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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)

作者:N-TON
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10.新しい出会いⅡ

10.新しい出会いⅡ



巧side

篠崎大尉との演習から一週間、訓練にも慣れパンサーズの隊員とも連携が取れるようになってきた。戦術機の連携も基本は生身と変わらない。基本的な陣形やそれに伴う定石のようなものはあるが、やることは味方の死角をカバーするということだ。特に俺のポジションは強襲前衛、切り込み隊だ。後方からの支援もあるが、前衛組はシャレにならない数の敵に正面から切り込むために孤立しやすい。高速戦闘機動下でも以心伝心で連携できなくてはならない。しんどいポジションだ。迷惑かけないように頑張らないとな。
 ちなみに俺とエレメントを組むことになったのは前衛組であるB小隊の城井中尉だ。パンサーズの紅一点でショートヘアのスッキリした顔立ちの人だが目つきが悪い。しかも最近気づいたことだが俺のことをやたら睨めつけてくる。正直怖い…。
 エレメントは最小の部隊単位で戦術機はエレメントで一つだ。単機でBETAに突っ込むと速攻で死ぬ。俺は最初にそれをやって隊長にどやされ城井中尉には一発強烈なのを食らった。あれ以降は隊に迷惑をかけるようなミスはしてないと思うのだが…城井中尉はなぜか俺を忌々しく睨んでくる。
 まあとにかく今日も訓練だ。正規部隊というだけあって専用のシミュレーターは多いし、実機演習も訓練校にいたときよりも沢山できる。人間関係も城井中尉を除けば良好だ。今日の食事のときにでも話してみようかな。



 今日の訓練は対BETA防衛戦だ。BETA戦は攻めるのも守るのも難しいが、ミス出来ないという意味では防衛戦の方がプレッシャーがある。無論どんな作戦でもミスなんてできないんだが、防衛戦は『後ろに抜かれてはならない』というのが鉄則だ。大抵の防衛戦では戦術機部隊の後ろには戦車部隊や基地があって、そこをBETAに衝かれると小型種であっても甚大な被害が出る。だから防衛戦は戦術機と支援砲撃で皆殺しにしなくてはならないのだ。
 今回の設定は厚木基地防衛戦。日本海側から上陸した大量のBETAが新潟の帝国軍防衛ラインを突破して来るという設定。大陸の東半分はまだ制圧されていないが、パンサーズは本土防衛軍に組み込まれる予定だからな。
 パンサーズの役割は割り当てられた区域の死守だ。単純な任務だが一番気を使う。
 戦術機のレーダーにBETAのポイントが映る。
『こちらCP。これより支援砲撃を開始する。』
オペレーターの声がすると後方から放たれた無数の弾頭が雨のようにBETA群に降り注ぐ。
光線級の迎撃は…………なかった。
 長距離進行してきたBETAは光線級が少ない傾向がある。さらに帝国軍防衛戦との交戦を経たために光線級はいなくなったのか…。
『こちらパンサー1。光線級の存在は認められない。だが支援砲撃は残弾と交戦範囲の広さからこちらにはそう回せない。まあやることは同じだ。皆殺しにしろ。』
「パンサー12了解!」
さて、始めますか。

巧side out



 前方から迫る突撃級に巧は36mmで足を狙う。訓練校で教えられる突撃級の攻略法は低空跳躍でかわした後に背面を36mmで撃つ、または引きつけてから120mmで外殻ごと粉砕するというものだが、巧はその方法を好まなかった。
 跳躍するということは光線級に狙われる可能性があるし、着地した時の硬直で後続のBETAにやられる危険性がある。そして120mmは通常の戦術機の最大火力であり要塞級や重光線級のように少数で戦況を覆す強力なBETAに対して有効な武器だ。弾総数が少ないため無駄には撃てない。
 36mmを足に撃てれば殺すことができなくても動きを止めることができるしBETAの隊列に穴があく。その間を縫うように動けば光線級にも撃たれずに済む。それだけでなくBETAとの戦いにおいて存分に高度をとれることは稀であり、生き残るためには平面での機動を如何に極めるかが重要。それをこの一週間で学んでいた巧は平面での基本的な操縦の精度と射撃精度の向上を目標にしてきたのである。

『下手なことをするな遠田!基本通りにやれ!』
城井中尉の檄が飛ぶ。城井中尉は遠田が基本とは違う方法で戦うことをいつも厳しく注意する。巧はそれが気に食わなかった。
(くそ!個人的に気に食わないだけじゃなくてこんなところまで……。いい加減イラついてくる!)
 そう内心舌打ちした巧だが軍隊において上官からの忠告に対して下士官が取れる言動は『是』一択。
「了解。」
 忠告された通り跳躍し背面を撃つ。柔らかい後ろ部分を蹂躙された突撃級が次々と倒れていく。いつもの光景である。パンサーズのベテラン組はもちろん新任組もこの手慣れた作業でミスをすることはない。しばらく突撃級の相手をしているとレーダーに新しくポイントが表示される。
『こちらパンサー1。後方1kmから要撃級と戦車級を主力とした一群が来るぞ。数は約500。この程度の数なら前に打って出るぞ。楔壱型で敵を殲滅、その後、後続のBETAに備えて戦線を上げる。』
「パンサー12了解!」
『パンサー3了解!パンサー12ついてこい!いいか、基本通りやれ。貴様の小細工は邪魔なだけだ。』
(一々うるせえんだよ!あんたは!)
「了解!」



巧side

 本当に何の恨みがあるんだ?確かに俺の戦い方はセオリーから外れることが多いが合理的だし別に隊規を乱しているわけでもない。小隊にもエレメントである城井中尉にも迷惑をかけているわけでもない。むしろいい影響を与えているはずだ。
 でも中尉は俺のそんなところが気に入らないらしい。基本を外れたことをすることを極端に嫌い型に押し込もうとする。基本を疎かにはしないがそれ以上のことができる機会があるなら積極的にやるべきじゃないのか?
 とは言っても城井中尉の腕は良い。エレメントを組んで思ったが、戦術的視点を抜けば篠崎大尉よりも優れていると思う。そしてエレメントを組む相手としてはこの上ない衛士だ。サポートが的確で早い。俺もそれで何度か助けられている。
 あれだけ出来る中尉が何でこんなにも俺に突っかかるのか。全く自覚はないし、正直イラつくが、ひょっとしたら俺の方に問題があるのかもしれない…。訓練が終わったら勇気出して聞いてみるかな。んっ?

「パンサー3!チェック6!」
『了解!』

珍しいな中尉が後取られるなんて。

 要撃級は近くにいれば首(に見える尾)を薙ぐ。最近気づいたことだがこの時は逆手で長刀を持った方がすれ違いに切れるため動きに無駄がない。『切る』という動作は通常長刀を振り上げて下ろすという二動作が必要だが、要撃級を殺すことに限れば逆手で一薙ぎにした方が早い。そして空いた手で持った突撃砲で周囲に群がる戦車級を一掃する。坂手だと順手よりも間合いが短くなってしまうためその点は注意が必要だが、敵の攻撃範囲が分かっているなら即時に次の行動をとれる分危険性は少ない。
『遠田ぁ!貴様何度言ったらわかる!余計な小細工するな!』
うば~~~~~~~!またかよ!

巧side out



 巧は訓練終了後食事前に話す為にブリーフィングルームを出ようとする城井に声をかけた。
「城井中尉、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「何だ?演習についてのことなら先ほど終わっているが。」
「いえ、その……中尉は何か自分に思うところがあるようなので、エレメントとして知っておきたいと思いまして。」
「別に貴様に思うところなど無いぞ遠田臨時少尉。ただ正式に任官している訳でもないヒヨコ風情が調子に乗ってシミュレーターで遊んでいるから邪魔だと言っているだけだ。なに、金持ちの道楽に付き合わされている私のせめてもの抵抗だ。気に障ったか?だったら衛士など目指さず実家で引き籠って居るが良い。遊び半分でやられると迷惑だからな。」

決して音感センサーに引っかかることはないが………『ピキッ』という場の空気が凍りついた音をその場にいた人間は全員耳にした。



巧side

おいおい、何でこんなこと言われなきゃいけないんだ。俺は基本的に温厚な性格をしていると思っている。感性も普通だと思う。(だから夕呼に振られたんだが…)
 それでもこの女を殴りたい衝動が抑えられない。しかし相手は上官。もし手を出したら懲罰を食らうだろう。しかしムカつく…。
「お言葉ですが、自分は遊んでいるつもりはありません。ただその時の状況に応じて最善を尽くそうとしているだけです。それを遊びというなら理由をお聞かせください。」
「それを貴様に言う必要はない。貴様は言われた通りやっていればいい。」
「その言葉には従えません。最善を尽くすなというのはエレメントを組むものの言葉とは思えません。それこそ『遊び』と言うのではないのですか?」
と、言ったらぶん殴られた。しかも容赦がない一撃。訓練を欠いてはいなかったが相当堪えるぞ、これ。
「よく回る舌だな。これで済んだことに感謝するんだな。」
「ちょっと待ってくださいよ!まだ答えを聞いてない。修正するならその理由を教えてください。理由無き修正は上官のすることとは思えません。」
「貴様……。」
 今度は胸倉をつかまれ締め上げられる。だがこんなことで引いていたんじゃずっと変わらない。俺は自分が正しいと思っているし殴られて逆に反抗心が湧いた。絶対に負けん。
 そんな俺の目を見て考えが変わったのか、中尉は俺を放した。何か考えている様子だが……。
「分かった。そんなに聞きたいなら後で教えてやる。食事後、訓練場に来い。食後の運動をしよう。」
 はっ。徹底的に俺をいたぶるつもりらしい。まあ良いだろう。ただじゃやられねぇからな。
「了解しました!」



 訓練場に着いた。中尉と訓練という名の腹ごなしをする予定なので六分目に抑えておいたが、どんな扱きをやらされるのやら…。威勢良く『了解しました!』なんて言ったが落ち着いてみるとアホなこと言ったなぁと思う。
「ほう、逃げずに来たか。さて……始めようか。」
「始める前に伺いたいのですが。」
「何だ?」
「自分は中尉との今の関係は良くないと思っています。エレメントを組むならせめて納得はできなくても理解はしておきたいと。この『食後の運動』はそのために必要なことだという理解でよろしいでしょうか?」
「そうだな。少なくとも私にとっては必要だ。貴様にとってはその限りではないがな。」
「分かりました。では始めましょう。」
「………全く貴様は…。そういうところがムカつくんだ!」
審判がいるわけではないので中尉の一撃が『食後の訓練』の始まりとなった。正直言って戦いながら語り合うような器用なまねはできないし、中尉相手にそんな余裕もない。中尉は女性だが俺なんかよりも遙かにキャリアがあるし、打撃戦では中隊で一番強い。勝機を見出すなら距離を潰しての接近戦だ。
中尉のジャブが顔を掠める。空気を切り裂くような速さだが重さもある。風切り音が耳に響く中、俺はタックルをかます為に腰を落とし中尉の膝に向かって突進する。しかし中尉はそんな動きはお見通しとばかりにタックルをかわし、俺の顔面を容赦なく蹴りつける。
「ぐっ…!」
「おら!どうした遠田のお坊ちゃまが!でかい口きいといてその様か!?」
くそ!言ってくれるな…。今の蹴り防げなきゃ首の骨折れてたんじゃないのか?
 そう感じるほどきつい蹴りだった。腕の痺れ具合が半端じゃない。だけど今ので一つ勝機が見えた。ちょっと試してみるか。
 そこからは最初の焼き直しだった。中尉の突きと蹴りを何とか凌ぎつつ再びタックルに行く。中尉はこのパターンは慣れているのか同じようにかわし蹴りを放ってくる。
やっぱりこう来たか!ここを捉える!
 最初の攻防で、タックルを回避してから蹴りに繋ぐ動きが滑らかっだったから、一つの型になっていると思っていたが思った通りだな。
「ぐはっ!…でも捕まえたぞ!」
 足を取り、もう一方の足を払い倒す。ここでマウント取れれば勝てる!路上でやるとレイプ現行犯で捕まりそうな場面だが、こんな事は訓練では当たり前だ。それに女と思って侮れば瞬殺される。倒した中尉の腹に乗り動きを封じる。
「勝負ありですね。自分の勝ちです。」
「寝言は寝て言え。一発も私に食らわしていないのに勝った気でいるのか?」
 強情な女だ。そんなに殴られたいならやってやるよ!
「そうですか……では覚悟!」
 ここまで来て遠慮はしない。振り上げた拳を思いっきり中尉の顔面に振り下ろす!だが中尉はそれを紙一重でかわすとその腕をとり、あろうことか噛みついてきた!
「痛ってぇ!!」
 思わず気が緩んだところをブリッジで跳ね上げられマウントを解かれてしまった。そして素早く態勢を立て直した中尉の下段突きが顔面にぶち当たる。これ…鼻折れたんじゃないか?噛み付きとか……そんなのありかよ。
「やってくれますね中尉…。実戦ならこれもありってことですか。」
「まあな。訓練だったらお前がマウントを取った時点で終わりだ。だが実戦なら私の勝ちだ。」
 いやこれは訓練だから。でもこれが中尉の伝えたいことなのか?
「実戦証明されていない戦術を使うのは危険だと言いたいんですか?」
「ん?……ああ、そう受け取ったか。まあ無関係ではない。お前がする小細工が気に食わない理由はそれだ。だが戦闘で創意工夫するのは悪いことじゃない。実際お前の取る行動は合理的だ。実力が伴っていれば間違った選択ではない。」
「じゃあ何で!?」
「そうだな……問題は極々個人的なものだ。私が個人的に貴様を疎ましく思っているのは分かっているんだろ?」
 そりゃあれだけ露骨にされては気づかない方がおかしい。
「理由は…そうだな。表現しづらいが、例えるなら自分が欲しくてたまらないものを喜んで捨てている奴に対して感じる嫉妬みたいなものか。遠田、貴様は何のために衛士になるんだ?貴様には色々な選択肢があったはずだ。それを捨てて衛士になる道を選んだのは何故だ?」
 話が見えない。何を言いたいんだ?まあ正直に答えておくか。ここで嘘をつく必要はない。
「戦術機は人類の刃であり盾。衛士は最もやりがいのある職務です。そして自分は遠田の跡取りとして会社に衛士という立場で協力したいと思っています。」
「貴様の経歴は知ってるよ。子供の頃から衛士になるための英才教育を受けてきたんだろ?さっきの組手はそれで培われてきたお前の腕を見るためのものだ。その腕前は任官前のひよっことは思えない。正直言ってお前は異常だよ。物心つくか付かないかの時期から遠田という籠の中で純正培養された衛士。その胸の内には世界のためという大義と会社という組織に対する恩義だけだ。そのために徴兵免除という特権を蹴り、衛士でなく技術士官としての才能もありながら進んで前線に出ようとしている。普通じゃない。」
 言いたい放題言いやがって。そりゃ俺が周りと違うのは知ってるよ。昔から感じてきたことだし、今更どうしようとも思わない。だいたいそんなことは人それぞれだろ。
「……それなら、それなら中尉は何のために戦っているんですか?」
「私はな金のためだよ。もう少し言うと息子の養育費を稼ぐためだ。」
 中尉って子持ちだったのか!?初耳だぞ!
「何だ?私に子供がいたらおかしいか?」
「…いえ、ただ意外だったもので…。」
「まあ最初は違ったよ。家が貧乏でたまたま募集してた衛士候補生の適性試験受けたら通ってね。稼ぎもいいし、その時はまだ大陸派遣なんて言われていなかった。でも同期の奴とヤッた時に子供が出来た。思わぬ事態だったけど、まあ腹を痛めて産んだ子だ。かわいくてね。」
「はぁ…。」
 あれ?今何の話してるんだっけ?当初の目的から外れている気がする。
「それでじゃあ母親やるかって時になって父親のほうが大陸で死んじまった。それだけじゃない、同期の奴らもどんどん死んでいった。それで当たり前のことを思い出した。戦争では人が死ぬってことを。」
 本当に今更なことだが……、まあ今の俺じゃ分らないことだ。
「それで身内は子供だけになったわけだが、その子供もそのうち戦争に行くことになる。そう思ったら怖くなった。じゃあ子供を戦争に行かせないためにはどうしたらいいか。徴兵免除を受けるためには家柄か、何か特殊な才能がないといけない。家柄では無理。だったら帝大に入れるぐらい優秀になってもらえれば何とかなるかもしれない。そのためには良い教育が必要で、それには金がかかる。だから衛士やってんのさ。」
 なるほどな…。要するに徴兵免除を蹴って戦場に行こうってのが気に食わないのか。自分の子供は徴兵免除されるかもしれないのに、それを自分から捨てている俺が憎いのか。
「自分のことを気に食わない理由はわかりました…。しかしそれと訓練で創意工夫をすることを咎めることは関係ないと思いますが。」
「おい、あんたは何も分かっちゃいないよ。私が気に食わないのは徴兵免除の特権を蹴ったことじゃない。確かにそれもあるが本当に気に入らないのはその理由だ。世界のためとか会社のためとか言っていたがそれは全部大人の都合だろ?どれもあんた自身から出てきたものじゃない。それを唯唯諾諾と受け入れて、まるで実験をするかの様に新しい戦術を試していく。それが気に食わないんだ。」
 えっ………?俺の意思じゃない?
「あんた自身は色々考えているつもりだろうが、結局大人の、世の中の都合に従って衛士になろうとしている。でもね、そういう奴ほど戦場で迷い、早死にしていく。弱いんだよ。世界のためって理由は。言葉に踊らされているんだ。そんなもんは戦場ですぐに消える。同僚が次々に戦死し、部隊の連中がBETAに食われていく様を見ればな。そして戦う理由をなくした衛士は生き残る意思が弱くなって死んでいく。」
「世界のためという理由はいけないのですか!?」
「ああ、衛士が戦う理由としては下の下だね。そんなことは上の連中に任せておけばいい。これで分かったか?私がお前のことを疎ましく思う理由。世の中に流されて進んで命をさしだし、それを正しいと感じている。これからそんな子供は増えるだろうね。世界のため、国のためと言って戦場に出て、死ぬ間際になって自分が死ぬ理由もわからなくなって死んでいく子供が。私の子供がそうなってしまうと思うと気が狂いそうになるよ。」
 俺は何も言えない。何故か夕呼に言われたことを思い出す。『面白みがない』。それは周りに流されて自分から出てくるものがないからじゃないのか…。俺が戦う理由って何なんだ?
 気づけば中尉はいなくなっていた。随分長い間茫然としていたらしい。とりあえず今日はもう寝よう。でも今日言われたことは忘れない。俺はそう誓って宿舎に帰った。

巧side out

 
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