FAIRYTAIL-ダークブリングの力を操りし者-
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第十話 新たな仲間達とミラジェーンという女の子
あの初依頼から約二年の年月が流れた。俺はギルドの仲間達、時には単独で依頼をこなしていった。おかげでDBの扱いもお手の物だ。もちろんデカログスの扱いも身体的に成長したこともあってか十二分に使いこなせるようになった、と言っても完璧とは言いがたいが。そんな俺のことよりもこの二年で新たに仲間になったメンバーがいる。
まず一人目はあの依頼から一年後、ナツ・ドラグニルがギルドにやって来た。見た感じグレイほどの年齢で桜色の髪とマフラーが特徴的だ。聞いた話ではドラゴンに育てられたとか……この世界はドラゴンまでいるのかと少し気持ちが浮かれたな。いずれ、戦ってみたい。
そして火の滅竜魔法を操る滅竜魔導士でもあるらしい。ドラゴンから教えられた魔法らしいが何故竜を滅する魔法をドラゴンから教えてもらったのかが疑問だ。何より面白いのが、ナツは炎を食べることが出来るということ。
そしてどこか前作RAVEの主人公ハルを思わせるような容姿とナツという名前からもしかしたらとは思っている。春から夏だからな。
グレイとは仲がいいのか悪いのか、いつも喧嘩している。というより、じゃれあっていると言った方がいいか。その後、エルザが二人を宥めて武力行使で黙らせるのがお約束になっている。
そのエルザとよく喧嘩を勃発させているミラジェーン・ストラウス。ナツがこのギルドに加入して一年後にやってきたばかりの新人くんの内の一人だ。
ミラジェーン、エルフマン、リサーナは三人姉妹いや兄弟か? エルフマン以外は女の子だ。エルフマンは気弱で心優しい少年。リサーナはナツと仲が良く、一緒にいる場面をよく見かける。ちょっとませた女の子だが背伸びをしたい年頃なのだろう。
そして問題は長女のミラジェーンだ。同じ十三歳の女の子だからだろうか、エルザといつも張り合っており実力もエルザと拮抗している。変身魔法のテイクオーバーという種類の中でもサタンソウルと呼ばれる悪魔のような姿に変身した時はあのエルザと互角にまで持ち込むほどの戦闘力を発揮する。その姿から【魔人】なんて呼ばれ始めてる程だ。正直十三歳だったときの俺なら苦戦しただろう。そんな彼女が俺に興味を持ち出したのはギルドに入りエルザとよく喧嘩し始めた頃だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あんたがエルザが言ってたルシアね」
「あ? 確かミラジェーンだったか。何か用か?」
その少女は髪の色とは正反対の黒を基調とした服装をしており、どことなく俺の服装とテイストが似通っているような気がした。女の子が使う言葉にしては乱暴なほうだろうが俺はあまり気にしないタイプなのでスルーした。
「エルザとあんたが一緒にいる所をよく見かけるからね、話掛けてみたんだ。しかもあのエルザが強いって言うんだから私の興味を引かないわけないだろ?」
ふぅん、と話半分で聞き流し最近やっと合法で飲めるようになったワインを口に含め喉へと流し込む。この国では十五歳からの飲酒を認めている。つまり十五歳の俺は飲酒しても何ら問題はないということだ。
カナは何故か飲んでいるが原因は俺だろう。初依頼のとき俺が美味しそうに飲むお酒を見て十三歳になったら酒を飲むと決めていたらしい。もっと悪びれてひっそりと飲むべきだった。悪影響を与えてしまったと反省している。今飲んでいる酒は定期的にブランクの所から送ってもらっているワインだ。
そんな現実逃避したどうでもいい思考を渦巻かせているとミラジェーンの声により現実に意識が戻る。聞いてんのかっ!と声をあげているミラジェーン、面倒なのでミラと呼ぶことにしよう。そのミラが不満げに俺のワインを盗り顔を覗き込む。
「あぁ、聞いてる。だからワインを返せ。今丁度ほろ酔いで気分が良くなってきたんだ」
「ったく、んでルシアが強いっていうからよ。試してみたくてな。それに金髪の悪魔って呼ばれてたこともあるんだろ?エルザが言ってたぜ。そんぐらい強いってな」
ニヤリと笑うミラは今から戦おうぜとばかりに戦闘のオーラを出している。がしかし、いくら戦うことが好きな俺でも年中無休戦いたいわけじゃない、時と場合による。気分良く一人で飲んで長旅だった依頼の疲れを取っているところだ。残念ながらやる気があまりない。それに……
「止めとけ。強いと言ってもまだエルザクラスだろ? 相手にならねぇよ」
「あ゛ぁ!?」
しまった。馬鹿か俺は。逆にガソリンを注いでどうする。どうにも相手を宥めることが苦手だ。元々好戦的な俺が苦手なのも自身でも納得のいく話だが、いつかは出来るようになる日を祈る。別にそのために努力する気にはなれないが。俺はこの場で臨戦態勢をとろうとしたミラを磁力のDB【コンパスコード】で動きを止めた。
「なっ! なんだ、身体が動かない!」
「この場で暴れようとしたからだ。ほら、外いくぞ。そこならギルドが壊れずに済む」
俺はコンパスコードを解きミラを自由にする。まぁこのDB自体雑魚ならまだしもミラのほど実力者なら力技で何とかできただろう。すぐに俺から距離をとったミラは警戒の色を隠さず注意深く今の出来事を思案しているのだろう。良いことだ。俺はそのままギルドを出て歩きだす。その後をミラがハッとしたように追いかけてくる。
場所はマグノリアから少し離れた場所だ。所々木々が生えているが、俺が立ち止まった場所は雑草が生えているだけだ。ここだけ木々が無いのは、俺がよくデカログスで修行しているからという理由もある。
とりあえず、今回はデカログスは使わないでおこう。前にエルザとミラが戦闘していた時は素手で戦っていたからな。最近殴りあいをしてなかったので拳で語らうとしよう。もしものときは最近少しだけ使えるようになった特殊DBの五六式DBを使えばいいか。
けどあれは使った後身体中が痛くなるから嫌なんだけどな。ミラの様子を見るとありありと警戒していることが見て取れる。恐らく先ほどのDBせいだろう。魔力を使わず不可思議現象を起こしたんだからな。そりゃあ警戒の一つもするか。
「さて、ここなら少し暴れても問題ないだろ」
「……最初から全力で行くよ! 私は強くなくちゃいけないからねっ!」
一瞬にしてミラはサタンソウルにより姿を変え、溢れる闘志を放っている。凄いなこれは。向かい合って初めてその強さを正確に感じ取れた。なるほど、エルザと拮抗するわけだ……少しだけやる気が出た、かな。ポケットに手を入れたままだが。
地面が割れる音が聞えた瞬間、ミラは俺へと突撃してきた。その歳にしては有り得ない程の身体能力で迫り俺の腹部へ右ストレートが突き刺さった。咄嗟に腹部を鋼鉄に変え衝撃の瞬間後方に跳び威力を軽減した。
「さすがエルザが目標にする男なだけあるね。今の一瞬で後ろに飛んで威力を軽減するとは。それに異常に硬かった腹部にも何かしたね?」
「目標うんぬんは知らないが、今の一瞬でよくわかったな。さすがだ」
「その油断した顔をすぐに歪ませてあげるよ」
「油断? これは余裕というものだ。覚えておけ」
ミラはそのまま先程と同じよう突撃を駆け圧倒的なまでの連撃を俺に浴びせてくる。これが二年前の俺だったら容赦なくDBを連続で使用してる所だが、残念ながらラクサスとの戦闘の後きっちり反省を生かして身体の方も鍛え上げた。そうそう、やられるわけにはいかない……のだが。
思った以上にミラの身体能力が高い。そろそろ脚だけで攻撃を受けるのがきつくなってきた。というより、何発か良いのをくらってる。酔いのせいで少し気分も悪くなってきた。吐く前に決着つけるか。それにミラの心を折る必要がある。こいつは何か呪縛のように強さを求めているように感じる……気のせいかもしれないが。一度ミラから距離をとり、再び向かい合う形になった。
「酔ってなかったらもう少し戦闘を続けてもよかったが、さすがに気持ち悪くなってきた。そろそろ終わりにするぜ」
「はっ! そう簡単にやられるもんか!」
「だといいがな――特殊DB、五六式」
普通、上級、最上級、六星、そしてマザーDB(シンクレア)と段階があるのだが、特殊はその段階の枠の外に分類されている例外的存在のDBだ。この五六式は潜在能力のDB。人間の本来持つ潜在能力を限界まで引き出すことができる。
これは原作では使用者の体内にDBが埋め込まれており常人の2.5倍の早さで年を取るデメリットが存在した。しかし俺は埋め込まれているわけではなく、首から掛けられているDBを使って能力の使用をしているため、そのデメリットは無効なのだが使用後にかなりの負担が身体に掛かるという新たなデメリットがある。しかしそんなデメリットが霞んでしまうほど強力なDBだ。そのため手加減も大変だが敵を圧倒し心を折らせるには手っ取り早い。
「な、何をしたんだい!? ルシアの身体が」
「頼むから全力で防御してくれよ? 手加減はするが、いかんせん慣れてなくてな」
ドンッ!と大きな音が鳴り響き、周囲の大気が震えたかのように感じた。その音の正体はミラに迫る際、地面に圧力がかかり小さなクレーターが出来た時の音だ。あまりの速さに俺を見失ったのか、ミラは周囲を忙しなく見渡すが目視できないようだ。
俺が後ろだ、とこれから攻撃するために合図を出し防御させるよう声を発した。条件反射のようにミラは背後から迫る蹴りに対して右腕を上げそれを支えるように左手で防御を補ったのだが。
「ぐぅぅぅ!!」
そのまま勢い良く吹き飛び木々がある場所まで吹き飛んでいった。ミラは今の一撃で腕が使い物にならなくなったのか腕をだらりと下げている。そしてミラが正面を向いた時には俺のつま先がミラの首元に突きつけられていた。
「チェックメイトだ。悪くはなかったが相手が悪かった」
「……ちくしょう。まだ鍛えたり無いっていうのかよ」
ミラが悔しそうに下唇をかみ締めていた。何故彼女はこんなにも力を欲するのか。ただ単純に負けることが悔しいのか、それとも俺と同類なのか。そういえばと、エルフマンとリサーナのことを思い出した。もしかしたら妹と弟を守りきれる力が欲しかったのかもしれない。勘だけど。
地面を見るとポツリと一滴何かの雫が落ちてきたように濡れていた。雨かと思ったが空を見ると清々しいほどに快晴。では何故?と思いながらミラを見ると悔しそうに涙を浮かべていた。少し驚き、取り乱しそうになったがすぐに心を落ち着かせ平常心を保つ。
突然女の子に泣かれると俺でも驚く。恐らく負けた悔しさで泣いたのだろうが、俺は彼女にどんな言葉を投げかけ慰めたら良いかわからない。エルザのときとは状況が違う。圧倒的に力の差を見せすぎたか。心を完膚なきまでに折ってしまった俺に原因はあるのだろう。俺は震える体にマントを掛けてあげることしかできなかった。彼女が今思ってること、涙を流している理由を確信できないでいたから。だから、俺は
「俺は人の心を読めるわけじゃない。それに悩みを聴いても解決できるかどうかもわからない」
「……」
「人に話すだけでも楽になるってよく聞くけど実際その通りだと俺は思う。俺とミラの信頼関係はこれからだが、お互い同じギルドで戦った仲ではある。だから、その、何ていうか」
「……ふふ、口下手だな、ルシアは」
「悪かったな。カッコ良く慰められなくて」
でも少し楽になったよ、とミラは泣き腫らした顔で笑顔を浮かべながらそう言ってくれた。俺が慰められてどうする。泣いている予想はできるがその予想が当たっているかは自信はまるでない。そんな憶測で慰めるよりも直接聞いたほうが良いと思ったんだ。クソッこういうのは苦手だ。俺の拙い説得のお陰かはわからないがミラは独白するかのようにポツリポツリと呟いてくれた。
「……私がしっかりしないといけないんだ。エルフマンとリサーナは私の大切な弟と妹なんだ。いざという時私が助けてやらないといけない。そんな私がこの様なんてさ、あまりにも情けなくなって、あまりにも悔しくて、頑張って努力して強くなったと思ったのにルシアと戦ったら全然だもんな」
やっちまった。安易に心を折る戦い方をした俺が招いた事態だ。俺みたいな自分の欲のためじゃない、弟と妹のためにミラは努力してたんだ。その努力を俺が踏みにじったのか。
……ならば、責任をとらなければならない。ミラが誰かギルドの仲間に頼るにはまだ時間が足りない。入ってすぐにそこまでの信頼関係を構築できるわけないのだから。だから安易にギルドの仲間に頼れなんて俺の口からは言えない。しかしだからこそ、その事実を知りミラの心を折った俺だからこそ言うべき言葉がある。口下手だがそれくらいは言える。
「俺を頼ってくれないか。まだ全然信頼できないかもしれないが、問題が立ちふさがったとき解決できないかもしれないが、一緒に立ち向かうことくらいはさせてくれ」
「いいのか? 迷惑かけちゃうかもしれないぞ」
「問題ねぇよ。同じギルドの仲間は家族だ。これから互いに歩み寄っていけば良い」
顔を真っ赤にさせ泣きじゃくった顔で俺のところへ一歩づつ歩いてくる。俺もミラのいる場所へと歩み寄っていく。そう、お互い歩みあって月日を重ねてより絆を深めて家族になれば良い。ミラが我慢できずにルシア!と俺の名前を叫びながら走り寄ってくる……あ、やばい酔いが
「おえぇぇぇえええええ」
「ぎゃぁぁぁあああああ」
そんな感動の場面をぶち壊し俺の意識は遠のいていった。やっちまった……ぜ。
side out
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
side ミラジェーン
あんな感動の場面でゲロ吐くか?普通。何だか自分が今まで悩んで苦しんだことが馬鹿みたいに感じてきた。でもそう思えるのもルシアのおかげなのかもしれない。大切な思い出がこれっていうのも難だけど。
ルシアの顔色を見れば顔面蒼白という言葉が最も適していると思う。とりあえず口を拭いてあげ風通しの良い所まで運んだ。そこは周りの木々よりも一回り大きい大木の下。その大木のおかげで木陰になっており、辛そうなルシアの頭を持ち上げ膝枕をしてあげる。
……エルザもルシアに膝枕なんてしたことがあるのだろうか。というよりエルザとルシアの関係性も少し気になる。あのエルザが絶賛してた男だからな。私がどうせ大したことない男だろと挑発すれば烈火の如く怒り出したほどだからなぁ。でもまぁ……
「今なら、エルザがあんなに怒った訳も少し分かるかもな」
ルシアのサラサラな髪を手で櫛を通すようにそっと撫でる。もぞもぞと動き、良い位置を見つけたのかそこで安定した。ショートパンツだから少しくすぐったい。寝顔は意外にも可愛く、戦闘の時見せていたあの獰猛な顔とはまったく違う。本当に同一人物なのかと疑ってしまうほどだ。指で頬を突くとうなされている。少し面白い。よくよく見てみると結構顔立ちは整っている。たぶん、皆第一印象はこの凶悪な眼つきが印象的でここまで見れていないのかもしれない。損をしているなと思いつつもその事実を知っているのは私だけでいいとも思う。
心地よい風が時たま吹き、なびく髪をおさえる。森林につつまれ穏やかな時間が過ぎていく。たまにはこんな時間があってもいいよな。それにもし何かあっても一緒に助けてくれるんだろ?魔人と悪魔がタッグを組めば向かうところ敵なしだ。私はそう呟きながらルシアの髪を撫で続けた。
後書き
ミラジェーンはルシアのことを目つきの悪い強い人から頼りになる男子へと認識を変えました。
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