DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)
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現実は重く悲惨だった!
お父様は悪臭スリ少女を摘んだまま、周囲の視線を気にして裏路地の人気のない場所へと移動した。
みんなでスリ少女を犯す為に、裏路地へと入ったのかと思い、ちょっとだけ期待に濡れてしまったのだが、お父様やカンダタはともかく、お兄様やマイダーリンがそんな事するワケもなく、またアルル様等が許すはずもなく、エロゲー的な事にはならなかった。
ただガラの悪い警備兵を避けただけみたいです。
「いい加減離せよオッサン!」
「オッサンじゃない!イケメンお兄さんだ!言ってみろ!」
あれ?そう言えばお父様って何歳?
見た目若いけど、結構なオッサンかしら?
「ふざけんな馬鹿!死ねオッサン!」
「むぅ…口の悪い娘だ!こうしてやる!」
スリ少女の暴言に気分を害したお父様が、徐に彼女を拷問し始めた…つっても擽りの刑だけどね。
「ぎゃははははは…や、やめろ…あははははは…」
「ほら、超イケメンお兄さんって言ってみろ!」
『お兄さん』だけではダメなのだろうか?
妙にイケメンに拘る我が父…やっぱアホだ!
「きゃはははは…うるさい…あははは…こ、このエロオヤジ…ひゃははははは…」
しっかし…良くもまぁあの悪臭少女を触れるよなぁ…
私は臭いに耐えられず、申し訳ないと思いつつもウルフちゃんのマントで鼻を押さえている。
それでも臭いは遮断出来ないが、多少は軽減されるので、何もしないよりはマシだ…
「あはははは…も、もうやめて……ちょ、超…イケメ…ン…お兄さん…」
「よし、よく言えました。僕はまだ若いんだからね!」
笑い疲れたスリ少女は、グッタリと壁にもたれ言いようのない色っぽさを醸し出している。
この悪臭が無ければ、此処にいるお父様以外の殿方はムラムラしてたに違いない!
カンダタあたりは押し倒してたかもね。
「さて………何だって君は、そんな恰好までしてスリをしてるんだい?」
「そんな恰好…?どういう事ですかリュカさん!?」
お父様の一言が気になったアルル様は、鼻と口をハンカチで押さえながら尋ねた。
浮浪児が薄汚れた恰好をしていてもおかしくはないだろう…なのに『そんな恰好までして…』と改めて聞くのはどういう事なのか?
アルル様だけでなく、私も気になる所ね。
「この娘、ワザと悪臭を服に擦り付けてスリをしてるんだ!多分この臭いは、腐ったネズミの死骸かな?」
「凄い…よくこの悪臭の根元が分かったね…」
擽りの刑でグッタリしていたスリ少女が、お父様の一言で驚き目を見張った。
「まぁね…顔と鼻と女運は良いんだ!」
「うぇ…何でワザワザそんな事なさるんですの?」
ただでさえ吐き気がする悪臭なのに、その元凶が腐ったネズミの死骸って…
もういいじゃない…
こんなヤツ放っておいて、この国の現状を調査しましょうよ。
もう悪臭に耐えられそうにないわ!
「………ふん!」
ほら…
この娘も何も言わないし…
「悪臭を纏う事で、スリへの注意を逸らすのが目的なんだ。こんな悪臭の人がぶつかって来たら、思わず突き放そうとするだろ!?自分の財布を確認するよりも、相手を突き飛ばす方が優先されるわけだよ」
はぁ、なるほど…
確かにこの臭いからは逃げたくなるわよ。
「……そんな事まで分かるんだ…凄いねアンタ…で、アタシをどうするんだい?詫びを入れさせる為に、此処で犯すかい!?…それとも犯罪者として、警備の兵に引き渡すのかい?…ふっ、警備兵に引き渡されても、死ぬまで犯されるだけだね………私の未来は決まったね………」
別にそんな事はしないわよ!
盗んだって言っても、お父様の財布だし…仮にお金が入っていたとしても微々たる物だろうし…何より実際に入っていたのは、お母様の使用済み下着だけだし…
「私達はそん「どうするかは君次第だ!何故スリを?」
「そ、そんな事…何だって関係ないだろ………さっさと犯すなり、殺すなり、好きにしなよ!」
うん。
浮浪児がスリをする理由なんてどうでもいい…
なのにお父様は少女の目を覗き込み、優しく問い続けてる。
「関係なくは無いよ…どうして君が、こんな事をしなければならないのか…それを知りたいんだ」
どうしてお父様は、この悪臭に耐えられるの?
スリ少女の顔に、自らの顔を近付けて瞳を真っ直ぐ見つめてる。
「何か力になれるかもしれない…だから、教えてほしい…何故スリをしてるのか…何故そうなってしまったのか…」
凄く優しく彼女へと接するお父様…
お父様は基本的にフェミニストなのだ。
言い換えればたたのエロオヤジ。
だが大抵の女はそれに騙され、心も股も広げてしまう。
入れ食いだろうな!
「うぇ~ん……ご、ごめんなさい……私………ごめんなさい!」
そしてこの少女も落ちた。
お父様に抱き付き泣き出した…
お父様に抱き付き泣く事約10分…
ただ黙って泣き止むのを待つお父様…
ただ黙って悪臭に耐える私達…
スリ少女は泣き止むと『私の名はフィービー』と自己紹介をし、お父様の手を引いて我々を導く。
私達も自己紹介をしたのだが、お父様の事以外には関心を示さず空気の様な扱いだった…
『その男に現を抜かすと孕まされるぞ!』って教えてやろうかと思ったが、『ばっちこい!』と言われても面倒なので、取り敢えずこのままにしておく。
…また家族が増えるのかな?
導かれるままついて行くと、殆ど潰れてる屋敷に到着する。
入口とはとても言えない様な隙間から中に入り、地下室へと進む…
そこには目を背けたくなる様な状況が広がっていた。
30人程があまり広いとは言えない地下で身を寄せ合い蹲って居る…
殆どの者が年端もいかない子供で、今の私より年下ばかりだろう。
大人も居るが、状態は酷い…
両手足を切断されてる男・衰弱が激しく死にかけてる老人・右目や頬をえぐられている妊婦など…
「此処は………?」
お父様が乾いた声で問いかける。
「此処はアタシ達の唯一の住処だ。アタシ達は此処で寄り添い生きている…」
違う…それは分かっているのだ…お父様が聞きたいのは何故こうなったのかだ…
そう言おうとしたのだが声が出ない…
彼女もそれが分かっているのか、抑揚のない声で語り出す。
この国の荒れた現状…
リュカの問いにフィービーが抑揚無く答える。
そして教えてくれる…この国の状況を…彼女等の境遇を…
『特務警備隊』と呼ばれるクズ共の悪行…
そして、そのクズ共に何をされたのかを…
「…ねぇリュカ、あの娘を見てよ…」
フィービーが1人の少女を指差し囁く様に語る。
「彼女はリサ…この国でも有数の名家の生まれなんだけど…お父さんが税率に対して不平を言った次の日に、特務警備隊が家に押し寄せて、彼女の目の前でご両親と3つ年下の妹を殺したんだ…お母さんと妹は犯されて…勿論彼女も…」
指差した先には、一人の少女が虚ろな瞳で壁にもたれている。
年の頃なら14.5歳の少女は焦点は定まらない虚ろな目で壁にもたれている。
私は耳を塞ぎたくなった。
ゲームでは語られていないこの惨状に!
何も聞きたくなかった、ドラクエは楽しいゲームなのだから!
「此処に居る人で、奴等に何もされてない人はいない…私も道を歩いてただけで犯された…好きでもない男に無理矢理処女を奪われたんだ………」
だが彼女は語るのを止めなかった。
こんな事実、苦しいはずなのに…思い出したくないハズなのに…
そして顔を上げ、お父様を見据えながら言葉を続ける…
「リュカ…さっきアタシに言ったね…『何故スリをしてるのか…何故そうなってしまったのか…』と…」
ただ無言で頷くお父様。
「この国じゃ物乞いをしても誰も何もくれやしない!特務警備隊に見つかれば、またあの悪夢を見せられるだけ…だから盗むしか無いんだ!………そしてアタシしかそれが出来ない……見て、みんなを…」
しかし私は見る事が出来ない…辛くてみんなを見る事が出来ない…
私の心は憤りを感じ苦しくなる。
どうすればこの気持ちは収まるのだろうか?誰か教えて下さい…誰か助けて下さい!
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