真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第63話 古き縁に導かれ
私は周瑜達と分かれた後、早めの家路につきました。
私が自宅の門前に来ると、見知らぬ女性が私の家の使用人から突き飛ばされていました。
「この野郎、二度と来るんじゃねえぞ!正礼様がお前みたいな農民に会うわけないだろが!」
彼は大声で女性を罵りましたが、私に気づくと驚いて平伏しました。
「正礼様、申し訳ございません。この女が正礼様に会わせろと聞かないもんで・・・・・・」
彼はバツが悪そうに私に頭を下げました。
「・・・・・・お前はもう戻っていろ」
私は使用人に下がる様に言いました。
「はい、申し訳ありませんでした」
彼は一言謝るとそそくさと家の中に戻って行きました。
私はそれを確認すると倒れている女性に近づきました。
「怪我はしていないか?」
「あ、あなた様が劉正礼様ですか!」
女性は私の方を見ると縋りつくように近づいてきました。
「劉正礼様、お願いいたします。どうか私を劉正礼様の元で働かせてください。下女でもなんでも構いません」
彼女は土下座をして必死に頼みこんできました。
私が虐めているみたいな感覚に陥ってきました。
「立ってくれないか。何故、私の元で働きたいのか教えてもらえないかな?」
私は居たたまれず服が汚れるのも気にせずに彼女を立たせました。
「わ、私はあなた様に助けていなければ死んでいました。だから、あなた様の元で少しでもお役に立ちたいのです!」
女性は涙を流しながら懇願してきました。
私は沢山の人々を賊から助けたので身に覚えがありすぎます。
「すまないが記憶にないのだが・・・・・・」
私は彼女に悪いと思いつつ、彼女と会った覚えがないことを正直に言いました。
「私はエン州の片田舎の生まれです。私が幼い頃、村が賊に襲われ、私は賊に瀕死の重傷を負わされたそうです。そのとき、劉正礼様が私の傷を治療してくださりました。私は意識が朦朧としていて覚えていませんでしたが、母がいつも言っておりました」
思い出しました・・・・・・。
この子があの時の女の子ですか・・・・・・。
私がまだ山賊狩りを始めたころ、酷い怪我をした女の子を救ったことがあります。
多分、私と同じ位の年端だったと思います。
それ以外、身に覚えがありません。
「あのときの女の子か!元気にしていたか?お前の母は息災にしているのか?」
私はなつかさしさから彼女に尋ねました。
「はい、母も私も元気です!母は日々、劉正礼様へのご恩を忘れたことはありません。母に私があなた様の元で働きたいと言ったら快く送り出してくれました。だから、どうかお願いいたします。私を劉正礼様の元で働かせてください」
そういう訳ですか・・・・・・どうしたものでしょう。
確かに、私は人材を求めていますが、彼女はただの農民の娘だと思うので、私の求める人材像とは違います。
しかし、ここまで私を慕ってくれる人物を無碍にするのも気が引けます。
私の家の使用人として雇って上げましょう。
「私の元で働きたいというなら、働かせてあげよう。だから、立ってくれないか。それと未だ名前を聞いていなかった。名前を聞かせてくれるかな」
私は手を差し伸べ、彼女に優しく言いました。
「あ、ありがとうございます!私は満寵、字は伯寧。真名は泉です!」
私は彼女の名を聞いて驚愕しました。
ま、満寵だ・・・・・・と・・・・・・。
「私の真名は正宗。泉、お前に預ける。お前は下女などではなく私の直臣として働いてくれ」
彼女の両肩を掴み言いました。
「えっ!私のような者を直臣にしてくださるのですか!この泉、正宗様のためならばいつでも命を投げ出す覚悟です!」
泉は感極まったのか天を仰ぎ見ながら両膝をつき手を胸で組んで号泣しています。
「泉、これから私に仕えるというなら命を祖末にするな。これは私からの最初の命令だ」
彼女のテンションに危険なモノを感じた私は彼女を諭しました。
「はい!この泉の命は正宗様だけの物でございます」
泉は涙を拭きながら私に言いました。
「そうか・・・・・・ほどほどにな」
私の言ったことを彼女は聞いていない気がします。
私は自宅の門前で立ち話もなんだと思い彼女を自宅に招きました。
自宅に入ると先ほどの使用人が出迎えましたが、私の隣に彼女がいるので驚いていました。
「彼女は満寵という。今日から、彼女は私の直臣となる。住まいが決まるまで、この家に住まわせるつもだから客人として丁重にもてなすように。もし彼女に無礼を働くようなら、この私への無礼と心得よ」
「はい、畏まりました!」
使用人は私の言葉に怯えているようでした。
「正宗様、居候は心苦しいです。家事でも雑用でも何でも申し付けください」
泉が私に心苦しいように言ってきました。
「勘違いするな。私はお前を使用人として雇うのではなく、武官として雇うのだ。雑事も大事なことだがそればかりに捕われていては困る」
「それでしたら大丈夫です。この泉は体だけは丈夫ですから。それに家事は母の手伝いをしていたので慣れています」
泉は爽やかな笑顔で言いました。
「ふぅ・・・・・・。わかった無理をするな。それとまずはその服装をなんとかしないとな。今日はもう遅いので、明日にでも私の知り合いに服を見繕ってもらうといい」
私は彼女の農民服を見ながら言いました。
「正宗様に服を買ってもらうなど、この泉には恐れ多いことです!」
「その服装では主であるこの私が侮辱されるのだ。だから、私のためと思って好きな服を買うといい」
私は泉に優しく言いました。
彼女の服選びは沙和に任せればいいでしょう。
「正宗様がそうまで仰るのなら・・・・・・」
泉は凄く申し訳なさそうに言いました。
私は使用人の方を向きました。
「女中に言って満寵の服を用意するように言ってくれ。今日のところは女中の服で構わないから持って来てくれるか」
「はい、畏まりました。急いでご用意いたします」
彼は駆け足で去って行きました。
少し言い過ぎましたかね。
後で彼に声を掛けることにしましょう。
「泉はお腹は減っていないか。私は空腹で死にそうだ。もう夕餉の時刻だからつき合ってくれ」
私は彼女を連れて食堂に移動し、夕食と会話を楽しみました。
私は泉との出会いを通して、人の出会いとは数奇なものだなとつくづく思いました。
ページ上へ戻る