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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第十四話 愛と勇気と力とが

                第十四話 愛と勇気と力とが
「俺の誕生日なんて誰も覚えていないだろうな」
 少年は一室でボンヤリとそう考えていた。青緑の髪の凛々しい顔立ちをしている。アジア系の顔であった。
「あのヒメって娘・・・・・・十七歳っていってたな」
 そして狭山で遭った少女のことに考えを移した。
 見れば殺風景な部屋であった。ベッドと椅子以外は何もない。彼は今ベッドに寝転がって考えに耽っているのだ。
「何をしているんだ、俺は」
 ふとそう呟いた。
「こんなところで。何をしているんだ」
 そう思うと急にやりきれなくなってきた。その感情が抑えられなくなりだした。それが彼にとってのはじまりであった。

「諸君、朗報だ」
 大文字は主立った者達を集めたうえでそう語った。
「大介君達がもうすぐ日本にやって来る」
「それは本当ですか!?」
 それを聞いてまず甲児が声をあげた。
「大介さんが来たら百人力だぜ!」
「そうだな。これでマジンガーチームの再結成だ」
 鉄也もここでこう言った。そして二人は会心の笑みを浮かべて頷き合う。
「何だ、そのマジンガーチームって」
 宙がそれを聞いてジュンに問う。
「甲児君と鉄也、そして大介さんの三人で組んでいるチームなの。マジンガー、グレート、そしてグレンダイザーの三機のパイロットでね」
「そうだったのか」
「この前ベガ星連合が攻めて来たでしょ」
「ああ」
「その時に一緒に戦ったのよ。甲児君と鉄也さんと組んでね。凄かったんだから」
「甲児や鉄也だけでもかなりのもんだけれどな」
 それを聞いて竜馬が言った。
「俺達も一緒だったがな。大介は凄いぜ」
「そうなのか」
 宙は隼人の言葉を聞いて声をあげた。
「楽しみだな。一体どれだけ凄い奴なのか」
「外見は穏やかだけれどね」
 さやかがそう注を入れた。
「性格も三人の中では一番まともだし」
「おいさやかさん、それはどういう意味だよ」
「俺が普通じゃないって?」
「・・・・・・自覚がないのかよ、二人共」
 それを横で聞くサンシローが呆れていた。
「普段あれだけ無茶やってるのに」
「無茶はマジンガーの特権だぜ」
「俺はあくまで戦いに専念しているだけだ」
 二人はそれに臆することなくそう答えた。
「まあ大介さんが穏やかなのは事実だけれどな」
「甲児君や鉄也さんにとってお兄さんみたいなものかしら」
「そう言われれば」
「俺なんかよくフォローされてたしな」
「それを聞くと中々頼りになる奴みてえだな」
「忍もフォローされるかもね」
「沙羅、手前は一言余計なんだよ」
「余計?何処がだよ。本当のことじゃないか」
「何ィ!?」
「まあよせ、二人共」
 ここでナンガやリーが割って入った。そして二人を止める。
「今は喧嘩していい時じゃない」
「チッ」
「フンッ」
 そして二人を別ける。それから話を再開した。
「それで合流場所は」
「うむ」
 大文字はピートの質問に頷く。
「静岡だ。そこで落ち合うことになっている」
「静岡か」
「確かクスハとブリットがいたよな」
 甲児と弁慶がそれを聞いて顔を見合わせる。
「ああ、確か」
「助っ人に来てくれたらいいな」
「ちょっと、それは駄目よ」
 マリが洸とボスに対して言った。
「クスハちゃんもブリット君も猛勉強中なんだから」
「あ、そうだったか」
「そうよ、お医者さんになるんだって。大変みたいよ」
「そうか。なら仕方がないな」
「そうですね。二人に迷惑はかけられませんし」
 神宮寺と猿丸がそれを聞いて頷いた。
「ここは私達が頑張りましょう」
「麗さんの言う通りですね」
 ブンタもそれに同意した。
「結局僕達がしっかりしないと何にもなりませんし」
「そうだよね、俺達がやらないと」
 雅人がその言葉に頷いた。
「そういうとこだな」
 ピートも同じであった。
「グレンダイザーの加入は嬉しいがだからといって気を緩めていいということにはならないからな」
「うむ」
 大文字もそれに頷いた。
「それでは気を引き締めていこう。諸君、いいな」
「了解」
 こうして彼等は静岡に向かった。

「銃を下ろしなさい!」
 暗い司令室で声が聞こえていた。中年の女の声であった。
「勇、どういうつもりなんだ!」
 顎鬚を生やした男が勇に対して問う。勇はそれに対して感情的な声で応えた。
「オルファンが浮上したら人類が滅亡するんだろ!?そんな仕事を手伝うのはもう嫌だ!」
 勇はそう叫んだ。
「貴方はもうリクレイマーになって七年なのよ!オルファン浮上の為に・・・・・・」
「精神も肉体もグランチャーになってアンチボディになるのは辛いんだぞ!」
「勇、冷静に!」
「父さんのせいだ!」
 勇は父である研作にそう叫んだ。
「そのおかげで俺も姉さんも実験体にされたんだ!」
「そんなことはないわ!」
「母さんもだ!」
 今度は母親である翠に対して叫んだ。
「母さんだって姉さんだってここに来てからまるでアンチボディじゃないか!俺はそんな・・・・・・」
 まだ言おうとする。だがここで銃声が轟いた。そして勇の銃が落とされた。
「姉さん!?」
 勇は銃声がした方へ顔を向けた。そこには赤い髪の凛々しい顔立ちの女が立っていた。服も赤かった。
「裏切り者はっ!」
 今度は勇を撃とうとする。だが研作がそれを止めた。
「待て、依衣子!」
「私は依衣子ではない!」
 だが彼女はその名を否定した。そして言い切った。
「私はクインシィ=イッサー。伊佐末依衣子ではない!」
「くっ!」
 だが勇は彼女がそう名乗っている間に逃げ出した。部屋を駆け去る。
「逃がすか!」
 依衣子、いやクインシィ=イッサーは彼を追う。残された研作と翠は暗澹とした顔で互いに顔を見合わせていた。そして言った。
「これがオルファンの意思でしょうか」
「そうなのか・・・・・・!?」
 それは彼等にはわからなかった。だが時の歯車が動いていることだけは確かであった。
 勇はそのまま青いマシン、いやヒメ達が乗っていたのと同じものに乗り込んだ。そしてそれに語りかけた。
「付き合ってくれるな」
 そして彼は空に出た。そのまま何処かへ向かって行った。

 静岡は日本の東海地方にある都市である。昔から豊かな場所として知られ戦国時代には今川家が所有していた。今川家は源氏の名門であり室町幕府においては将軍の継承権すら持っていた。その中でも今川義元は有名であるが彼は東海においては傑物として知られていた。
『東海一の弓取り』
 これが彼に付けられた仇名であった。彼はその名の通り軍事と政治に功績を残した。これは彼の軍師であった太原雪斎の力に拠るところも大きかった。彼は高僧であり教養も備えた人物であったが勇気も持っていた。戦になっては自ら法衣の上に鎧を着て戦場を駆け巡った。当時としては普通のことであったが恐るべき男であった。なお彼は義元、そして徳川家康の師匠でもある。優れた教師でもあったのだ。
 その大原の補佐もあり義元は東海に大きな勢力を誇った。また本拠地である駿府には都落ちした公家達を迎え入れ京に似せて整備し公家達と親しく交わった。義元は京文化への造詣が深く、眉を丸めてお歯黒をしていた。そして髷も公家風であったのだ。
 そんな義元であったが上洛を目指して尾張に攻め込んだ。そしてまずはそこにいる織田信長を倒そうとした。しかしこれが大きな失敗となった。
 田楽挟間で休息をとっているとそこに織田軍が奇襲をかけてきたのだ。これにより義元は戦死し今川家は衰退した。そして駿河は武田、後には徳川家のものとなった。徳川家康の隠居の地もここであった。以後駿河は幕府のお膝元として発展していくことになる。
 茶や蜜柑で有名であり任侠の徒がいたことでも知られている。清水次郎長はとりわけ名の知られた人物であろう。その静岡で今清水一家程ではないが大掛かりな喧嘩がはじまろうとしていた。
「勝平、今日こそ決着をつけてやるぜ」
 中学生らしき浅黒い肌の少年がまだ幼さの残る顔立ちの少年に対して挑発的な言葉をかけていた。
「へっ、それはこっちの台詞だぜ」 
 その少年も負けてはいなかった。怯まずにそう言い返す。
「香月、観念しろよ」
「観念するのは手前だぜ」
「勝平、頑張ってね」
 それを離れたところから二人の少女が見ていた。
「負けたら許さないからね」
「おう、わかってるぜ」
 勝平はそんな彼等に声を送った。
「アキとミチはそこで見てな」
「ええ」
「わかったわ」
 黄色い髪の少女と太った少女は勝平にそう言われて頷く。そして彼を見守るのであった。
「もう勝平君たら」
 そこに青いショートの髪の高校生位の少女が現われた。オレンジの服に黒のミニスカート、スパッツを着ている。目も青い。可愛らしい顔立ちの少女であった。
「また喧嘩なんかして」
「クスハ、それは言わない方がいいぜ」
 その後ろに金髪に青い目のキリッとした顔の少年が来た。
「ブリット君」
「あの年頃ってのはヤンチャな頃だからな」
「そうかしら」
「そういうもんさ。俺だってそうだったし」
 ブリットは笑いながらクスハに対してそう答えた。
「だから心配しなくていいさ」
「けれど怪我したら」
「その時はその時。手当てすればいい」
「そんな悠長なこと言ってていいの?」
「いいさ。どのみち戦いに比べたらましだろう」
「それはそうだけれど」
 戦いと聞いてクスハは頷くしかなかった。
「けれど心配よ。勝平君って中学生なのに平気でバイク乗り回すし」
「それは洸君だって同じだろ」
「洸君は違うわよ。彼はあれで慎重だし」
「まあな。しかし何で彼等は中学生なのにバイクに乗れるんだ?」
「知らない。考えない方がいいんじゃない?」
「ううむ」
 そんな話をしながら二人は勝平と香月の喧嘩を見守っていた。二人は徐々に間合いを詰めていく。
「覚悟しろ」
「そっちこそな」
 睨み合っていた。だがここで異変が起こった。
「ん!?」
 何と沖の方に怪しげなロボットが出て来たのだ。勝平達はそれを見て動きを止めた。
「ありゃ何だ!?」
「こっちに来るぜ」
 香月もアキとミチ、ブスペアもそれを見て怪訝そうな顔をした。だがクスハとブリットは違っていた。
「ブリット君、あれ」
「わかってる」
 ブリットはクスハの言葉に頷いた。そしてすぐに動いた。
「恐竜帝国かミケーネか。どっちにしろ危険だ。あれを出そう」
「ええ」
 そして二人は何処かへ向かった。勝平達もすぐに我に返った。
「おい、どうやら喧嘩どころじゃねえぞ」
「そうみたいだな」
「香月、今日のところはお預けだ」
「わかってる、またな」
 そして二人は別れそれぞれの家に戻った。ブスペアも家に帰っていった。
 勝平は家に帰るとすぐに居間に向かった。そして家族に対して声をかけた。
「おい爺ちゃん大変だよ!」
「わかっている」
 いかめしい顔付きの白髪頭の老人がそれに答えた。勝平の祖父である神北兵左衛門であった。
「遂に時が来たな」
「はい」
 口髭を生やした中年の男がその言葉に頷いた。
「勝平、遂にこの時が来たぞ」
 彼は勝平の父である。神源五郎という。
「父ちゃん、それどういう意味だよ」
「詳しく話している時間はない。まずはこれを着ろ」
 ガタイのいい学生服の少年がそう言って勝平に服を与えた。そしてすぐに着替えさせる。
「一太郎兄ちゃんまで・・・・・・。何だよこの服」
 勝平は着せられたその服を見て思わず声をあげた。
「幕張でも行くのかよ」
「詳しく話している時間はない。早く行け」
 そして家の庭に連れて行きそこにある穴に入れた。その時別の者も入ってしまった。
「ワン!」
「しまった、千代錦も入れてしまったわい」
 こうして勝平と千代錦は穴の中を落ちて行った。そして何やら白い部屋に出て来た。
「ここは」
「勝平、聞こえるか」
 兵左衛門の声が入って来た。通信であった。
「爺ちゃん」
「そこはザンボエースのコクピットの中だ」
「ザンボエース!?」
「そうだ。我がビアル星人のロボットだ。御前は今からそれに乗って戦うのだ」
「ビアル星人!?戦う!?」
 しかし勝平は言葉の意味をよく理解してはいなかった。首を傾げていた。
「一体何言ってるんだよ」
「まず言おう。わし等は地球人ではない」
「えっ!?」
 勝平はそれを聞いて思わず声をあげた。
「二百年前ガイゾックに故郷を滅ぼされたビアル星人の生き残りなのだ」
「嘘だろ」
「嘘ではない。そして今ガイゾックが地球にやって来たのだ」
「それがあのロボットなのか」
「そうだ。ガイゾックは遂に地球へとやって来たのだ」
「ところでそのガイゾックって何なんだよ。さっぱりわかんねえんだけれど」
「宇宙の破壊者といったところか。文明を破壊して回る者達だ」
「何か物騒な連中だな」
「奴等はかってビアル星を滅ぼした。そして今度は地球を滅ぼそうとしているのだ。我等はそれに対して戦わなくてはならん」
「それで今俺がこれに乗ってるってわけね」
「そうだ。勝平、それでは出撃しろ」
「っていきなり言われても俺ロボットの操縦なんかできねえぜ」
「いや、できる」 
 兵左衛門はそれに対して答えた。
「御前ならできる。まずはレバーを持ってみろ」
「そんなこと言われてもなあ・・・・・・あれ!?」
 勝平はレバーを持ってみてあることに気付いた。
「わかる・・・・・・操縦の仕方がわかる。何でだ!?」
「それは睡眠学習のおかげだ」
「睡眠学習!?」
「そうだ、こんな時が来るだろうと御前が寝ている間に睡眠学習を施しておいたのだ。だから御前はそのマシンを操縦できるのだ」
「何か話が出来過ぎてるなあ」
「ぼやいている暇はないぞ、勝平」
 ここで一太郎の声も入ってきた。
「兄ちゃん」
「もうガイゾックの奴等がそこまで来ている。すぐに出撃するんだ」
「ああ、わかったよ。じゃあ」
 勝平はそれを受けてレバーを動かした。そしてマシンを動かした。
「じゃあ行って来るぜ!」
「うむ、行け勝平!そしてガイゾックの奴等を防ぐのだ!」
 こうして海の中から赤い戦闘機が姿を現わした。
「よし、出たぜ」
「うむ」
「ところでこのマシン何て名前だい?」
「ザンバードという」
「ザンバード!?」
「そうだ。それが我々の切り札だ」
「ガイゾックへのか」
「うむ。そしてそれは変形も可能だ。やり方はわかるな」
「ああ」
 彼はその言葉に従いスイッチを入れた。そして人型に変形させた。
「これでいいんだな、爺ちゃん」
「うむ」
「これは何て名前なんだい」
「ザンボエースという」
「ザンボエース」
「そうだ。まずはその形になっておけ。戦いにはその形の方が有利だ」
「了解」 
 二人が通信でそう話している間にガイゾックのマシンが近付いてきた。
「あの鳥みたいな奴だな!?」
「そうだ」
 兵左衛門は彼にそう答えた。
「慎重にな。まだ御前は乗って間もない」
「そんなこと言ってちゃ勝てないんじゃないの!?」
「それは違う」
 だが彼はここでそう言って孫を嗜めた。
「今は足止めだけにしておれ」
「?何でだよ」
「すぐにわかる、すぐにな」
 彼はそう答えるだけであった。ガイゾックのメカはまるで空と海を埋め尽くさんばかりの数で静岡に迫ってきていた。しかし勝平はそれを見ても怖気づくことはなかった。
「どれだけ来ても相手にはならないぜ!」
「待て、勝平!」
 だがここで声がした。そして戦車と爆撃機が姿を現わした。
「ん!?」
 モニターに映像が入った。そこには彼がよく知っている顔が二つあった。
「東京の宇宙太に長野の恵子じゃねえか。御前等も乗っていたのか」
「そうだ。二人にもこの時に備えて睡眠学習を施しておいた」
 兵左衛門はまた言った。
「俺が乗っているのはザンブルだ」
「あたしのはザンベースと」
 長い髪で顔の半分を隠した少年と長い金髪の少女がそう言った。少年は神江宇宙太、少女は神北恵子である。二人は勝平の従兄弟にあたる。
「そしてこの三機が合体した時に本当の力が発揮される」
「本当の力!?」
「そうだ」
 兵左衛門は頷いた。
「三機のマシンが合体した時にザンボット3となる。今がその時だ」
 その通りであった。もうガイゾックはすぐそこまで迫っていた。時間はもうなかった。
「行くぞ、勝平」
「時間はもうないわ」
「何かあまり話している場合じゃないみたいだな、よし」
 勝平も状況を理解した。そして三機のマシンは集結した。
「よし、行くぜ!」
「ワン!」
 ここで勝平の横にいた千代錦が一声鳴いた。
「ツー!」
 宇宙太がそれに続く。
「スリー!」
 そして恵子が。それを受けて三機のメカが飛んだ。
「ザンボットコンビネーションだ!」
 勝平が叫ぶ。三機のメカが並んで空を駆ける。その形を変えながら。
 ザンブルに二本の腕が現われた。そしてザンベースが脚になる。それが合身する。
 そしてザンボエースがザンブルの上に来た。それで三体が合体した。
 そして武者の様なシルエットの巨大なマシンが姿を現わした。それは大空に立っていた。
「これがザンボット3」
「そうだ」
 兵左衛門は三人にそう答えた。
「そのマシンでガイゾックを倒せ、そして我等の第二の故郷を守るのだ。よいな!」
「よし、行くぜ宇宙太、恵子!」
「あまり熱くなるなよ勝平」
「短気は損気よ」
「わかってらい!」
 彼はそれに答えた。そしてそのままガイゾックのマシン達に向かって突き進む。まずは両膝の脇からミサイルを放った。
「バスターミサイル!」
 それでメカブーストを一機撃墜した。だが敵はまだいる。今度はその円盤自体を投げつける。
「ザンボットバスター!」
 また敵を砕く。敵が近付くと小型の剣を抜いた。
「今度はこれだ!ザンボットクラップ!」
 敵の中に入ると次々と切り裂いていく。そしてガイゾックを倒していく。
 だが一機ではやはり限界があった。次第に敵に囲まれてしまった。
「おい、ここは退くぞ!」
「宇宙太、何でだよ!」
「敵の数を見ろ!これだけの数を一度に相手にできるかよ!」
「そんなのやってみなくちゃわからないだろ!」
「わからねえのは御前が馬鹿だからだろうが!落ち着け!」
「馬鹿とは何だこの野郎!」
「二人共何やってんのよ!」
 口論をしながらも何とか敵を倒していく。勝平も不利を悟ったのか宇宙太野言葉に従い一先敵の中から逃れようとした。だがその時であった。
「そこのロボット、無事か!」
 丸い円盤に似た形のマシンが姿を現わした。二機の戦闘機を引き連れている。そのうちの一機は普通の戦闘機だがもう一機はドリルが備わっていた。
「あれは」
「グレンダイザーか!」
「ダブルスペイザーにドリルスペイザーも!」
 三人は三機のマシンを見て思わず声をあげた。
「今からそちらに向かう!持ち堪えてくれ!」
 その円盤型のマシンは人型に変形した。それは何処かマジンガーに似たシルエットであった。その中には戦闘用の宇宙服に身を包んだ茶の髪の青年がいた。
「了解!」
「まさかグレンダイザーとデュークフリードが来るなんてな」
「僕だけじゃない」
 ここでデューク、すなわち宇門大介から通信が入ってきた。
「え!?」
「こちらに大空魔竜隊が向かって来ている。僕との合流の為に」
「大空魔竜隊が!?」
「そうだ。だからもうすぐの我慢だ。いいね」
「何かすげえことになってきたな」
「全くだ。まさかあの精鋭部隊が来るなんてな」
「もしかしたらマジンガーやゲッターを見れるのかしら。何か夢みたい」
「夢じゃない、本当のことなんだよ」
 大介はここで三人に対して言った。
「君達への脱出路は僕が作る。今そちらに向かう」
 ダイザーと二機のスペイザーがザンボットの方にやって来た。
「頼むよ。ひかるさん、マリア」
「わかってるわ、大介さん」
「任せてよ、兄さん」
 茶色い髪の大人しい感じの女性と赤茶色の長い髪の美少女がそれに答えた。牧葉ひかると大介の妹グレース=マリア=フリードであった。二人共ベガ星連合軍との戦いにおいて大介の補佐を務めた女戦士であった。とりわけマリアの操縦はかなりのものであった。
「行きましょう、ひかるさん!」
「ええ、マリアちゃん!」
 二人はスペイザーの高度を上げた。そしてガイゾックのマシンに攻撃を仕掛ける。
「これならっ!」
「よけてごらんなさい!」
 それぞれミサイルを放つ。それにより敵を倒す。そして道を開けた。
「よし!」
 大介がそこに入る。そして両手に斧を持ち、それを合わせた。
「ダブルハーケン!」
 ダブルハーケンを振り回しながら斬り込む。そして敵を次々と薙ぎ倒していく。これでザンボットの道を開けた。
「さあ、行くんだ!」
「すまねえ!」
 ザンボットはそれを受けて抜け出た。だがそこにガイゾックがさらに襲い掛かる。だがその前にはグレンダイザーが立ちはだかっていた。
「そうはさせない!」
 ダイザーはさらに攻撃を仕掛けた。
「反重力ストーーーームッ!」
 七色の光を放った。それにより敵をさらに倒す。スペイザーもそれを援護する。
 態勢を立て直したザンボットも反撃に転じる。そこにまた味方がやって来た。
「クスハ、行くぞ!」
「うん!」
 青い龍のマシンと白い虎のマシンが姿を現わした。それは一度天高く飛ぶと空中で合体した。そして龍人となった。
「これなら!」
 龍虎王となった。かってバルマー帝国を退けた伝説のマシンである。
「おい、龍虎王まで出て来たぜ!」
「見えてるからそう騒ぐな」
 龍虎王を見て騒ぐ勝平に対して宇宙太が言う。
「しかし何か凄いことになってきたわね、本当に」
「そんなこと言っている場合じゃないぞ」
 そんな三人を大介が嗜めた。
「今は目の前の敵を倒すことに専念するんだ、いいね」
「おお、わかったぜ。ガイゾックの奴等をやっつけるぜ」
「ガイゾック・・・・・・そうか、この敵の名前か」
「ああ、地球を破壊しに来た悪い奴等なんだ。宜しく頼むぜ」
「ガイゾック・・・・・・。クスハ、知っているか」
「いいえ」
 クスハはブリットの問いに首を横に振った。
「兄さん、何か知ってる?」
「僕も」
 大介もマリアの問いに首を横に振っていた。やはり彼等もそれを知らなかったのだ。
「ガイゾックは宇宙の文明の破壊者ですじゃ」
 ここで兵左衛門が彼等に対しそう答えた。
「文明の破壊者?」
「じゃあ宇宙怪獣のようなものか」
「そうですな」
 彼はここでそれに頷いた。白い髭が揺れた。
「確かに似ておるのかも知れません。我等ビアル星人の故郷は彼等に滅ぼされましたしな」
「それは聞いたことがあります」
 大介がそれを聞いてそう答えた。
「原因不明の滅亡だったと聞いておりますが」
「左様です」
 兵左衛門はその言葉にまた頷いた。
「ある日突然彼等が来まして。それで瞬く間に・・・・・・。でした」
「そうだったのですか」
 それを聞く大介とマリアの顔が曇った。
「ここにも僕達と同じような人達がおられたとは」
「貴方達は確かベガ星連合軍に滅ぼされたでしたな」
「はい」
「似た様な境遇ではありますな。ですが傷を舐めあっている暇はありません」
「わかっています。今は」
 彼等はガイゾックに再び目を向けた。意を決した目であった。
「そのガイゾックとやらを倒しましょう、そして地球に平和を」
「はい、勝平、宇宙太、恵子」
 兵左衛門は三人に声をかけた。
「わかっているな」
「勿論だよ、任せておけよ、爺ちゃん」
 勝平が三人を代表してそう答えた。
「そこで見ておきな、俺達が戦う姿をな」
「うむ、期待しておるぞ」
 そこでモニターを切った。勝平達が戦闘に専念できるようにであった。そして三人はまた戦いに向かった。兵左衛門はそれを見上げていた。その横にいる年老いた老女が心配そうに呟いた。
「勝平達は大丈夫ですかね」
 彼の祖母神梅江であった。
「大丈夫でなければならない」
 兵左衛門はそれに対して強い言葉でそう答えた。
「これから三人を過酷な運命が待っている。それを考えるとな」
「それはわかっているつもりですが」
「わし等もだ」
 そして自分達に対しても言った。
「我等神一家の戦いがはじまったのだ。わかっておるな」
 そして源五郎と一太郎に顔を向けた。
「はい」
「勿論です」
 二人はそれに頷いた。
「キングビアルを発進させよ。だがあの三人とは別行動を取る」
「何故ですか!?」
「すぐにわかる」
 彼は周りの者の問いにそう答えるだけであった。そしてまた言った。
「他の者達も来ておるな」
「はい、信州と東京から」
「皆集まっております」
「よし」
 それを聞いて満足そうに頷いた。
「ではわし等も行こう。そしてガイゾックを退けるのだ」
「はい!」
 彼等も家を出た。そして何処かへと向かったのであった。
 ザンボット達とガイゾックの戦いは続いていた。彼等は少数ながらガイゾックのメカを上手く退けていた。
 龍虎王が剣を振りかざす。そして敵を一刀両断した。
「龍虎王最終奥義!」
 クスハが叫ぶ。龍虎王は剣を大きく振りかぶる。
「龍王破山剣、逆鱗斬!」
 そしてガイゾックのマシンをまとめて叩き切った。続いて大介が動く。
「スペースサンダー!」
 グレンダイザーの二本の角に雷を溜める。そしてそれを放つ。それにより敵を数機単位で粉砕した。
「何かすげえな、両方共」
「勝平、そんな悠長なこと言っている場合じゃねえぞ」
「そうよ、こっちだって敵をまとめて倒す方法あるでしょう」
「まとめて?ああ、あれね」
 勝平はそれを言われて頷いた。
「んじゃあああれをやるか」
「おお、早くやれ」
「こっちはもう準備できてるわよ」
「よし!」
 ザンボットが大きく動いた。そして力を溜める。胸が開いた。
「ブルミサイルだっ!」
 開いた胸からミサイルが放たれた。そしてそれはそれぞれ敵に向かう。
 敵が数機単位で撃墜される。恐るべき武器であった。
「へへっ、どんなもんだい!これがザンボットの力だ!」
「おい、これは俺のザンブルに搭載されているやつだぞ」
 宇宙太が得意になる勝平にそう突っ込みを入れた。
「わ、わかってらい!」
「どうだかな」
「二人共、止めなさいよ」
 喧嘩になりそうなところで恵子が止める。そしてさらに攻撃を続けた。
 戦局は次第にザンボット達の方に傾いてきていた。だがここでガイゾックの後方に巨大なメカが姿を現わしたのであった。
「おい、あれは何だ!」
 まず宇宙太がそれを見て叫んだ。

「何だありゃ。土偶か!?」
「確かにそっくりね」
 クスハもそれに同意した。
「あれ、その声はクスハ姉ちゃん!?」
 勝平はその声を聞いて龍虎王のモニターにスイッチを入れた。
「やっぱり。それにブリット兄ちゃんまで。どうしてそれに乗ってるんだよ」
「勝平君こそ。貴方がそのロボットに乗ってるなんて」
「まあ色々と事情があってね。しかし姉ちゃんが龍王機のパイロットだったなんてなあ」
「意外だった?」
「ああ。普段おしとやかな姉ちゃんしか知らないから余計に。ブリット兄ちゃんは不思議じゃないけれど」
「俺はいいのか」
 ブリットはそれを聞いて思わず苦笑してしまった。
「そう思うけれど」
「お話の途中で悪いけれど」
 ここでマリアが入って来た。
「それは後でゆっくりとした方がいいわよ」
「おっと、そうでした」
「あの土偶ね」
「ええ」
 マリアは勝平とクスハにそう答えて頷いた。
「あれを何とかしなくちゃ。何かまたマシンを一杯出してるし」
「そうだな。さて、どうするか」
 大介が呟いたその時であった。彼等の後ろに青い巨大な恐竜が姿を現わした。鉄の巨人達も一緒であった。
「あれは!」
「甲児君と鉄也君か!」
「おう、大介さん久し振りだな!」
「戦闘があると聞いてきてみればやはりな」
 甲児と鉄也はすぐにグレンダイザーのところにやって来た。そして攻撃を開始した。
「スクランダーカッタァーーーーーーッ!」
「マジンガーブレーーーードッ!」
 そして敵を切り裂く。その間に大空魔竜隊のマシンが出て来た。
 そのマシン達が空と大地を駆りガイゾックに向かって突き進む。ダンクーガが剣を抜いた。
「空なる我もて敵を討つ・・・・・・」
 忍は剣をかざして神経を集中させる。
「いけえええええ、断空光牙剣!」
 それで敵を薙ぎ払った。それにより数機を両断した。
 他のマシンも続く。そしてガイゾックのマシンを次々に倒していく。それを見て勝平達は呆然としていた。
「すげえ、滅茶苦茶強いじゃねえか」
「そうだな、噂だけはある」
「けれどあたし達もそんな悠長なこと言ってられないわよ」
「あ、ああ、そうだったよな」
 勝平は恵子の言葉に我に返った。
「じゃあ俺達は俺達で頑張ろうぜ」
「勝平、俺に考えがある」
 ここで宇宙太が勝平に対して言った。
「ん、何だよ宇宙太」
「あれをやるぞ」
 彼は後方にいる土偶に似た巨大なメカを指差した。
「あれをか?」
「そうだ。あれは多分敵の母艦だ。あれをやれば戦争のカタがつく」
「ふうん、どいつもこいつもぶっ倒せば終わりじゃねえんだな」
「これは戦争だからな、喧嘩とは違う」
「同じようなもんじゃねえのか」
「全然違うわよ」
 恵子がそれを聞いて呆れたような声を出した。
「そんなので大丈夫なの?」
「何言ってるんだ、俺に任せておけば大丈夫」
「ホントかしら」
「凄く不安だな。だが今はそんなことを言ってる暇はねえ」
 宇宙太はそこで話を終わらせた。そして自分の話を再開する。
「丁度敵の数も減ってきた。行くなら今だぜ」
「そういえばそうだな」
「目の前が開けてきたし」
 大空魔竜隊の攻撃を受けたからであろう。ガイゾックはその数を大きく減らしていた。彼等にとってはそれが大きなチャンスであったのだ。
「よし、一気に行くぜ」
「おう」
「頼んだわよ」
 二人は勝平に判断を任せることにした。
「あの土偶をやる。遅れるなよ」
「一緒の機体に乗ってるのに何で遅れるんだよ」
「しっかりしてよ」
「悪い悪い、それじゃあまあ気を取り直して」
 勝平はあらためて言う。
「ザンボット、ゴーーーーーッ!」
 ザンボットを突進させた。前にいる敵は皆その手にある剣で倒していく。
「ザンボットカッターだ!」 
 血路を開き土偶の前に来た。するとそこから声が聞こえてきた。
「フォフォフォ、蚊が一匹来よったわ」
 低い男の声であった。
「蚊なんかじゃねえぞ、ザンボット3だ!」
 勝平はそれを受けて叫んだ。
「ザンボット?また変な名前じゃのう」
「御前等に滅ぼされたビアル星のマシンだ!忘れたとは言わせねえぞ!」
「ビアル?はて、知らんのう」
 だが男の声はここでとぼけた答えを出してきた。
「一体何を言っておるのかのう」
「この野郎、しらばっくれるつもりか!」
「わしはそんなことは知らぬ。ついでだから教えてやろう」
「何?」
「わしの名はキラー=ザ=ブッチャーという」
 そしてここで青い顔をしたスキンヘッドの醜い巨人の顔が空に映し出された。彼がブッチャーであるのはもう言うまでもないことであった。
「ゲ、何て顔だ」
「あんな顔ははじめて見たわ」
「フォフォフォ、わしの顔に見惚れておるな」
 彼は大空魔竜の面々の言葉を聞いて笑った。彼等は自分の美しさに驚いているとばかり思っているのだ。
「愉快愉快。そしてこの母艦じゃが」
「土偶だろ」
「土偶などではない。これはバンドックというのじゃ」
「バンドック?また変な名前だな」
「ああ。このおっさんの顔と同じだな」
「ぬ、今言ったのはそこの小僧か」
 彼は宇宙太の言葉に気付きすぐに声を向けて来た。
「ああ、俺だぜ」
 宇宙太はそれに悪びれず言葉を返した。
「じゃあ他に何て言えばいいんだ、教えてくれよ」
「ナイスガイとかそんな言葉があるじゃろうが!許さんぞ!」
「・・・・・・何処がナイスガイなんだよ」
「ほんと。どっかの悪役レスラーそっくりじゃない」
 恵子もそれを聞いてそう呟いた。
「恵子ちゃん」
 そこにクスハが突っ込みを入れてきた。
「あの人本当は凄く優しい人なのよ」
「あ、そうだったんですか」
「その通り」
 ゼンガーも話に入って来た。
「アドタブラ=ブッチャー、真に人の心を持つ漢だ」
 彼は語りはじめた。
「彼は間違っても弱い者に拳を振り上げたりはしない。だが貴様はどうだ」
 何時の間にか彼はバンドックの前に来ていた。
「武器も持たぬ市民達をその手にかけようとした。その無法、断じて許さぬ」
「それが悪いことなのかのう」
「何っ!」
 ゼンガーだけではなかった。それを聞い全ての者が怒りの声をあげた。
「それこそが戦争ではないのか。何を甘いことを言っておるのじゃ」
「手前、それでも人間か!」
「わしは人間などではないわ」
 甲児の怒りの言葉もさらりと受け流した。
「わしはガイゾックじゃ。よおく覚えておくがいいわ」
「ああ、今ので完全に覚えたぜ」
「そうだな。ガイゾック、許してはおけん」
 鉄也と大介もその言葉に怒りを含んでいた。
「甲児君、怒りはわかるがここはそれを彼等にぶつけるんだ」
「ああ、わかってるぜ大介さん」
 彼も歴戦の戦士である。それはよくわかっていた。
「やってやるぜ、こんな奴等一人残らずぶっ潰してやる」
「当たり前だよ。忍、手加減するんじゃないよ」
「何か沙羅まで怒っちゃったね」
「当然だな」 
 ダンクーガもそれは同じであった。そしてジーグも。
「ミッチー、わかってるな」
「ええ、宙さん」
「この連中だけは何があろうと叩き潰すぜ」
「後ろは任せておいて」
「マッハドリルだ、頼む!」
「ええ!」
 ビッグシューターからドリルが発射される。ジーグはそれを受け取ると天高く飛び攻撃を開始した。
「喰らえっ!」
 それでもって前にいる敵を貫く。これが合図となった。
 彼等の攻撃がさらに激しくなった。先程のブッチャーの言葉が火をつけた形となっていた。バンドックにも攻撃が加えられていた。
「これでも受けやがれっ!」
 ザンボットがミサイルを放つ。それでバンドックにダメージを与える。だがそれでもバンドックは殆どダメージを受けてはいなかった。
「ん~~~、今何かしたか?」
「チッ!」
「落ち着け」
 激昂する勝平をゼンガーが制止した。
「感情的になっても何にもならん」
「しかし」
「いいか」
 だが彼は勝平の言葉を遮って話を続けた。
「一気にいくんだ。御前の最大の力を奴にぶつけろ」
「最大の力を」
「そうだ」
 彼は言った。
「一撃必殺だ。それで以ってあのバンドックを倒せ。いいな」
「ううむ」
「勝平、あの人の言う通りにした方がいい」
 ゼンガーの言葉にまず賛成したのは宇宙太であった。
「チマチマやっててもラチがあかねえぜ」
「それもそうね」
 恵子もそれに同意した。
「勝平、あれをやったら?」
「あれか」 
 彼にはそれが何かよくわかっていた。
「そうだ、あれしかねえぞ」
「一気に仕留めるならね」
「わかった」
 彼もそれに頷いた。
「じゃあ一気にやってやるぜ。宇宙太、恵子、いいな」
「おう」
「こっちはいいわよ」
「よし!」
 それを受けて勝平はザンボットの全身に力を込めさせた。特に両腕にエネルギーがこもる。
「行くぜ・・・・・・」
 両手を構える。そのエネルギーがサンボットの額の三日月に集中される。
「ザンボットムーンアタァーーーーーック!」
 そこからエネルギーが放たれる。三日月型となりバンドックに放たれた。それは螺旋状に回転しながらバンドックに向かっていった。
 直撃した。その後ろに三日月が見えた。
「やったか!」
「ぬうう、まだまだ」
 だがそれでもバンドックは沈んではいなかった。大破こそしていたもののそれでも宙に浮かんでいた。
「この程度でわしを倒せると思わんことじゃな」
「糞っ、しぶとさだけは一人前かよ!」
「ならば俺が!」
 ゼンガーが前に出る。そして巨大な剣を取り出した。
「これで今一度!」
「おっと、二度も同じ手はくいはせんぞ」
 だがブッチャーはここでバンドックを後方に下がらせた。周りをガイゾックのメカで取り囲ませる。
「メカブーストよ、我が周りを取り囲むのじゃ」
「おのれ、卑怯な!」
「フン、卑怯だからどうしたというのじゃ」
 ブッチャーはゼンガーの言葉を鼻で笑ってみせた。
「わしは目的さえ達成できればそれでいいのじゃからな」
「それを外道という」
「外道?褒め言葉じゃのう」
 やはり彼はそう言われても悪びれるところがなかった。平然としていた。そして言葉を続けた。
「少なくとも偽善者ではないわ」
「まだ言うか!」
 ゼンガーは攻撃を仕掛けようとした。しかしそれより前にバンドックは退いていた。
「今日のところは貴様等の勝ちにしておいてやろう」
「クッ!」
「じゃが忘れるな。貴様等は所詮滅びる運命じゃということをな。フォフォフォフォフォ」
 そしてバンドックとガイゾックは姿を消した。静岡は再び平穏になった。だが彼等の心は平穏にはならなかった。
「あのガイゾックってのは何者なんだ?」
 サンシローが首を傾げながら他の者に尋ねた。
「ううむ、わからん」
 リーにもそれはわからなかった。
「見たところあのバンドックとかいうのは土偶みたいですけれどね」
「土偶?」
 ヤマガタケがブンタの言葉に問うた。
「あの教科書なんかに出て来たあれか」
「そうだ」
 ピートがそれに答えた。
「あれは確か宇宙人をモデルにしたのではないかという説があったな」
「流石によく知っているな」
「まあな。これは本で読んだ」
 ピートは神宮寺の問いにそう答えた。
「といっても多少オカルトが入った本だったが」
「だがそれがあながち間違いではないみたいだな」
 サコンがここで大空魔竜の艦橋に出て来た。
「サコン」
「あのガイゾックというのもどうやら宇宙から来た勢力のようだしな」
「何でそれがわかるんだ?」
 隼人が彼に問うた。
「形でだ。恐竜帝国やミケーネのものとは明らかに違う」
「確かにな」
「あのバンドックにはブーストのようなものまであった。それを見るとな」
「その通りですじゃ」
 ここで巨大な三機の船が空に現われてきた。
「爺ちゃんか!?」
「うむ」
 兵左衛門の声がした。彼はここでガイゾックについて大空魔竜隊の面々に語った。
「成程、お話は窺いました」
「はい」
 兵左衛門は大文字の言葉に頷いた。
「何時かこの日が来るとは思っておりましたが」
「はい。聞くところによるとどうも宇宙怪獣に近い存在のようですな」
「宇宙怪獣?ああ、あれか」
 勝平は話を聞いて途中で想い出して納得した。
「そういえばそうだな」
「そうです。それでお願いがあるのですが」
「何でしょうか」
「この三人とザンボットをそちらで預かって頂きたいのですが」
「宜しいのですか?そちらも大変でしょうに」
「何、こちらにも戦力はありますから」
 兵左衛門はそう答えて笑った。
「このキングビアルは元々宇宙船でしてな。装備もかなりのものなのです」
「そうなのですか」
「ですからこちらのことはお構いなく。むしろそちらの方が大変でしょうから」
「ただ、問題がありますぞ」
「それは」
「あまり大声では言えないのですが今この環太平洋区の連邦軍は」
 それが三輪を指しているということはもう言うまでもないことであった。
「それはわかっております」
「やはり」
「ですが我々も戦わないわけにはいきません」
「そうですか。しかし」
「しかし」
「何故貴方達は戦われようとするのです?御言葉ですが民間人であるのに」
「博士」
 ここで兵左衛門は声を引き締めた。
「はい」
「我々はかって戦いを放棄しておりました」
「所謂平和主義ですな」
「そうです。しかしそれが為にガイゾックに滅ぼされました」
「そうだったのですか」
「その時我々は悟ったのです。時として戦わなくてはならないと」
「それは同感です」
「そう、貴方ならおわかりだと思います」
 彼にも大文字のことはよくわかっていた。だからこう言えたのである。
「我々はこの時が来るのがわかっておりました。そしてその時が遂に来たのです」
「戦う時が」
「そうです。だからこそ我々はこのキングビアルでガイゾックと戦います」
「わかりました」
 大文字はそこまで聞いて頷いた。
「それでは我々と共に」
「いえ」
 だが彼はそれには首を横に振った。
「大変有り難いですが」
「何故ですか」
 大文字はその態度に首を傾げた。
「共に戦われた方が何かと都合が良いでしょう」
「それも一理あります」
 兵左衛門もそれには同意した。だがそれでも彼はあえて違う道を採ったのだ。
「しかし私は別の考えを持っております。それが為に貴方達、そして勝平達と行動を別にします」
「宜しければその理由をお聞かせ下さい」
「はい」
 彼は頷いた。そして語りはじめた。
「成程、そういうことですか」
「はい。ロンド=ベルならば問題はないと思います」
「確かに。ブレックス准将は話がわかる方です。それに今あの部隊は少しでも戦力が必要ですからな」
「それも防衛用の。何でもラー=カイラムやアルビオンはティターンズ達の相手で出撃しているようですし」
「よく御存知ですな」
「ふふふ」
 兵左衛門は大文字にそう驚かれて笑った。
「こちらにも色々と話は入っておりまして」
「そうでしたか」
「そのうえで今回の判断としたのです」
「しかし敵はガイゾック以外ではありませんぞ」
「それもわかっております」
 彼はまた答えた。
「我々にとって地球は第二の故郷、それを守りたいのです」
 その声はさらに強いものとなっていた。目の光も。大文字はそれを見て彼の心も見た。
「わかりました」
 彼はそう答えた。
「それでは健闘を祈ります。ガイゾックは我々でも相手をします」
「はい」
「これは三輪長官も反対されないでしょうし」
「そうでしょうな」
 兵左衛門はそれを聞いて笑った。
「あの人にとってはどのみちガイゾックも敵です」
「ええ」
 三輪にとっては地球に攻めて来る者は全て敵であった。そういう意味でバルマー帝国も恐竜帝国もミケーネ帝国もそしてガイゾックも同じであったのだ。ある意味非常にわかり易い人物ではあった。
「それを考えると当然でしょう」
「そうですな」
「それでは三人と頼みます」
「はい」
「爺ちゃん」
 ここで勝平が入って来た。
「千代錦はどうするんだよ」
「ワン」
 見れば彼の横には千代錦がいた。尻尾を振って兵左衛門に顔を向けている。
「おっと、忘れておったわ」
「ひでえなあ」
「くぅ~~~ん」
「そうじゃのう。ザンバードに乗り込んだのも何かの縁じゃろうしな」
「じゃあ俺達と一緒だな」
「うむ。それがいいじゃろう」
 彼はほんの少し考えたうえでそう答えた。
「餌は忘れるなよ」
「わかってるって」
 勝平はそう答えた。こうしてザンボットと三人のパイロット、そして犬が大空魔竜隊に新たに加入した。彼等はまた戦力を増強したのであった。
 ザンボットを加えた彼等は次の方向について協議をはじめようとしていた。攻撃目標を定めることを考えていた。
 目標は三つあった。恐竜帝国にミケーネ帝国、そしてガイゾックであった。どれを最初の攻撃目標とするかでまず議論となった。
「とりあえず三輪のおっさんは放っておいていいよな」
 サンシローがまずそう言った。
「そうだな。あのおっさんが絡むと碌なことにならないからな」
 宙がそれに同意する。
「色々と介入してきて作戦が滅茶苦茶になる。幸い俺達はかなりの独立した行動を認められているしな」
「ああ」
 亮とアランもそれに頷いた。
「さしあたってガイゾックだが」
 サコンが口を開いた。
「連中はさっきの戦闘でかなりダメージを受けていると思っていい。実際どれだけ戦力を持っているかどうかまではわからない
がな」
「そうだな」
 ピートがそこで彼に賛同した。
「この前の戦いでもかなり損害を出しているしな。奴等は当分動きを抑えると思う。それにだ」
「それに」
「まだガイゾックのことはよくわかってはいない。奴等に対処するのはもっと情報を手に入れてからだ」
「そうだな。それからでも遅くはないな」
 神宮寺が最初にそれに同意の言葉を述べた。
「話を聞く限りでは宇宙怪獣と同じような存在だがな」
「戦い方はミケーネなんかに近いですけれどね」
 麗がそれに付け加えた。
「とにかく奴等についてはまだ情報が少な過ぎる。侵略者というだけでは他の連中と同じだ。バルマーと?がりがある可能性もある」
「バルマーですか」
「そうだ」
 猿丸に応えた。
「もしかするとだがな。とにかく今はガイゾックは相手にするにはまだ早いと思う」
「そうだな。ミスターの言う通りだ」
 ピートがそれに頷く。
「それを考えるとミケーネか恐竜帝国を叩くのが先か」
「しかしどうもわからないことがあるんだよなあ」
「どうした弁慶」
 竜馬が彼に顔を向けた。
「いや、恐竜帝国って未来の地球にいたよな」
「ああ」
「それが何でここに。今出て来る筈じゃねえだろ」
「未来が変わったからな」
 隼人がそれに答えた。
「未来が変わった」
「そうだ。俺達はあの時シュウを倒して今のこの世界を救った」
「ああ」
「その時に未来も現在も変わったんだ。だから恐竜帝国も今姿を現わしたんだろう」
「そういうことか」
「そうだ。時間の流れは決まっているわけじゃない。幾通りもあるということだろう」
「何か難しいな」
「そういうわけでもないぜ」
 鉄也が弁慶にそう答えた。
「例えばだ」
「ああ」
「俺が目の前の敵を倒したとする。倒さなかったらどうなる」
「こっちがやられるだろ」
「そういうことだ。それだけで未来が変わるだろう」
「まあな」
「それと同じだ。その時の行動によって色々と変わるものなんだ」
「なんだ、そういうことか」
「わかったみたいだな」
「何とかな。そうか、だから連中が今出て来たのか」
「未来を変えたが奴等だがそれによって奴等が姿を現わした。それだけだ」
「成程」
「それと共に敵も増えたのは予想外だがな」
「確かに多いな」
 これは皆が思っていることであった。
「各個撃破していくしかないが」
「まずは何処から」
 ここで通信が入って来た。
「はい、大文字です」
 大文字が出た。声は大人の女のものであった。
「大文字博士ですね」
「はい」
 彼はそれに応えた。
「私が大文字ですが。どなたでしょうか」
「連邦軍の葛城です」
 彼女はそう答えた。
「葛城?」
「葛城ミサト三佐です」
「ああ、あの」
 それは彼もよく知っている名前であった。
「エヴァ計画の。お話は御聞きしております」
「有り難うございます」
「ミサトさん!?」
 それを聞いて甲児達がすぐに反応した。
「確かエヴァは廃棄されたんじゃ」
「そうだよね」
「それがどうして」
 だがそれをよそに通信は続いていた。ミサトは大文字に話を続ける。
「実はお願いがあるのですが」
「はい」
「お願い?何だろうな」
「アムロ少佐は今ロンド=ベルだしな。何だろう」
 彼等はそう囁き合いながら首を傾げていた。ミサトがアムロに対してややミーハーな感情を持っていることはよく知られていることであった。
「今何か作戦行動はおありですか」
「いえ」
 大文字は素直に答えた。
「今丁度それについての作戦会議中だったのです」
「そうでしたか。それでは是非第二東京市に来て頂きたいのですが」
「そちらにですか」
「それも至急に。お願いできますか」
「何かあったようですな」
「それは極秘です」
「ふむ」
 彼はそれを聞いてまた考えた。
「わかりました」
 そしてそう答えた。
「事情はそちらで御聞きしましょう」
「有り難うございます」
「では今からそちらに」
「はい」
 こうして大空魔竜隊は第二東京市に向かった。そこにもまた新たな戦いがあるということはその時は知る由もなかった。

「カナン!」
 日本へ向かう勇に一機のアンチボディが近付いて来た。
「勇、何で相談してくれなかったの!?」
 そこには紫の髪に黒い肌の女が乗っていた。カナン=ギナスであった。彼女は勇と同じリクレイマーであった。
「私もいるよ」
 もう一機いた。そこには茶色のショートの髪の女がいた。
「ヒギンズ=サスか」
「ああ」
 彼女は頷いた。二機のアンチボディは勇の側にやって来た。
「俺をどうするつもりだ」
「どうするって」
「何を考えているんだ、勇」 
 二人はそれを聞いて不思議そうに尋ねてきた。カナンは赤、ヒギンズは黄色のアンチボディに乗っていた。
「あたし達は貴方について来たのよ」
「俺に」
「そうさ」
 カナンの声は熱かったがヒギンズの声はクールであった。
「心配だから」
「心配なのか」
「そうよ。どうして脱走したのよ」
「・・・・・・・・・」
 勇はそれには答えなかった。答えようとしなかった。
「言えないの?」
「済まない」
 そう答えるしかなかった。
「じゃあいいわ。それならそれで」
「姉さんのところへ連れて行くのか」
「いいえ」
 だが二人はそれを否定した。
「そんなつもりはないわ」
「そうか」
「ただ聞きたいことがある」
「聞きたいこと!?」
「ええ」
 二人はそれに頷いた。
「さっきも言ったけれどどうして相談してくれなかったの!?」
「相談したさ」
 彼はそう答えた。
「え!?」
「相談したよ、俺は。ちゃんとカナンにね」
「嘘・・・・・・」
「本当だよ。けれどカナンは自分のことばかり考えていていつも自分のことばかり喋っていたじゃないか」
「そうだったの・・・・・・」
「気付かなかったのかい」
「ええ・・・・・・」
 彼女は力なく頷いた。
「御免なさい、今まで気付かなかった」
「よくあることなんだ、いや」
 勇はここで言葉をかえた。
「人は皆そうかも知れない、俺だって」
「勇も」
「そうだ。だから俺はオルファンを出たんだ」
「そうだったの」
「そしてこれからどうするつもりなんだ」
 ヒギンズが彼に問うた。
「何をするつもりでオルファンを出たんだ」
「それは・・・・・・」
 彼はまた返答に窮することとなった。
「わからない。ただ考えていることがあるんだ」
「考えていること」
「ああ」
 彼はそれに頷いた。
「あの娘に会ってみる」
「あの娘」
「宇都宮比瑪っていう娘だ」
「ああ、あの娘ね」
 カナンはそれを聞いて頷いた。
「会ってどうするんだい?」
「それはまだわからない。ただ」
「ただ?」
「それで何かが変わると思う。俺にはそう思えるんだ」
「何か不安定ね、凄く」
「わかってるさ、それは。けれどそれでも行くんだ」
「どうしても?」
「どうしてもだ。それでどうするんだい?」
 そしてあらためて二人に尋ねた。
「俺を捕まえるのか、それともここで撃墜するか。どうするつもりなんだい」
「そうね」
 まずカナンがそれに答えた。
「一緒に行っていいかしら」
「一緒に!?」
「ええ」
 彼女は答えた。
「その為にここまで来たんだから」
「そうだったのか」
「私もだ」
 ヒギンズもそれに答えた。
「私もカナンと同じ考えだ。いいか」
「ああ」
 勇はそれを認めた。
「一緒に来てくれるならな。俺には異存はない」
「これで決まりね」
「ああ」
 三人は頷き合った。
「じゃあ行こう。あの娘は多分日本にいる」
「ええ」
 三機のアンチボディは日本へと向かった。そしてそのまま消えて行った。


第十四話    完



                                 2005・3・20


 
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