというのだ。
「それもね」
「あの新聞はいいな」
「うん、それとスポーツ新聞も置いてるよ」
 マスターの顔が笑顔になった。スポーツ新聞の話になるとだ。
「ただし。サンスポと夕刊フジは置いていないよ」
「巨人をよく書くからか」
「あと報知もね」
 読売系の新聞である。理由は最早言うまでもなかった。 
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