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髑髏天使

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第五十三話 怪地その十


「かなり薄くなるからのう」
「だから駄目なんだ」
「それはなんだ」
「駄目なんだね」
「そういうことじゃ。男に比べて遥かにましでもじゃ」
「ううん、染めるのって」
「怖いんだ」
「禿げや薄毛にはよくない」
 また述べる博士だった。そうしてであった。
 自分の髪の毛をさすってだ。こうも言うのだった。
「わしはこれまで一度も染めたことはないからのう」
「一度もなんだ」
「それはないんだ」
「脱色もない」
 それもだった。
「まあ今は脱色しているのと同じじゃがな」
「白髪だからね」
「それはね」
 妖怪達は博士の雪の色の毛を見ながら話す。
「けれど白髪になっても」
「それでもなんだ」
「そうじゃ。この通りかなり健在じゃ」
 鬣そのものである。その髪はだ。
 そしてだ。今度は髭をしごく。そしてまた言った。
「この髭もじゃ」
「随分長い髭だね」
「それも何時見てもね」
「切ったりしないんだ」
「散髪屋で整えてもらっておる」
 それはあるというのだ。
「そうしてもらっておる」
「一応そういうことはしてるんだ」
「ただ無造作に伸ばしてるんじゃなかったんだ」
「そうだったんだ」
「流石にそれだとえらいことになるわ。それこそ」
 そしてだった。この動物の名前を出した。
「犬になってしまうわ。チャウチャウにのう」
「そういえば博士ってそんな犬に似てるし」
「そうだね。似てるね」
「確かに似てるよね」
「よく見たら」
「妖怪と言われたこともあるぞ」
 笑いながらだ。このことも話す博士であった。
「人間離れしておるとな」
「そうだね。似ているね」
「僕達にね」
「かなり近くなってきてるよね」
「半分そうなってない?」
「妖怪に」
「ふぉふぉふぉ、それもよい」
 妖怪になっていることもだ。博士はいいというのだった。
「そうしてずっと楽しく暮らすのもよいのう」
「それは仙人だな」
 牧村がそんなことを言う博士に述べた。
「そこまでいくとな」
「仙人と妖怪って近いのかな」
「全然違うんじゃ?」
「そう思うけれどね」
「そうだよね」
「いや、近いかものう」
 だが博士は今度は妖怪達よりも牧村に応えて述べた。
「言われてみればのう」
「近いんだ。僕達と仙人って」
「そうなんだ」
「うむ。どちらも楽しむ存在だからじゃ」
 それでだというのだ。
「まあ特に区別化しなくてもよいかもな」
「ううん、じゃあ結局人間と妖怪も」
「近い?」
「そうだよね」
 妖怪達も何となくだが納得してきた。そのうえでまた話すのだった。
「まあ博士とか牧村さんとかね」
「僕達とそのままお話できる人もいるし」
「それ考えたらね」
「同じかもね」
「そうかもね」
「そうだな。俺もだ」
 牧村だった。彼がまた話すのだった。 
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