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髑髏天使

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第五十三話 怪地その八


「それでああした髪型になったか」
「そういうことだよね」
「何の意味もなくあんな髪型にはならないしね」
「そうそう」
 妖怪達も言ってきた。
「まあねえ。禿げもねえ」
「人間を悩ましてきているよね」
「そうだよね」
「俺も将来はわからないな」
 牧村はふと自分にもあてはめて述べた。
「誰でも可能性がある話だからな」
「早い人間ではな」
「二十代からくるな」
「いやいや、十代からじゃ」
 博士の話はさらに早かった。
「十代からくる者もおる」
「そうなのか」
「そうじゃ。それで二十代で髪が見事になくなる」
 博士の牧村への話は怪談めいたものになってきていた。
「そうした場合もある」
「本当の話だな」
「こんな話は嘘ではせん」
 実際に真顔で話している博士である。
「なるものじゃよ」
「そうか。なるか」
「なるからのう。わしはその点は幸いじゃった」
 白いライオンを思わせる髪は健在だった。一種の妖怪にすら見えるまでに多く長い。それが博士の髪の毛であるのだ。白髪であるが衰えは見られない。
「禿げなかったのはのう」
「禿げの特効薬はない」
 牧村はまたこのことを述べた。
「しかしだ」
「しかし?」
「防ぐことはできたな」
 今度の話はこうしたものだった。
「そうだったな」
「うむ、それはな」
 できるとだ。博士も答える。
「できるぞ」
「そうだな。それはな」
「髪の毛をよく洗い」
 まずはそれからだった。
「毛根までよくじゃ」
「そこまでか」
「そしてマッサージもする」
 次にはそれだった。
「洗う時には泡もよく落とす」
「それもか」
「そうじゃ。それとじゃ」
 さらにだった。博士の言葉は真面目に続く。
「洗い終わったらよく拭く。湿気は残さぬ」
「残さないのだな」
「むれるのは危険じゃ。だからヘルメットは危ないのじゃよ」
「それでだな」
「左様。それと食べ物じゃが」
「食べ物。脂気の多いものはだな」
「あまり摂り過ぎるとよくはない」
 これはよく言われていることだが博士も言うのだった。
「髪の毛にもな」
「そうだな。脂肪はな」
「あと髪の毛にいいものを食べる」
 博士はこうも話した。
「カルシウムの系統じゃな」
「そうしたものか」
「それと野菜じゃ。それとじゃ」
 また話す博士だった。
「頭皮には乾燥させて焼酎に漬けた蜜柑をやるのじゃな」
「民間療法か」
「意外といいらしい。まあとにかくじゃ」
「防ぐ方法はあるな」
「そうじゃよ。特効薬はなくともな」
 この辺りは風邪と同じだった。特効薬はまだなくともだ。それでも防ぐ方法はあるのである。博士が話すのはそのことであるのだ。
「できるからのう」
「そういうことだな」
「髪の毛がなくなっていいと思う者はいない」
 博士はここでは断言だった。 
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