真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第6話 山賊狩りの正体
山賊との戦闘を終え、無事城に戻った母上と私は、急いで父上が居られるであろう政庁に向かいました。
政庁に着くと衛兵の一人が母上の顔を見て大慌てで政庁に入っていき、直ぐに父上に取り次ぎをしてくれました。
私と母上が通されたのは父上の執務室です。
この部屋に現在いるのは父上、母上、お爺々様と私を含め4人です。
3人には私の母上を救出したことのあらましと、私が山賊狩りをしていた怪物の正体であることも話しました。
父上とお爺々様は信用できないようでしたが、母上が証人となったので、半信半疑ですが信用してくれました。
普通は信用しないと思います。
私5歳児ですから。
そして話は本題に入っています。
私が何故、山賊狩りを初めたのかです。
「正宗、包み隠さず話してもらうぞ」
どう話せばいいものでしょうか?
『孫策との戦に敗れて逃亡先で病を患い惨めな末路を回避するために山賊狩りをして腕を磨いていました』
こんなことを言った日には頭のオカシイ子扱いです。
「正宗、どうしたのだ親に話しにくいようなことなのか?」
「あのとき、私に話を必ずするといったことは嘘なのですか?」
父上、母上も私が話したくないと思っているようです。
話をしたくないというより、話をしにくいです。
ここは、 母上や父上には申し訳ないですが、無難な理由を言って切り抜けようと思います。
「見過ごせなかったのです!山賊達が、力のない人々から略奪を行い、その命を奪っていくのが!」
山賊狩りを初めた当初は、打倒孫策のためという切実なものでした。
「バトルジャンキー」孫策に比べれば山賊など赤子と一緒です。
自分本位の理由で初めた山賊狩りでしたが、山賊狩りをするうち、私の中で変化がありました。
切っ掛けは、山賊に襲撃された農村の惨状を見てからです。
あの惨状を目の当たりにして、理不尽な暴力が許せないと思いました。
前世で戦争のない日本で暮らしていた私の感覚では、あのような暴力を容認することは到底できませんでした。
前世では、テレビやニュースのそういった記事を見てもあまり実感が湧きませんでしたが、現実にそれを目の当たりにしてしまったら、無視することなどできませんでした。
神様から私は強大な力を貰いました。
その力で理不尽な暴力に苦しんでいる人達を少しでも救えるなら、私は迷いなくその力を行使しようと思うようになっていました。
私の想いは偽善なのかもしれないです。
でも、やらずにはいれませんでした。
「それは役人、軍人の仕事であって、お前がやるべきことではない!」
父上のいうことは正論です。
都督のジジは決して無能なわけではないです。
しかし、職務上どうしても都市の警備に力を割かざるおえないです。
結果、都市から離れた農村の警備は無視しているに等しいです。
仮に、農村で山賊の襲撃があっても、救援が着く頃にはその農村は壊滅しています。
「では、何故これほど山賊達がはびこっているのですか!私がどれほどの山賊を殺してきたとお思いですか!農村に住む者が、山賊の脅威に怯え毎日を送っている現実を知っていますか!私が山賊達を殺し続けねば、死ぬ必要のない者が死んでいました!父上にとって守るべき民は、都市に住む者だけなのですか?都市に住まぬ者は守るべき民ではないというのですか!」
「う、それは・・・」
父上は私の言葉に言葉を詰まらせました。
「そこまでじゃ、正宗よ。お前の想いは良くわかった。その想いは尊いものじゃ。じゃがな・・・。お前は聡い子じゃ。ならば分かるであろう。税収には限りがあり、軍備にも限りがあるのじゃ。その上で最善を尽くすのが政というものじゃ。卑怯な言い方かもしれぬが、大人の世界とはそういうものじゃ。何もお前の父は見て見ぬ振りをしているわけではないのじゃぞ。父とてきっとお前と同じ気持ちじゃと思う。それでも悩みながら政をしているのじゃ。故に、父をそう責めるでない。それにお前がやっていたことを正統化することにはならんぞ。何処の世界に、年端の行かぬ子供に、賊とはいえ人を殺すことを勧める親がおろうか」
お爺々様は、いつもの好々爺な顔とは違い真剣な顔で私に語りかけました。
流石、お爺々様です。
完全に話の主導権を持っていかれています。
年の功ってやつですか。
私に非があることは間違いないので、ここは素直にあやまるしかないようです。
「父上、母上、ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」
私は頭を下げて謝りました。
「ほれ蔵人よ、正宗も反省しているようじゃ。過ぎたことを言ってもせんなきことじゃ。もう、許してやってはどうじゃ?」
先ほどから黙っていた父上は、お爺々様に促されて話しだしました。
「・・・。今回は、父上の顔を立てることにしよう。私は大守としてお前の行動を褒め讃えなければならないのであろうな。しかし!この馬鹿者がっ!親に黙って何と言う危険なことをしていたのだ!死んでいたかもしれないのだぞ!」
父上は言い終わる前に、私の頭の拳骨で殴ってきました。
「い、痛だぁーーー。痛いではないですか、父上!」
「あたりまえだっ!これでも甘いくらいだ!」
父上を見上げると、私を見ながら泣いていました。
これでは私は何も言えません。
「父上も私もあなたのことを愛しているのですよ」
母上が私を包み込むように、私の背中から抱きしめてきました。
「次からは、悩み事があるなら一人で抱え込まず、父上や私に相談しない。私達では頼りないのですか?」
「い、いえ!そんなことはないです」
「でしたらもっと子供らしく親を頼りなさい。ただでさえ、お前は何事も自分やろうとするところがあります。今回などその最たるものです。正直、単身あなたが山賊の中に現れたときは、心臓を押しつぶされるような想いでしたよ。でも」
母上は私の正面に周り、私の目線で顔を真っすぐ見ながら話しかけてきました。
「あのときのお前は凛々しかったですよ。多分、あなたの親でなかった一目惚れしていたと思います」
母上はやさしく微笑んでいました。
「な、何っ!」
父上が母上が言った「一目惚れ」という言葉に反応しました。
「あなた本気に取らないでください。それ程までに凛々しかったということです。あの時の正宗は本当に勇ましく凛々しかったのですよ」
父上は罰が悪くなったのか背を向けて言いました。
「正宗、今回のことは都督殿に伝えておくのだぞ。私からも話しておくが、今回の件では都督殿には迷惑を掛けてしまったからな」
都督のジジには無駄骨を折らせてしまい悪いことをしてしまいました。
「はい、父上分かりました」
「うむ」
翌日、都督のジジにも父上達に話した内容を話しました。
「がぁはは、はは、若君は勇ましゅうございますな!いつの間にかに立派になられましたな。お気になされることはありませぬぞ。奥様が無事で何よりですからな。若君と戦場で轡を並べる日が楽しみでございますぞ!」
都督のジジは怒るどころか嬉しそう笑っていたのが印象的でした。
数日後、山賊を殲滅した場所に、私と都督のジジ、小数の兵士を連れ向かいました。
一応、検分をする必要があるとのことでした。
私は馬にまだ乗れないので、都督のジジと一緒に馬に乗っています。
現場に到着すると、兵士達はその惨状を見て驚愕していました。
私も冷静になって見ると、やり過ぎたなと後悔しました。
山賊達に同情の気持ちはないですけど。
死んだ山賊達は人の原型を留めていないです。
頭がない死体。
両腕と片足がない死体。
腰から上がない死体。
他にも口で表現できないような状態の死体がそこら中に散乱しています。
獣が荒らした痕跡もありましたが、それを差し引いても酷い惨状でした。
都督のジジもここまでとは思っていなかったようで引いていました。
後書き
次からは予定通り原作キャラを登場させようと思います。
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